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『バーフバリ 王の凱旋<完全版>』日本上陸。宣伝担当「皆さんを称えたい」

2018年05月31日 12:51  CINRA.NET

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『バーフバリ 王の凱旋<完全版>』 ©ARKA MEDIAWORKS PROPERTY, ALL RIGHTS RESERVED.
映画『バーフバリ』の勢いが止まらない。上映中の発声や鳴り物、コスプレが許可される「絶叫上映」に加えて、音楽ライブ用の機材などを使用した「爆音上映」でもたびたび上映され、日本各地で「バーフバリ! バーフバリ!」と叫ぶ「マヒシュマティ王国民」が増殖している。

その勢いに乗って、本国で公開されたオリジナル版をもとにした『バーフバリ 王の凱旋<完全版>』が、6月1日から公開される。<完全版>の上映時間は、これまで日本公開されていた141分のインターナショナル版よりも26分長尺な167分。日本上映が実現するまで、長期間にわたって交渉が続けられていたという。

CINRA.NETでは3月に『王の凱旋』についての取材記事を掲載した(関連記事:映画『バーフバリ 王の凱旋』宣伝担当に取材。異例の「V字回復興行」)が、引き続き宣伝を担当した祭屋・宮田氏に加え、本作を配給するツインの担当者に<完全版>の見どころや日本上映にいたった経緯を訊いた。

■DVD化したのに興行収入が上昇。『バーフバリ』とは?
まずはざっくりとした作品紹介を。『バーフバリ』2部作は、古代インドのマヒシュマティ王国を舞台にした、偉大な父と偉大な息子の物語。王位を巡る陰謀、血みどろの戦い、勇ましい女性たちの生き様、苦悩と救済、愛、恋、絆などを神話の要素も織り交ぜつつ、ダイナミックに描いたエンタメ大作だ。

日本では昨年12月末に後編にあたる『王の凱旋』が公開。2月にDVD・Blu-rayが発売されたにもかかわらず、イベント性の高い「絶叫上映」で話題を呼び、興行収入は異例のV字回復を見せた。そしてついに、熱心なファンが待ち望んでいた<完全版>が日本に上陸。キャッチコピーは「願いは叶う」。

■<完全版>日本公開はどのように実現したのか? 配給担当が回答

配給会社ツインの担当者は、<完全版>上映実現の経緯についてこう語る。

《インターナショナル版をご覧になった『バーフバリ』の熱狂的なファンの方々の、<完全版>上映を望む声がSNSなどで多く上がったことと、インターナショナル版より約30分長い上映時間にもかかわらず劇場側にも協力頂き、上映回数を確保頂いたことで上映することになりました。》

公開に漕ぎ着くまでに苦労したエピソードとしては、「本編素材などの素材周りがなかなか届かずに苦労しました」とのこと。当初日本で公開されたインターナショナル版では、なぜカットシーンが生まれたのか? という問いには、以下のご返答をいただいた。

《<完全版>が167分というかなりの長尺となるため、多くの作品がある中で劇場にかけるのが大変難しくなるため、日本では141分のインターナショナル版を上映しました。他国も同じような状況のため作られたかと思います。ただ、インターナショナル版、完全版ともに違った作品の良さがあると思っております。》

■イベント上映の「王」へ。年齢層拡大を目指す

「絶叫上映」の代名詞的な存在となった本作。偉大な王にあやかって「絶叫上映の王」と呼びたいところだが、<完全版>ではどういった広がりを期待しているのだろうか。

《新宿ピカデリーでは、5月31日の完全版の前夜祭を皮切りに、前代未聞ではありますが毎週2回「絶叫上映」を行う予定です。それに、各劇場さんもマサラ上映、爆音上映といったイベントを引き続き行っていきます。特に6月2日は全国でイベント上映があるので勝手に「バーフバリDAY」と命名してしまおうと思っております。

今度は、もちろんイベントムービーとして、若い客層の方々には引き続き応援いただきたく思いますが、さらに、完全版の公開に合わせて新聞広告も打つなど、いままで来ていない年齢層の固い観客まで広げられればと考えております。》

さらにJOYSOUNDでカラオケ配信も開始。“バーフバリ万歳”“かわいいクリシュナ神よ”“白鳥の船に乗って”“マヒシュマティ国の歌”“我らの至上の光”の全5曲を劇中シーンと共に配信する。日本語版字幕監修者の山田桂子が作成したテルグ語のセリフをカタカナでテロップ表示する。

《テルグ語はなかなか聞き取れないと思いますが、カラオケではテルグ語のカタカナ歌詞を載せているので、カラオケで歌を覚えて、ぜひ「絶叫上映」でも歌って頂ければと思います。》

■<完全版>の見どころは? 監督は「さらに深く長く感情の余韻に浸れる」

4月に『バーフバリ』2部作のS・S・ラージャマウリ監督が来日。宇多丸がパーソナリティーを務めるTBSラジオの番組『アフター6ジャンクション』に出演し、対談を行なったことでも話題を集めた。本作の宣伝担当の祭屋・宮田氏は、<完全版>の見どころについて以下のように語った。

《4月下旬にラージャマウリ監督が来日した際、「公開中のインターナショナル版と<完全版>どちらがいいかと聞かれるのは、息子か娘のどちらかを選べと言われているようなものです(笑)どちらが良いとは言えないですね」と言っていたのですが、同時に敢えてその違いを説明するとすれば「<完全版>の方が、よりジェットコースター的な展開のインターナショナル版よりも、さらに深く長く感情の余韻等に浸ってもらえると思います。是非、両バージョンを楽しんで下さい」とも言っていました。》

