インディカー・シリーズ第6戦にスケジュールされた第102回インディ500の決勝レースが27日に行われ、ウィル・パワー(チーム・ペンスキー)が11度目の挑戦でインディ500を初制覇した。2連覇を目指した佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)は、序盤にクラッシュを喫しリタイアとなった。
天気予報の通り、第102回インディ500は史上最も暑いコンディションでのレースとなった。決勝日は早朝から蒸し暑く、レースが始まる正午過ぎには32度に達し、朝から直射日光が路面に照りつけ続けたことで路面温度は50度に迫っていた。
今年のインディ500は新エアロキット装着での初レース。予選ではシボレー勢が優位に立ち、ポールポジションはエド・カーペンター(エド・カーペンター・レーシング)、チームメイトのスペンサー・ピゴットが6番手、スポット参戦で今回が引退レースのダニカ・パトリックが7番手だった。
予選2番手はシモン・パジェノー、3番手はウィル・パワー、4番手はジョセフ・ニューガーデンで、8番手がエリオ・カストロネベス。チーム・ペンスキーは4人全員がトップ9入りした。
ホンダ勢はセバスチャン・ブルデー(デイル・コイン・レーシング・ウィズ・ヴァッサー・サリヴァン)が最速で5番手。次がスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)の9番手だった。昨年度ウイナーの佐藤琢磨は予選16番手、その前の年のウイナー、アレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)は32番手で最後列からのスタートとなっていた。
プラクティスの時から出場ドライバーたちが心配していたのは、新エアロキットはダウンフォース不足が過ぎる点だった。今年からプラクティスが1日減らされたこともあり、出場チームはエアロキットの理解が不十分なままレースを迎えた。
そこに高温という悪いコンディションがプラスされ、レースの難易度が上がった。マシン同士が前後に接近しにくく、ドラフティングを使ってのパスができにくくなっていた。
間隔の開いた長い列で淡々と周回は重ねられた。ポールスタートのカーペンター、予選3番手だったパワーがライバルたちより少し上の走りを続け、トップ争いを展開。
彼らのポジション争いは、レースの折り返し点を前に決着した。ピットタイミングとピット作業の速さで前に出たパワーは、この後カーペンターに前を走らせることがなかった。
少しずつだが上昇を続けた気温などのコンディションにパワーは的確にマシンをアジャストしていったが、カーペンターはそれが不十分だった。終盤を迎えたレースではパワーの優位が明らかで、カーペンターにアタックのチャンスを与えることなくインディ500初勝利のチェッカードフラッグを受けた。
最終的に2位になったカーペンターだったが、彼よりもパワーにプレッシャーを与えたのは燃費作戦で戦う複数のチームだった。
最後のピットストップを終えたパワーは、ディクソンを追い、オリオール・セルビア(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)を追い、彼らをパス。それでもまだ前にはステファン・ウィルソン(アンドレッティ・オートスポート)とジャック・ハーベイ(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)がおり、彼らのどちらかにゴールまで逃げ切られてしまう可能性に晒されていた。
しかし、ゴールまで197周を終えるところでウィルソンとハーベイはピットロードに消え、残り3周でパワーはトップに復活。11回目のインディ500挑戦で初勝利を掴み、ビクトリーレーンでは、これまでに彼が見せたことのないほど喜びを見せた。
カーペンターは自身15回目のインディ500を3回目のポール・ポジションからスタート。65周をリードして優勝を目指したが届かなかった。
「アンダーステア傾向が強まり、調整でそれを克服できなかった」とカーペンターは敗因を語った。
フルコースコーション中の残り40周で給油を行い燃費走行作戦に切り替えたディクソンは、トップを守り切れなかったものの3位でゴールした。
昨年のインディ500で日本人初優勝の快挙を達成した佐藤琢磨は、16番手からスタート。最初のスティントは予選順位とほぼ同じポジションを保って戦っていた。その彼がいきなりアクシデントに巻き込まれた。周回遅れのマシンとラインが交錯してクラッシュした。
「相手があまりにも遅いスピードで走っていたため、避けることができなかった。スピード差があり過ぎた。アクセルを戻し、ブレーキまで踏んだけれど止まれなかった」と琢磨は唇を噛んだ。
インディ500を終えたインディカー・シリーズは、来週末にデトロイトでのダブルヘッダーを迎える。不完全燃焼で終った琢磨には、デトロイト戦でリベンジして欲しい。