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メルカリに国税のメスが入ったワケ…ポイント処理で消費税1億円の申告漏れ

2018年06月01日 11:02  弁護士ドットコム

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フリーマーケットアプリ大手の「メルカリ」が、2015年6月期と2016年6月期の2年間について東京国税局の税務調査を受け、約1億円の消費税の申告漏れを指摘されたことが報じられた。メルカリは5月30日に更正通知を受け取ったことを明らかにしたうえで、「租税回避の意図は全くない」とのコメントを発表した。


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メルカリでは、出品された商品を購入する時に使える1ポイント=1円の独自ポイントを発行している。メルカリの発表によると、メルカリは利用者が使うポイントを自社の「費用」と認識し、消費税法上の課税仕入れに該当すると考えている。消費税は、売上で受け取った税額から、仕入れのためにかかった税額を控除して納める。つまり、ポイントが商品の購入に使われた際、税額控除の対象である仕入れと認識して申告していたもようだ。


一方、国税当局は「課税仕入れには該当しない」という考えだったため、認識の相違が生じたという。過少申告加算税を含む追徴税額は、1億円程度だと伝えられている。こうした認識の相違について、税務の専門家はどうみるか。安藤由紀税理士に聞いた。


●ポイントの税務「複雑で、見解の整備が必要」

ーー明らかになっている情報から推測できる範囲で、教えてください


「はい。今回の件は具体的なポイントの付与方法やタイミング、会計処理など不明な点が多いため、あくまでも推測できる範囲というお断りのもとでお話しします。


まず、よくあるポイント制は、買い物をすると金額に応じてポイントをもらえて、次回の買い物時にこのポイントを使って、支払い額を減らしてくれるというものです。この場合、お店側は『値引き』として、値引きした後の額をもとに消費税を計算することができ、ポイント分の消費税を納める必要はありません。


一方、メルカリのポイント取得の方法を見ると、『友達招待やキャンペーンで手に入れる』または『自分の売上金を使用してポイントを購入する』ということなので、買い物をしてポイントを取得するパターンとは異なるようです」


ーーそれでは今回の件は税務申告上、どのような問題があったと思われますか


「今回、国税局は『課税仕入れには該当しない』という判断をしたとのことです。課税仕入れに該当するためには、細かい要件があります。ざっくり言うと『国内において、事業者が、事業として、対価を支払って、他の者から資産を譲り受けたり、サービスの提供を受けたりする』ことが要件です。


メルカリは友達招待などで付与したポイントについて、『消費税を含む』販促費の費用と認識し、課税仕入れに含めて消費税計算をしたけれど、国税局は、上記要件を満たしていないと判断し、課税仕入れを認めなかったのでしょう。ポイントを発行したタイミングでは、対価を支払ったことにはならないので『課税仕入れではない』という指摘だったのかもしれません。


また、売上金で購入したポイントについては、使ってもその分は売上の『値引き』ではなく、単なる決済手段、電子マネーのようなもので、消費税はポイント控除前の価格に対してかかることとなります。つまり、見た目上はポイントを使って安くなっていますが、納める消費税は元の価格をもとに決まるため、消費税の納税額は減らずにそのままとなります」


ーーポイント制度の取り扱いは複雑ですね


「はい、複雑だと思います。ポイント制度に関する税法の具体的な取り扱いについて、はっきりとした指針が出ていないのが現状です。そのため、メルカリが発表しているように今回の件で租税回避の意図は感じませんが、税法上のポイントの取り扱いについて、見解の相違が起こらないよう、もう少し見解の整備が必要かもしれません」


【取材協力税理士】


安藤 由紀(あんどう・ゆき)税理士


大学卒業後、銀行勤務を経て2008年に税理士登録(簿記、財務諸表論、法人税法、所得税法、相続税法の5科目合格)。大学講師、セミナー、執筆など業務は幅広い。経理初心者向けのわかりやすい解説に定評あり。(ブログ : https://ameblo.jp/ando-tax/ Twitter : @andoyuki_)


事務所名:安藤由紀税理士事務所


事務所URL:http://www.ando.jdlibex.jp/index.html


(弁護士ドットコムニュース)