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トロロッソ・ホンダのエースとして勝負強さを発揮したガスリー【今宮純のF1モナコGP採点】

2018年06月01日 13:11  AUTOSPORT web

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2018年F1第6戦モナコGPで7位入賞したピエール・ガスリー
F1ジャーナリストの今宮純氏が独自の視点でドライバーを採点。週末を通して、20人のドライバーから「ベスト・イレブン」を選出。予選やレースの結果だけにとらわれず、3日間のパドックでの振る舞い、そしてコース上での走りを重視して評価する。今回は第6戦モナコGP編だ。 

☆ セルゲイ・シロトキン
 トップ10に飛び込んできた木曜のFP1、スペインGPで最悪な状態(予選18番手)だったのが嘘みたいに見えた。リヤが“弱い”FW41のハンドリング傾向を逆手に取りクイックなターンイン。一触即発の難しさに挑みながら予選も13番手に、ロバート・クビカからのドライビングアドバイスが効いたのだろう(インシーズンテスト二日目を彼が担当した)。

☆ ニコ・ヒュルケンベルグ

 ロックアップ症状に予選まで苦しんでいたがレースで3つポジションアップして8位に。ウルトラソフトからハイパーへのタイヤ戦略をきっちり実行、マシン的に劣勢なのをまとめ上げコンストラクターズ4位をキープ。

☆☆ マックス・フェルスタッペン

 土曜FP3のミスによりクラッシュ予選に出場できず、猛省するモナコだった。最後尾からスタートして試練の78周。セーフティカーも出ずにリタイア3台という“荒れない”展開のなか、11ポジションアップして9位入賞。モナコの壁から学んだことを彼自身どう活かしていくか……。

☆☆ キミ・ライコネン

 この時期になると来季の去就が騒がれる。ベテラン16年目のモナコ、予選4番手、これまでモナコ予選で対チームメイト戦績は通算“8勝8敗”のイーブンなのだ。ベッテルの相棒役としてやはり彼がベスト・パーソンではないだろうか。


☆☆☆ シャルル・ルクレール
 マックス・ダウンフォースにしても滑りまくるマシンをコントロール。コース幅をいっぱいに使い、縁石を踏み分けるラインワークで予選14番手は初F1とは思えない。ブレーキトラブルが起きたシケインで懸命に右側に寄せ、ブレンドン・ハートレーとの追突を回避しようとした。あそこにはバンプがある。激しくスピンしても不思議ではないのに、才能の片鱗を見た。

☆☆☆ セバスチャン・ベッテル

 豪速リカルド+レッドブルを見せつけられて、決勝は“対ハミルトン”に絞っていった。トラブルを抱え込むリーダーに仕掛けるリスクは避け、4戦ぶり表彰台2位確保を優先。チャンピオンシップ・ファーストにこだわり、1基目のパワーユニット(マイレージ)を労わる6戦目だった。

☆☆☆ ルイス・ハミルトン

 ベッテルと同じ考えで3位をめざし、110点ならすべて良しとしよう。ウルトラソフト最長66周スティント、“タイヤ耐久テスト”を全う。フェルスタッペンが事実上いなくなり、戦力3番目のマシンでなんとかしのいだモナコ。次のカナダGPは通算6勝(2015年からは3連勝中)している得意コース、鬱憤をはらす――。

☆☆☆☆ エステバン・オコン
 気付かなかったが最後にブレーキ・バイ・ワイヤ不調を抱えながら、6位を守り切った。予選ではセクター自己ベストをそろえてトップ6、今季ベストの週末とした。初日やや低迷気味だっただけに、日々改善していったチーム力が光る。


☆☆☆☆ フェルナンド・アロンソ

 2年ぶりモナコはFP1からブレーキ変調で始まり、FP3までセットアップが決まらずにいた。めずらしいことだ。それが予選Q1で一変、まるで“魔法のセッティング”を彼とチームは発見。驚いたのはセクター1高速マスネコーナーも、セクター3低速ラスカスコーナーでも切れ味が鋭かった。メカニカルグリップを引き出したチームワークによる予選7番手。しかし、決勝はその努力も実らずマシントラブルで9戦ぶりのリタイア、連続入賞が遂に止まった。

☆☆☆☆ ダニエル・リカルド

 決勝ではPUトラブル対応で危機一髪のドラマを演じ、予選では最速のスリルを見せた。セクター1で-0.169秒、2で-0.666秒、3で-0.418秒、17年PPセクター・ベストを削っている。新舗装されたハーバー沿いで大きく短縮、とくにタバココーナーからプール・ベンドだ。

 彼自身、景色が違って見えたに違いない。19年以降は車両規定変更が予定され、『1分10秒810』は永久不滅のコースレコードになるのかもしれない。

☆☆☆☆☆ ピエール・ガスリー

 ここぞというとき、起死回生のプレーができるのがエース。ガスリーの7位はバーレーンGPの4位に及ばなくても、いまトロロッソ・ホンダに求められる結果をもたらした。ハイパーソフト最長37周スティントが“勝因”、これは彼と、シャシーのポテンシャルと、ホンダPUのドライバビリティによる。

 ここでもパワーはもちろん必須だが、同時に過去アイルトン・セナはドライバビリティをホンダに要望した。それを当時の田辺エンジニアは知っている。謙虚な彼は「ドライバーのおかげです」といつも言うがすべてがかみ合った結果がこのリザルト。いよいよ次のステップへの弾みになるだろう。