2017年は3分14秒台という驚きのタイムで、ル・マン24時間のPPを獲得した小林可夢偉。一方、中嶋一貴も2014年にポールポジションを獲得した経験を持つ。今年も、決戦のときはまもなくやってくるわけだが、ル・マンのコースを熟知しているふたりにサルト・サーキットの攻略法を聞いてみた。
* * * * *
――サルト・サーキットを初めて走った時の印象を聞かせてください
一貴:実はあまりよく覚えていないんですよね。ただ、走る時間が限られていて大事なので、飛び出さない、壊さない、ぶつけないなど、時間を無駄にしないことをひたすら気にしていました。とくに、ポルシェコーナーやインディアナポリスなど、ハイスピードでいくところはだいぶ安全運転で始めた記憶があります。
可夢偉:僕は、レイアウト的にストレート区間が長いので、体力的にはすごく楽なサーキットだと思った。
一貴:フィジカルは楽だよね。ダウンフォースはミニマムだし、長いコーナーもあまりないから。
可夢偉:だから24時間レースをできるんですよ。これが、たとえば鈴鹿だったら結構しんどいと思う。多分、ジェントルマンドライバーは無理だと思うな。
一貴:鈴鹿24時間なんて無理だね。少なくとも3人ではやりたくない(笑)
可夢偉:スパ24時間もかなりきつかったよ。あと、サルト・サーキットは1周が長いから飽きない。他のサーキットよりも3倍くらい長いということは、同じコーナーに出合う回数が1/3になるわけだから。スペインのアラゴンでの30時間耐久テストとか、めちゃめちゃイヤになりますよ。
──名物であるユノディエールの直線を初めて走った時はどう思いましたか?
一貴:あまり経験したことがないようなスピード域だったし、時速300キロを超えてからもしばらくあるので、ちょっとお尻がムズムズするような感じがありましたね。『まだ加速していくんだー』みたいな。あそこでバックマーカーを処理するのはいまでもイヤです。いなければいないにこしたことはない(笑)
可夢偉:バックマーカーの処理は基本的にどこでもイヤなもんです。特にコーナリング中は。まぁ誰が乗っているのかによっても全然違いますが。『この人はアマ(クラス)のアマ(ドライバー)だな』とか、「アマ(クラス)のうまい人かな」とか、走りを後ろから見てすぐにわかります。一番危ないのは、どうしたいのかよく分からない、さまよっている感がある人ですね。抜きにいっていいのかどうか分からないので。
一貴:ユノディエール途中のシケインは、レース中だとラインを1本外すとタイヤカスに乗ってそのままクラッシュというようなこともあるから要注意だね。比較的楽に感じられるのは、前半のセクター1かな。大きなクラッシュをするようなところではなくて、リスクもそれほど大きくはないからメンタル的には楽。反対に、インディアナポリスやアルナージュはクラッシュのリスクが高い。ワンミスですぐ壁までいってしまうので。あと、ポルシェカーブもミスは許されないよね。
──タイムを出すうえで難しいコーナーはどこですか?
可夢偉:最後のフォードシケインですかね。ブレーキの目安とかないし、縁石も見えないので。あそこで本当にタイムを狙っていくのは、実は意外と難しい。いけそうでいけなくて、でもいかなかったら遅いし。シケインのコンビネーションなので、最初がダメだったら次もダメなのでタイムロスは大きくなりやすいですね。
一貴:たしかに、あのシケインはタイムを出しにいくときはプレッシャーを感じます。1周をうまく回ってきて、コーナーは残りあとふたつというところだから。鈴鹿のシケインみたいなものかもしれない。そういう意味でも、前半のほうが気持ちの面では楽に感じるよね。
* * * * *
6月1日(金)発売のauto sport特別編集『ル・マン24時間完全ガイド2018』では、ハイブリッドカーのドライビング&セッティングの裏側や、今年のレースへの展望なども一貴・可夢偉のふたりがおおいに語ってくれている。ル・マン前に、ぜひチェックしてみてほしい。