トップへ

DEVIL NO ID、クリエイターとのコラボによる“音楽的冒険” 洋楽シーンとリンクするサウンドを分析

2018年05月29日 12:52  リアルサウンド

リアルサウンド

写真

 2016年、沖縄ストリートシーンに突如現われたガールズダンスクルー、DEVIL NO ID。彼女たちの2ndシングル曲「Sweet Escape」を、Pa’s Lam Systemがリミックスして新たな楽曲に生まれ変わらせた「Sweet Escape[Pa’s Lam System Remix]」が配信リリースされた。


参考:2.5次元ガールズクルー DEVIL NO IDが体現する、ポップカルチャーの“新しい刺激”


 DEVIL NO IDはボーカルのkarin(カリン)、hana(ハナ)、ラッパーmion(ミオン)の3人からなるダンス&ボーカルグループ。うとまるが手掛けたビジュアルイメージを活かしたSF/サイバーパンク的な世界観のコミックを筆頭に様々なメディアミックス的展開を行なっており、2016年の本格デビュー以降、「ミュージック」「ビジュアル」「ダンス」「ストリート」「マンガ」「サブカル」といったキーワードを横断する刺激的な活動を続けている。中でも音楽面での冒険は素晴らしい。まずはこれまでの音楽性を振り返ってみよう。


 これまで彼女たちのシングル曲で大きな役割を果たしてきたのは、自身名義でのクラブミュージックの先端をブレンドした楽曲群に加えて、ももいろクローバーZの「Neo STARGATE」などを筆頭に他アーティストのプロデュース/アレンジも多数手掛けるTeddyLoidの存在だ。2016年9月の1stシングル『EVE -革命前夜-』は彼がサウンドプロデュースを担当し、2ndシングル『Sweet Escape』、3rdシングル『シグナル』の表題曲でもアレンジとミックスを担当している。


 また、3rdシングルのM2「まよいのもり」ではMonster Rionがサウンドプロデュースを担当。Monster Rionはエレクトロ/ヒップホップシーンで活躍するプロデューサーSONPUBと、レゲエを主体に活動するMC/セレクターのThe BK Soundのユニットで、この楽曲はダンスホール~レゲエとトラップ以降のベースミュージックを融合させた楽曲に。Major Lazer&DJ Snakeの「Lean On (feat. MØ)」や、Drakeの「One Dance」のヒットで世界的に再ブームが巻き起こったダンスホールをいち早く取り入れた。


 続いて2017年10月に発表したデジタルシングル「かしましサバト」では、AZUpubschoolとCOR!Sによるコンポーザーデュオ、KiWiがプロデュースを担当。彼らがKLOOZとともに作詞作曲にも関わることで、ハロウィンを思わせるファンタジックな空想の世界を生み出した。KiWiはもともと空想上のストーリーを原案にした物語性の高い楽曲に定評があり、同時にディプロが主宰するレーベル<MAD DECENT>などからのリリースでも知られるなど、海外からも支持を集めている。また、彼らの楽曲には「おばけのキウィ」などを筆頭におばけが登場するミステリアスな世界観の楽曲が多数あるため、この「かしましサバト」ではトラップを取り入れつつも、ハロウィンシーズンにもピッタリの不思議なサウンドに仕上がっていた。


 2018年には、これまでリリースしてきた楽曲を気鋭のトラックメイカーたちがリミックスする企画もスタート。第1弾として2月25日に配信リリースされた「BANDANA[Masayoshi Iimori Remix]」では、三浦大知の「EXCITE」に楽曲提供したCarpainterも名を連ねる渋谷発のクルーTREKKIE TRAXや、スクリレックスが出資するメディア/レーベル<Nest HQ>からの作品で知られ、最近では人気YouTuber・アバンティーズの「アバみ」をプロデュースしたことも記憶に新しいMasayoshi Iimoriがリミックスを担当。ベースミュージックの最先端で冒険を繰り広げる彼の手によって、原曲にもあったメンバー3人によるMigosなどにも通じるトラップ由来のラップパートを活かしたフロアバンガーが誕生した。


 そのリミックス企画の第2弾となるのが、5月27日にリリースされた「Sweet Escape[Pa’s Lam System Remix]」だ。リミキサーとして起用されたPa’s Lam systemは、<Maltine Records>からリリースされネットレーベル系のクラブイベントなどで一大アンセムとなった「I’m Coming」などで注目を集め、2016年にデジタル配信限定EP『TWISTSTEP』でメジャーデビュー。tofubeatsの「CAND¥¥¥LAND feat. LIZ (Pa’s Lam System Remix)」など名リミックスも数多く残している3人組だ。向井太一とのコラボレーションや、リーガルリリーのたかはしほのかを迎えた京急スカイライナーのCM曲も話題となった。


 今回の「Sweet Escape[Pa’s Lam System Remix]」は、フューチャーベースやレイヴミュージック、昨今アニクラシーンとも連動する形で盛り上がるハードコアなどが混然一体となった、情報過多極まりない雰囲気がいかにもPa’s Lam Systemらしい雰囲気のリミックス。生音感を丁寧にブレンドしたエレクトロ系のトラックに乗せて<バイバイ/笑顔で言うよ/バイバイ/過去の自分に/バイバイ/変わらなきゃ、もう/また/会いたい人たちがいるよ/君にもね……>と歌われるセンチメンタルで爽やかなポップ曲だった原曲を、メンバーの声まで加工することで、完全フロア対応のキラーチューンに仕上げている。


 こうして音楽面だけを振り返ってみても、DEVIL NO IDの楽曲には国内にとどまらず世界の音楽シーンのトレンドともリンクするような、刺激的な冒険が詰まっている。それがメンバーの高いボーカル/ダンススキルや、コミックなどと連動したメディアミックス展開によって広がっていく様子は、やはりこのグループならではだ。BTSを筆頭に高い音楽性とパフォーマンスの双方で支持されるダンス&ボーカルグループが世界の音楽シーンを席巻している昨今。彼女たちの活躍はこれから更に勢いを増していくはずだ。(杉山 仁)