2018年05月31日 09:52 弁護士ドットコム
2018年度の税制改正で、たばこ税が10月から段階的に引き上げられます。これまで何度も引き上げが行われ、喫煙者はうんざりしているのではないでしょうか。また、もっと上げるべき、という非喫煙者もいるでしょう。
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2017年12月に閣議決定された税制改正大綱を見てみると、2018年10月に、紙巻きたばこ1本あたり1円(国たばこ税0.5円、地方たばこ税0.5円)引き上げる方針が定められています。1箱(20本)あたり、20円引き上げられることになります。
さらに、2020年、2021年に1本1円ずつ引き上げられ、1箱あたりで考えると、現在の価格よりも60円の値上げとなります。
ただ、これで値上げが終わるかどうかは不透明です。
2016年には、自民党の受動喫煙防止議員連盟から、たばこ1箱の値段を1000円になるまでたばこ税を引き上げるべきだの主張もありました。たばこに対する風当たりは、年々強くなっています。
もし1箱1000円にまでたばこ税を引き上げた場合、いくらの税収の増加が見込まれるのでしょうか。
現在、紙巻きたばこ1箱(440円)のうち63.1%にあたる277.47円(このうち、たばこ税は244.88円)が税負担額となっており、純粋なたばこ自体の価格は162.53円です。
1箱1000円になった場合、消費税10%だと仮定して、消費税分の約90円を除くと、たばこ税は、1000円-90円(消費税)-162.53円(たばこ自体の価格)=747.47円がたばこ税の負担額になります。
2017年度のたばこ税の税収予算額が約2兆1463億円ですので、販売数量が変わらないと仮定すれば、2兆1463億円×(引き上げ後の税負担額747円÷現在の税負担額244円)=6兆5708億円になります。ですから、6兆5708億円から2兆1463億円を差し引くと、4兆4245億円が増加分となります。
2008年の話になりますが、日本学術会議が、たばこ1箱を1000円にすれば、およそ税収が4兆円増加すると試算しており、さほど変わらない規模の金額となります。
ただし、今回の試算は、販売数量が変わらないと仮定した話です。また、加熱式たばこの普及の影響も考慮したものではありません。実際は、3度にわたる段階的な引き上げに加えて、消費税率も引き上げられることを踏まえれば、販売数量の減少によって、そこまで税収はアップしないかもしれません。単純計算で、販売数量が現在の3分の1にまで減ってしまえば、税収は大して変わらないことになります。
実際、財務省がまとめた税収の推移を見てみると、過去にもたばこ税は引き上げられてきました(1本あたりで、昭和61年0.9円、平成15年0.82円、平成18年0.852円、平成22年3.5円)が、たばこの販売数量自体が減っていることもあり、税収は2兆円前後であまり変化していません。
石井彰男税理士も1000円になった場合の見通しについて、「過去のたばこ税の推移を見ても、増税を行って以降、たばこ税の税収アップが確認できません。税収アップという目的でのたばこ税増税は既に、その効果を果たさなくなってきているのではないでしょうか」と指摘しています。
【取材協力税理士】
石井 彰男(いしい・あきお)税理士
会計事務所ロイズ会計代表。不動産業に特化して15年間の大家さん経験と独自の節税手法、資産運用のプロとして数百人の大家さん、不動産起業家にコンサルティングを行う。ある日、起業したいサラリーマンが最も成功しやすい業種が不動産賃貸業であることに気づき「大家さんで幸せに起業する」「大家さんで経済的自由を達成する」をキャッチコピーに、成功する大家さんを輩出している。
事務所名 : 会計事務所ロイズ会計
事務所URL: http://royce-acc.com/
(弁護士ドットコムニュース)