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Maydayが21年間人気を保ち続ける底力に触れた GLAYも登場の武道館公演レポ

2018年05月31日 17:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 台湾の5人組ロックバンド、Maydayのワールドツアー『Mayday 2018 LIFE TOUR』が5月19日と20日、東京・日本武道館にて開催された。このツアーは、彼らが昨年リリースした最新アルバム『自伝 History of Tomorrow』を提げ、昨年3月より行われているもの。筆者は最終日となる20日の公演を観に行ったのだが、会場には日本人だけでなく彼らの地元である台湾や韓国など、アジア各国から沢山のファンがかけつけていた。


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 定刻となり客電が落ちると、まずはメンバー5人が出演するSFアクション仕立ての映像が、巨大な3つのモニターに流される。笑いありスペクタルありの内容に、客席の期待値がピークに達するや否や、ステージに火花が散った。その大きな爆発音に度肝を抜かれていると、まずはアルバム『自伝』から「Party Animal / 派對動物」でスタート。巨大な3つのモニターには英語、中国語そして日本語で歌詞が流されるなど、多国籍のファンに向けて細やかな配慮がなされている。続く「OAOA」では、ステージ両端から張り出された花道を、石頭/ストーン(Gt)とリーダーの怪獸/モンスター(Gt)が歩いてオーディエンスを煽りまくる。


 「皆さんこんばんは。武道館はMaydayにとって本当に特別な場所です。海外からもたくさんのファンが来てくれているみたいで、今日は一緒に楽しみましょう!」とストーン。瑪莎/マサ(Ba)は、「武道館はこれが3回目だけど、まだドキドキしますね! 来てくれてありがとうございます」と満面の笑みをオーディエンスに向けた。


 ストーンとマサは中国語だったが、モンスターは流暢な日本語で挨拶。「(今日は)2日目だけど興奮するね。昨日、楽しかったしみんなの歓声もすごかった。今日のみんなは、昨日に負けないかな?」と煽ると、客席からは黄色い声援が飛ぶ。その声量に納得いかない素振りをモンスターが示すと、ますます大きな声援が。すると、ようやく満足したのか、「そうそう、いつだって昨日の自分に勝たないとネ!」と話すと、大きな笑いが起きた。


 一方、阿信/アシン(Vo)は、今年でデビュー21年目を迎えた自分たちの軌跡を振り返る。「今日来てくれている人の中に、21歳の人いますか? 今日、初めて僕たちのライブを見に来た人も、21年間ずっと付き合ってくれた人たちと同様、Maydayファミリーの一員になるのは遅くないよ!」と話し、和やかなムードの中で人気曲「乾杯」を披露、ひときわ大きな歓声が上がった。


 その後もマサのピアノ弾き語りから始まる「成功間近 / 成名在望」、The BeatlesやOasisを彷彿とさせる三拍子の「The Yet Unbroken Part of My Heart / 我心中尚未崩壞的地方」など、欧米ロックからの影響を感じさせる楽曲を、畳み掛けるように演奏。「満ち足りた想い出 / 知足」では、オーディエンスが携帯やスマフォのライトを頭上で照らし、まるで星空の中にいるようなロマンティックな気分に浸る。曲の途中、「きらきらぼし」の一節をさり気なく忍ばせるなど、心憎い演出もあった。


 Maydayのライブでは、ステージセットや照明、映像の迫力にも毎回驚かされる。昨年2月のライブレポでも述べたが、1曲ごとに壮大な映画を観ているような気分にさせられるのだ。たとえば、「少年漂流記 / 少年他的奇幻漂流」では、冠佑/ミンが座るドラムセットの周りにギュッと集まった4人の床が、突然せり上がりスクリーンに荒れ狂う海の映像を投影。まるで、5人が嵐の海を漂流しているかのような演出だ。