また<完全版>は、「インターナショナル版には無かった様々なカット、シーン、台詞が細かく追加されることで、物語の“うねり”“密度”が更に強固になった印象を受けました。そして、各キャラクターの魅力もより一層際立った感じがします」と感想を明かした。

宣伝担当が挙げた注目の追加シーンは、アマレンドラが正体を隠し、カッタッパとクンタラ王国を旅する場面。「特にデーヴァセーナが楽曲“かわいいクリシュナ神よ”に合わせて歌い踊るミュージカルシーンは是非ご注目下さい」。そのほかにも数々の細かなシーンが追加されているが、反対にインターナショナル版にはあるが、<完全版>には収録されなかったシーンもあるという。

■ラージャマウリ監督は「ブルース・リーの大ファン」

S・S・ラージャマウリ監督については、「今でも寝室にポスターを貼っているほどのブルース・リーのファンとの事です」と教えてくれた。「バーフバリとバラーラデーヴァの一騎打ちの際、随所に見られる格闘技的なムーヴなど、監督が敬愛するブルース・リーの作品にも想いを馳せながら是非またご覧下さい」。また監督は『ブレイブハート』を始めとするメル・ギブソン監督作品にも強い影響を受けたという。

■日本のファンについて。「監督としてこれほど嬉しいことはない」
ラージャマウリ監督は、4月26日に東京・新宿ピカデリーで開催された『バーフバリ 王の凱旋』の「絶叫上映」に参加。日本の観客たちの「統制の取れた熱狂ぶり」に驚き、感動していたという。監督が日本のファンについて語った言葉を、宣伝担当者のコメントから抜粋したい。

《バーフバリ二部作は世界中で大ヒットしてきたが、その観客の大半は世界各国に住んでいるインド系の人々だった。でも、日本は違う。観客のほとんどが日本の人たちで、作品の魅力を深く理解して何か月にもわたって楽しんでくれる。全く違う文化圏の人々が、我々が全身全霊をかけて生み出した物語を受け入れてくれる、監督としてこれほど嬉しいことはない。》

公開劇場ではオールカラー48ページのパンフレットを販売。S・S・ラージャマウリ監督のインタビューをはじめ、注釈付きのシナリオ採録、劇中歌のJOYSOUNDカラオケ版カタカナ歌詞、設定画集などに加えて、識者によるインド映画や音楽についての文章も寄稿されている。

■宣伝担当からのメッセージ。「皆さんを称えたい」

最後に、宣伝担当者からいただいた、『バーフバリ』ファンに向けた熱いメッセージをほぼ全文掲載する。

《全てのマヒシュマティ王国民の皆さん=バーフバリ・サポーターの方々には、とにかく、“感謝”しかないです! 皆さんの熱狂、声援によって、配給や劇場のロングラン上映敢行の英断があり、その御陰で遂には「創造神」S・S・ラージャマウリ監督の来日まで実現。「インドでも映画館は大騒ぎだが、みんな台詞が聞き取れないくらい勝手に騒ぐ(笑)それに比べると、日本の観客の皆さんは本当に凄い!」と言っていたのが凄く印象的です。

作品の楽しみ方の多様性も、日本の観客の皆さんのオリジナリティーだと、宣伝としてあらためて感じています。昨年末に公開され、まずは先鋭的かつコアなマスコミ、一般の方々からの映画としての魅力を抽出した激賞、絶賛が様々な形で発信されました。その後“参加した全ての人の日常を瞬時にハレへと昇華させる祝祭空間”としての<絶叫上映>の魅力が拡散。さらには、「バーフバリ・エフェクト」と称された、「バーフバリ鑑賞には美容効果がある」「デトックス効果がある」「温熱効果がある」「もはや映画を超えて見る薬膳と化し始めた」などの機智に富んだ書き込みの数々。

そういったSNS等のユニークかつ尋常ならざる熱気、盛り上がりを目にしたマスコミの方々が作品を特集したり、絶叫上映取材に足を運んで下さり、そのオンエアや記事を見た一般の方々がまた劇場に足を運んで下さる、宣伝としてはこれ以上望む事など無い、望んでも手に出来ない本当に稀有で貴重な経験をさせて頂きました。

そして、これほど、SNS等の皆さんからの書き込みに勇気づけられ、爆笑させて頂いた宣伝作品は他にありません。これは宣伝が最も望みながらも決して仕掛けることは出来ない、全てのマヒシュマティ王国民の方々の声援によって生み出された、10年に一度あるかないか? の熱くリアルでレアなムーヴメントだと思っています。

『バーフバリ 王の凱旋』のティザービジュアルのメインコピーは「王を称えよ」で本ビジュアルのコピーは「映画の神様がスクリーンに降臨する」、そして<完全版>のコピーは「願いは叶う」です。今、この作品の宣伝に携わった者として、「映画の神様」とは“映画を多くの人達と一緒に大スクリーンで体験しながら、興奮、感動、祝祭的空間を共有する大衆娯楽の頂点にして原点に再び誘ってくれた”全てのマヒシュマティ王国民の皆さんのことだと思っています。

宣伝として一番テンションが上がるのは宣伝作品が公開され一回でも上映劇場が満席になるのを見る事なのですが、本作では「絶叫上映」を始め何度もそんな壮観!を目に焼き付けさせて頂きました。皆さんの御陰で、「願いは叶う」も体験出来たのです。ですので、最大級の感謝とリスペクトを込めて「(王を称えて下さった)皆さんを称えたい!」!!》

より祝祭感を増した本作が、日本各地を「絶叫」させる夏になることを祈ろう。