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原因不明のスピード不足に悩む福住。牧野はクラッシュでチャンスを失う/FIA F2第4戦モナコ

2018年05月30日 11:31  AUTOSPORT web

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牧野任祐(ロシアンタイム)
FIA F2に挑戦する日本人ドライバーにとって、モナコは極めて特別なサーキットとの勝負になる。しかし今年の牧野任祐と福住仁嶺にとっては、それ以前の問題に苦しめられ勝負すらさせてもらえなかった週末だった。

 初体験のモナコだったが2人とも初日フリー走行からスムーズに走り、福住は「楽しかったですよ。すぐコースに慣れることができたし、わりと早い段階で限界を探れたかなと思います。予選モードになると当たることとかは一切恐くなくなりました」

 牧野は「壁は近いし、心拍数も高いと思うし、ずっと息を止めていてメインストレートでようやく息をする、みたいなことをやっているので他のコースよりも息が上がってます」と言いながらも大きなミスは犯さなかった。

 ゼッケンの奇数組と偶数組に分けて行なわれた予選では2人ともマシンのセットアップが決まらず、トラフィックに引っかかったこともあってB組の6番手・7番手。グリッドは牧野が12番手、福住が14番手となった。

 金曜に行なわれたレース1のスタートで牧野は「すごく良い加速」を決めたものの、ターン1の進入でインにショーン・ゲラエルが飛び込んできて中央で行き場をなくし、両サイドを挟まれてフロントウイングと右フロントタイヤにダメージを負ってしまった。

「行き場を探しているような状態のまま(ロベルト・)メリの後ろでターン1に入っていったんですけど、ゲラエルが無理矢理インに入ってきたんで3ワイドか4ワイドくらいの状態になってサンドイッチになってぶつかっていて、そこからは何がどうなったのか分かりません」

「ステアリングがグルングルン回っていたんでもうステアリングからは手を離していました。そうしないとまた骨折するだろうと思ったので」

 右フロントがスローパンクチャーを起こしたためピットインを余儀なくされたが、別の事故でセーフティカーが入ったため本来なら大きなタイムロス無くタイヤ交換を終えてプライムタイヤ(ソフト)で戦列に復帰できるはずだった。しかし作業に1分以上手間取ってしまい周回遅れに。これでレースは終わったも同然だった。

 悔やまれるのは、同じオプションタイヤ(スーパーソフト)スタートの戦略で牧野とターン1を争ったゲラエルとメリが表彰台に立ったことだ。タイヤ交換直後の12周目にセーフティカーが入ったことでピットロスが帳消しになったためだが、普通にレースを進めていれば牧野にも表彰台のチャンスは充分にあったことになる。

「そう考えると悔しいですね。僕もオプションスタートで(ターン1では)目の前にメリがいて横にゲラエルがいたわけですから。接触の影響でステアリングはずっと右に傾いていたし左コーナーはすごくアンダーステアでしたけど、走りにくかった割にはクリーンエアで走っている時のプライムのペースは悪くなかったので残念です」

 最後は3周ほど前から異音がしていたといいエンジントラブルでストップし、土曜のレース2は後方スタートとなってしまった。

 レース2のスタートでは各車に頻発しているクラッチトラブルに見舞われてストールし、後方からニック・デ・フリースが追突。左側ディフューザーに大きなダメージを受け、牧野のモナコは満足に戦えないまま終わってしまった。

「バルセロナから上手くいっている同じやり方でクラッチパドルを操作してスロットルも全開で繋いでいるのにストールしたんで、どうしてこんなことになったのか意味が分かりません」

「とりあえずリスタートはしたんですけど、フロアも壊れていて後ろのダウンフォースがなくてフラフラでトンネルの中の右コーナーさえも危ない状態でしたから、危ないんで辞めました」

 一方、福住はバルセロナで経験したフィーリングが良いのに遅いという原因不明のスピード不足が解決できないでいた。

「乗っている感じではとても良いフィーリングで攻められているんですけど、タイムを見たら『あれ?』っていう感じで。1分19秒5くらい出てそうなフィーリングだったんですけど、どうなっているのか全く分からないです、1秒も遅いとかワケが分からないんです」

 問題は、チームが依然として原因を特定できていないということだ。2台で同じセットアップにしてもマキシミリアン・ギュンターはオーバーステア、福住はアンダーステアと真逆の仕上がりになってしまっていて、チームのエンジニアリング能力に問題がないのなら車体に問題があると推察せざるを得ない状況だ。

 実際に今回のレース前にアルテム・マルケロフはモノコック交換を行ない過去2戦で見舞われていた原因不明の遅さを解消しており、今季から導入されたばかりの新車だけにこうした問題も疑われる。

 金曜のレース1でもアンダーステア傾向は解消されず、左フロントに負荷がかかるためタイヤのデグラデーションが急激に進んでしまい、集団からは置いていかれた。

「元々アンダーステアっぽい傾向があったんですけど、タイヤのグリップが残っているときはタイヤがそれをカバーしてくれていたんです。でも途中からタイヤが落ちてくると全く曲がらなくなってしまって、セクター2みたいにダウンフォースが効かないところは全くフロントのグリップがなくて、ヘアピンでもどこでもアンダーが強くてどうしようもなかったです」

「コース上に留まるのが精一杯という感じでした。オプションタイヤに換えたら1~2周くらいしかグリップのピークがなくて、そこから一瞬でグリップがなくなったんです。あんな落ち方は今までに経験したことがないです」

 土曜のレース2ではF1の決勝でも何台かが見舞われたのと同じようにブレーキトラブルが発生し、厳しいドライビングを強いられた。

「ブレーキがとにかく全く効かないというか、ペダルがすごくソフトでもっと踏まないと効かなくなって、ペダルが奥にいってしまうような感じでどこが限界なのか分からなくなってしまったんです。ブレーキング時に左フロントが沈むような感覚で簡単にロックしてしまうし……」

 前を走っていたゲラエルの激しいクラッシュの際にはブレーキ部品のような熱いパーツがコクピットに飛び込んで来てあわや火傷という場面もあったという。しかし福住が直面している問題はもっと根本的な部分にありそうだ。

 次のポールリカールまでは3週間のインターバルがある。もちろん毎戦チームのファクトリーでミーティングを重ねてはいるが、この間にもう一度しっかりと仕切り直しが必要だろう。

 大混戦のFIA F2だけに上位を争うことは簡単ではないが、そもそも勝負を挑むスタートラインにすらまだ立てていない感のある日本人ドライバー2人だけに、ここでしっかりとシーズン序盤戦を振り返りポール・リカールで再出発を切ってもらいたい。