 続く「頑固」の最後には、ミュージックビデオに出演していた宇宙飛行士がステージ上にも登場するなど、現実と虚構の境目を曖昧にする。フロアが抜けんばかりの勢いで、オーディエンスが楽しそうに飛び跳ねた「瞬間少年ジャンプ / 離開地球表面」では、再び花道に飛び出したストーンとモンスターが順番にソロを弾き、それに合わせて床がどんどん上がっていくという、スリリングな見どころもあった。


 マサがドラえもんの声マネで紹介した、その名も「どこでもドア / 任意門」、アメコミ風のミュージックビデオが楽しい「人生は海のよう / 人生海海」とラストスパートをかけ、最後はオーディエンスとシンガロングをして本編は終了した。


 アンコールに応えて再び現れた5人。前回のアンコールでは、ポルノグラフィティの岡野昭仁がサプライズゲストとして登場しファンを沸かせたが、今回はGLAYの4人が登場し、TAKURO(Gt/Key)が作詞を手がけたMaydayの楽曲「Dancin’ Dancin’」を、9人で演奏。TERU(Vo)とアシンが肩を組んで歌ったり、モンスター、ストーンそしてTAKURO、HISASHIの4人のギターが並んで演奏したり、様々なフォーメションを組むたび会場からは歓喜の声が上がった。


 「楽しい!」と、演奏が終わって思わず叫ぶTERU。「この曲が一番盛り上がったね。こんなことなら最初から出てもらえば良かった」とアシンが冗談めかすと、「今度は対バンしよう!」と返した。一方TAKUROは、「みんなありがとう。Mayday大好き! 僕はギタリストのTAKUROです」と中国語で挨拶したあと、「ひとつだけ言えることがあります。僕らはMaydayが大好きだ。だから、これからも友達でいてね!」と日本語で伝え、会場をより一層和ませる。


 その後、「青春の彼方 / 盛夏光年」、「あっという間 / 轉眼」と演奏し、楽器を降ろすもオーディエンスの拍手は鳴り止まない。再びセッティングし、「馬鹿+僕は僕に嘘をつかない / 憨人+倔強」とメドレーで演奏。3度目の武道館ライブも無事終了した。


 確かな演奏力と、昭和歌謡をも彷彿とさせる懐かしい楽曲、そして愛すべきキャラクター。21年にも渡って人気を保ち続ける彼らの底力に触れたライブだった。


(写真=Viola Kam(V’z Twinkle)、藤川正典)


■黒田隆憲
ライター、カメラマン、DJ。90年代後半にロックバンドCOKEBERRYでメジャー・デビュー。山下達郎の『サンデー・ソングブック』で紹介され話題に。ライターとしては、スタジオワークの経験を活かし、楽器や機材に精通した文章に定評がある。2013年には、世界で唯一の「マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン公認カメラマン」として世界各地で撮影をおこなった。主な共著に『シューゲイザー・ディスクガイド』『ビートルズの遺伝子ディスクガイド』、著著に『プライベート・スタジオ作曲術』『マイ・ブラッディ・ヴァレンタインこそはすべて』『メロディがひらめくとき』など。


■セットリスト
『Mayday 2018 LIFE TOUR』
5月20日(日)東京・日本武道館


01.Party Animal / 派對動物
02.OAOA
03.出陣の歌 / 入陣曲
04.スーパーマン / 超人
05.君は幸せじゃないのに / 你不是真正的快樂
06.乾杯
07.兄弟+人生有限会社 / 兄弟+人生有限公司
08.成功間近 / 成名在望
09.The Yet Unbroken Part of My Heart / 我心中尚未崩壞的地方
10.満ち足りた想い出 / 知足
11.少年漂流記 / 少年他的奇幻漂流
12.頑固
13.I will carry you
14.瞬間少年ジャンプ / 離開地球表面
15.どこでもドア / 任意門
16.人生は海のよう / 人生海海


EN1.Dancin' Dancin’(with GLAY)
EN2.青春の彼方 / 盛夏光年
EN3.あっという間 / 轉眼
EN4.馬鹿+僕は僕に嘘をつかない / 憨人+倔強