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初登場4位『恋は雨上がりのように』 女子高生役の小松菜奈はこれで見納め?

2018年05月30日 16:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 『犬ヶ島』、『ゲティ家の身代金』、『ファントム・スレッド』など、注目洋画作品の公開が重なった先週末だったが、いずれもトップ10には届かず(『ファントム・スレッド』はミニシアターランキングではトップに)。初登場作品では松竹配給『妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII』、東宝配給『恋は雨上がりのように』、ギャガ配給『友罪』がトップ5に入った。


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 その中から、今回注目したいのは初登場4位の『恋は雨上がりのように』だ。5月25日金曜日から全国301スクリーンで公開された同作は、土日2日間で動員8万6000人、興収1億2000万円、公開3日間では動員11万6000人、興収1億6000万円を記録。テレビアニメ版も放送を終えたばかりの眉月じゅん原作の同名コミックの実写作品で、原作の人気もフレッシュ度もそれなりに高い作品のはずだが、そこに小松菜奈、大泉洋といった高いヒット・ポテンシャルを持ったメインキャストとの相乗効果が生まれているとは言い難い結果となっている。


 『恋は雨上がりのように』は青年コミック誌に連載されていた作品だが、特に女性向けのコミックにおいて、10代の女性主人公とかなり歳の離れた大人の男性との恋愛というのは定番モチーフの一つ。コミック実写化作品としても、2014年には同じ小松菜奈が主演した『近キョリ恋愛』は最終興収11.7億円とスマッシュ・ヒットを記録した。しかし、同種のモチーフの作品である昨年公開の『先生! 、、、好きになってもいいですか?』、そしてコミック原作ではないが『ナラタージュ』は興行的にかなりの苦戦を強いられた。両作品とも見るべきところの多い秀作ではあったが、その結果からは「10歳以上歳の離れた男性との恋愛」というテーマそのものが、作品の主要ターゲットである10代20代の女性客から忌避されているようにも見受けられた。そこに世の中のムードやポリコレ的な時代の変化をみるか、コミックや小説やアニメとは違って「友達と一緒に映画館でお金を払って観る実写映画」にはそもそもあまりそぐわないテーマとみるか、様々な分析も可能だろう(思えば、『近キョリ恋愛』のヒロインの相手役を演じた山下智久は当時まだ20代だった)。


 もっとも、今回の『恋は雨上がりのように』で小松菜奈演じるヒロインの恋愛の対象となるのは、男性教師ではなくバイト先の店長。そして、実際に作品を観た人(あるいや原作やアニメ版のファン)ならわかるように、その描写は良くも悪くも(?)モラルを踏み外すようなスリリングなものではない。『恋は雨上がりのように』は恋愛映画というよりも、一度挫折したヒロインが年上の男性への淡い想いを通して成長する過程を描いた青春映画といっていい。


 ティーンムービー全体の興行的地盤沈下を受けて、一時期に比べたら本数が減ってきたように思えるコミック原作のティーン向け実写作品だが、東宝配給作品だけでも、『坂道のアポロン』(アスミック・エースとの共同配給)、『ちはやふる -結び-』、『となりの怪物くん』に続いて、『恋は雨上がりのように』で今年4作目。依然、ほぼ月イチのペースで公開されている。若い役者の映画界への入り口、新しいスター俳優への登竜門としてのティーンムービーの役割は決して過小評価するべきではないが、小松菜奈、あるいは土屋太鳳といった、人気と実力のともなった20代前半の前途有望な女優をティーンムービーから完全卒業させることも、日本映画の未来にとって重要なことなのではないだろうか。(宇野維正)