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DA PUMP、話題の新曲「U.S.A.」が“バズる”理由 過去楽曲とグループのキャリアから考察

2018年05月30日 19:01  リアルサウンド

リアルサウンド

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 6月6日のリリースを前にMVが200万回再生を突破し、リリースイベントでのファンカム動画や「踊ってみた」動画がSNSを席巻しているDA PUMPの3年半ぶりのニューシングル曲「U.S.A.」。<C’mon,baby アメリカ どっちかの夜は昼間>などのパワーワードが「往年のハロプロ作品っぽい!」と噂を呼んでおり、リリースイベントにはハロプロファンも多数参加するなど、予想外の現象も生み出している。今回は改めてこの「U.S.A.」が“バズっている”理由を考えてみたい。


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 そもそもDA PUMPは1997年にデビューした、ダンスボーカルシーンではベテランの部類に入るグループだ。現在Twitterなどに溢れているファンカム動画を見て、20年選手であるISSAの相変わらずのハイトーンボイスに驚いた人も多かったことだろう。歌い手としてのスキルの高さは、『THE WIZ ウィズ~オズの魔法使い~』(2012年)や『ロッキーホラーショー』(2017年)など、ミュージカル作品で活躍していることからも実証済みだ。さらに彼が率いる6人のメンバーも、ダンスの世界大会8連覇という前人未到の記録を持つKENZOをはじめ、それぞれが振付師やインストラクターとしても活躍する、レベルの高いラッパー&パフォーマーであることもポイントといえる。KENZOがロック、YORIがポップ、TOMOとKIMIがクランプ、U-YEAHがフリースタイル、DAICHIがLAスタイルとそれぞれ得意とするジャンルが分かれており、多彩なジャンルのショーケースのようなステージが楽しめることも特徴的なグループだ。


 そして「U.S.A.」が話題になったことで改めて見直されているのが、DA PUMPの楽曲の持つキャッチーさだ。過去のヒット曲のほとんどは80年代から活躍する音楽プロデューサーのm.c.A.T.が手掛けており、ファンキーなサウンド×カラッとしていてウェット感の少ないISSAの歌声と、<どきゅーん ずきゅーん胸撃つ~>(「ごきげんだぜっ! ~Nothing But Something~」)、<無理に誰かを愛そうなんて無理無理無理無理>(「if…」)、<おとなこどもも 共感の 好きっ好きっPower! いい感じ>(「Feelin’ Good-It’s PARADISE-」)といったライミングのような言葉遊び感を重視したフレーズとの相性のよさは、他のアーティストにはない魅力といえる。


 「U.S.A.」は彼らにとっては初挑戦となるユーロビートのヒット曲のカバー(原曲はジョー・イエローの同名曲)だが、昨年の“バブリーダンス”で使われた荻野目洋子の「ダンシングヒーロー」をきっかけにブーム再燃のきざしがあるユーロビートを現行のサウンドで再現したものであり、30代以上にとっては懐かしく、もっと若い世代には新鮮に響くこともヒットの一因だろう。日本語詞を手掛けているのは、DA PUMPの事務所の後輩であり、w-inds.のヒット曲を多数手掛けるshungo.。先述のハロプロ作品を思わせる“トンチキ”感を感じる人も多い歌詞だが、U.S.A.について歌うのにカタカナを多用しているレトロ感や、原曲の<cheek to cheek>部分に<地球人>と当てるなど“空耳”的センスも含め、DA PUMPの元々の持ち味である言葉遊び感を踏襲したもののようにも感じる。


 公開当初から話題を呼んでいる合成感の強いジャケ写のインパクトもさることながら、<アメリカ><タイムズスクエア>など大きなカナ文字のテロップが躍るMVも強烈だ。手掛けた多田卓也は、MAXが2013年にリリースし物議を醸した「Tacata’」のMVの監督、といえばピンとくる人も多いことだろう。その中で披露される同曲のダンスについては、KENZOがブログ(DA PUMP 公式ブログ)でも解説しているが、サビで世界的に流行しているSHOOTダンス(GENERATIONSがニューシングル「F.L.Y. BOYS F.L.Y. GIRLS」でも取り入れている)を親しみやすく“いいねダンス”と言い換えて取り入れているほか、間奏で90年代に活躍したMCハマーのオマージュである“インベーダーフォーメーション”を展開している。このサウンド面とも重なる“新旧ミックス感”が絶妙なインパクトを生み出しているのだ。さらにDA PUMPの過去作品群と見比べれば一目瞭然だが、手を思い切りクロスさせる<U.S.A!>の動きを含め、あえてわかりやすく真似しやすい振りで構成したことが、結果的にリリースイベントでの盛り上がりや「踊ってみた」動画の多さにもつながっている。


 サウンド、歌詞、ビジュアル面と、80年代からダンスボーカルシーンをリードしてきたライジングプロダクションの遊び心を結集したコンテンツでもある「U.S.A.」。一流の技術を誇るメンバーが全力で楽しみ&歌い踊る様子には、素直に「踊らにゃ損!」と思わされてしまうような吸引力がある。20年選手の繰り出した“参加型エンタメ”であるこの曲が、今後どこまで伸びを見せるのか注目したい。(古知屋ジュン)