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一貴、ル・マンを「走り切る難しさは誰よりも……」。強さを極めたトヨタ、悲願達成に挑む

2018年05月29日 18:41  AUTOSPORT web

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ル・マン初優勝を目指す中嶋一貴と小林可夢偉
TOYOTA GAZOO Racingは5月29日、東京・池袋でプレスカンファレンスを開催し、6月16~17日に行われるWEC世界耐久選手権第2戦『ル・マン24時間レース』の参戦概要を発表した。

 2012年からハイブリッドマシン、『トヨタTS0xx~』シリーズでWEC/ル・マンへの挑戦しているトヨタは、2018年から2019年にかけて争われる“スーパーシーズン”に引き続き参戦し、2018年型トヨタTS050ハイブリッドで小林可夢偉、ホセ-マリア・ロペス、マイク・コンウェイ組の7号車、中嶋一貴、セバスチャン・ブエミ、フェルナンド・アロンソ組の8号車の2台体制で、悲願のル・マン24時間レース制覇を目指すことを改めてアナウンスした。

 また、ライバルの自動車メーカーが不在となったWECスーパーシーズンにトヨタが参戦を続ける意義が、ル・マンの本戦を前に語られている。

 ル・マン参戦概要説明会に登壇した北澤重久GRマーケティグ部長は「我々は2016年に続き昨年もル・マンで大変悔しい想いをしました」と過去2シーズンのル・マンの戦績を振り返った。

「そのなかでポルシェのLMP1撤退という衝撃的なニュースを受け、(2018年からのシーズンに)メーカーワークスとして『ひとり残って戦い続ける意味があるのか』という声も社内外からたくさん届きましたが、昨年12月、正式に参戦継続を発表しました」

 北澤氏はその理由として、トヨタがクルマの“強さ”を一般のユーザーが乗るロードカーに反映させることを目指しているためだと説明する。

「我々のマシンは昨年、(公道セクションが多数を占める)ル・マンの道を速く走ることはできました。それは小林可夢偉選手が記録したコースレコードが証明してくれたと思います。しかし、そこにクルマとしての強さを兼ね備えることはできませんでした」

 今年1月の東京オートサロンで初公開された『GRスポーツコンセプト』が街なかを走る未来を、本気で目指しているというGRでは、この点を最重視し「現在は24時間レースを走りきれる技術が高めきれていない。ル・マンの24時間を走り切って初めて(性能や技術を)ロードカーに落とし込めます。そのためにWEC参戦の継続を決めた」のだという。

 厳しいレースを乗り切りため、これまで以上に強いクルマづくりを目指すこととなったトヨタは、2018年型トヨタTS050ハイブリッドの信頼性を高めることに重きをおいて開発を行なってきた。

 可夢偉と中嶋一貴が登壇したトークショーでは、その開発の一部として行われた冬の間のテストで、擬似的に起こしたトラブルにドライバーやメカニックが対応するシミュレーションや、実際に3輪走行でコースに出てピットまで戻ってくるという“防災訓練的”なトラブルシューティングも複数回行われたことが明かされている。

 そんなトークショーではマシンの進化について話が及び、2012年からWECに出場し続けている一貴は「TS050ハイブリッドは当時のマシンとはまったく違う。特に乗りやすさは雲泥の差です」と語った。

「2012年(のTS030ハイブリッド)はいわゆる“じゃじゃ馬”で、走るだけで精一杯という状況でした。しかし、現在のクルマは当時よりもパワーが増えているのに乗りやすい。パワーが効率よく路面に伝えられているのだと思います」

 この意見に可夢偉も同調し「LMP1参戦当時は(ドライビングが)とても難しいと感じていたが、最近は乗っていると気持ちいい。他カテゴリーにも乗ってますけど、雨の日に一番怖がらずに乗れるがLMP1なんです」とマシンの飛躍的な進化を認めている。

「皆さんには(今年は)誰と戦っているんだ? 思われていますが、ル・マンこそライバルが居なくても戦う相手がいるんです」と可夢偉。

「ゆっくり走るのではなく去年より速く、そして信頼性を上げたマシンで、今年こそトラブルなく走りきり表彰台のトップに立てるようにしたいです」

 また一貴も「毎年毎年(ル・マンで)戦ってきて、期待を裏切り続けてしまった。今年勝たなくていつ勝つんだと思われていますが、戦い切ることの難しさは誰よりも分かっているつもりです」と語り、「7号車と8号車のどちらも表彰台に登って、いい報告ができるようにしたい」と意気込んだ。

 ル・マン24時間は今週末の6月3日(日)に控えたテストデーを経て6月16~17日に本戦を迎えるが、トヨタでは決勝レース開催中、レーススタートから1時間後と日本時間翌17日(日)9時、12時、17時、21時そしてチェッカー後の23時にダイジェスト動画をTOYOTA GAZOO Racingホームページ内の特設サイトで公開する。

 また、東京・お台場のMEGA WEBでは、昨年に引き続きパブリックビューイングイベントが実施される予定だ。