2018年05月30日 12:02 弁護士ドットコム
「福利厚生費」とは、一般的に企業が従業員の勤労意欲上昇のために負担する経費のことを指します。
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馴染みのあるものとして挙げられる社会保険や家賃補助のようなものから始まり、オフィスでのコーヒー飲み放題やレジャー施設の使用権のようなものまで、会社により様々です。
こうした福利厚生を設定する会社側の目的としては優秀な人材の獲得、保持ということ以外にも、従業員のために支払った福利厚生費は経費として計上することが可能という点が挙げられます。
このため、会社側からすると課税の対象となる所得が少なくなり、節税に繋がるという利点があります。また、従業員側からも給与が部分的にでも福利厚生で代替されると、給与を受けとって課税されるよりも課税額が少なくなるので、両者にとって利点のある話といえます。
では、会社側であり、唯一の社員である「ひとり社長」は福利厚生を最大限に利用して節税を図ることが可能なのでしょうか?
福利厚生は法律で義務付けられている「法定福利」と、企業が独自に定める「法定外福利」の2種類に分けられます。
法定福利とは、年金や健康保険などの社会保険のうち企業が負担する費用を指し、法定外福利とは、法定福利以外の住宅手当や結婚出産祝いなど、企業が独自に設けた負担費用を指します。
その中でも福利厚生費(法定外福利)として税務上認められるためには、従業員等の福利厚生を目的とした支出で、すべての従業員を対象とし、社会通念上(一般常識に照らし)妥当な金額である、という条件を満たすことが必要です。
福利厚生は「従業員のため」のものなので、従業員が存在しない一人会社(いちにんかいしゃ)では福利厚生という概念が成立せず、認められません。しかし、年金や健康保険などの法定福利に関しては、企業としての負担分を経費計上することが可能です。
それでは、法定福利以外の費用は会社の経費として一切計上できないかというと、そうではありません。役員報酬や会議費、交際費など、それぞれの性質に即した勘定科目であれば経費計上することができます。
もし、どうしても福利厚生を使いたいというのであれば、従業員がひとりでもいれば社長も福利厚生の恩恵を受けられます。しかし従業員が配偶者や親族のみの場合、従業員の福利厚生として認められないこともあるので注意しましょう。
このため、ひとり社長の家族旅行代は、福利厚生費にはできず、また、家族を従業員にしたとしても認められません。
【監修】
水村 耕史(みずむら・こうじ)税理士
個人事務所、BIG4税理士法人、アクタス税理士法人を経て、平成26年に独立。平成28年10月にSwitch税理士法人を設立。現在Switch税理士法人の代表社員のほか、ITベンチャー企業、studioNASの代表取締役兼CEOを兼務。
事務所名 : Switch税理士法人事務所
URL:http://switch-c.com/
(弁護士ドットコムニュース)