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岩田剛典「ワクワクしませんか」に込められた信念 『崖っぷちホテル!』宇海から目が離せない

2018年05月28日 13:22  リアルサウンド

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 日曜ドラマ『崖っぷちホテル!』(日本テレビ系)は、多額の負債を抱え、客足も遠のいた、まさに”崖っぷち”な老舗ホテル「グランデ インヴルサ」を舞台に、自由奔放な副支配人をはじめ、個性豊かな従業員たちがホテル再建のために奮闘するコメディドラマ。5月27日放送の第7話では、ホテルを崖っぷちに追い込んだ張本人とも言える、現・支配人である佐那(戸田恵梨香)の兄、誠一(佐藤隆太)が帰ってくるところから物語は始まる。


参考:岩田剛典が語る『崖っぷちホテル!』の撮影裏 「現場に入ってイメージが変わった」


 第7話で、誠一は従業員の配置替えを相談なしに決めてしまう。戸惑う従業員の姿を見て、妹である佐那は苛立つ様子を見せるのだが、宇海(岩田剛典)はそんな誠一のやり方に「ワクワクしませんか」と賛同、配置替えをポジティブに捉える。しかしこの宇海の行動こそ、彼の信念に基づいたものであり、ホテル再建に必要不可欠だということを、わたしたち視聴者は物語の最後に気づかされる。


 これまでも宇海は、無理難題ともいえるさまざまな課題を従業員に与えてきた。課題に対し、困惑した表情を見せる従業員も多かったが、宇海の特徴的な台詞に押され、課題に取り組むことになる。特徴的な台詞とは、「ワクワクしませんか」である。宇海を演じている岩田は、この台詞を発するとき、目を輝かせ、ワクワクしてたまらないといった表情を見せる。宇海の素性は未だはっきりとは明かされていないが、彼がどれだけホテルを愛し、ホテルマンとして人をもてなすことに誇りを持っているかがその台詞に集約されているように思う。現に彼が「ワクワク」することは、従業員にとって無茶な課題になるのは事実だが、ホテルを良い方向に導くものであることは各話を見ていただければ一目瞭然だ。そして宇海は、その「ワクワク」する課題の本質を従業員自身が感じられるよう、彼らにさりげなく手助けしつつも、最終的には彼らだけの力で課題を乗り越えられるよう仕向けてきた。


 ホテルを崖っぷちに追い込んだ張本人である誠一に、古くから勤めてきた従業員たちは不満を募らせる。そんな彼らは、ホテルのピンチを幾度となく救ってきた宇海に、突然の配置替えを「なんとかしてよ」と投げかけるが、「配置替えをすることで、経験したことのない分野を学ぶことができる」と宇海はポジティブに返す。


 自由奔放な宇海を、岩田は「イメージはディズニーの妖精さん」と話す(番組公式サイト参照)。ニコニコとした表情を絶やさず演じている彼だが、ニコニコ笑っている“だけ”の人物かというとそうではない。彼は恐らく、ホテルが良い方向に向かっていることを確信している。そしてその要因が、このホテルで働き、このホテルで働くことに誇りを持った従業員たちそのものだということを確信しているのだ。


 佐那の心配をよそに配置替えは決行され、はじめは慣れない役職にうまく動けない従業員もいた。しかし彼らはもう、かつての「崖っぷちホテル」従業員ではない。業務終了後、自発的に集まり、互いの仕事を教え合う講習会を開いていた。佐那がその様子を見ている宇海が現れる。暗い顔をしている佐那に話しかける宇海。


「ここにいるみなさんは味方です。あなたの。まずは目の前のお客様を笑顔にしてから、色んなことを考えましょう。それがホテルマンです」


 「ワクワクしませんか」という特徴的な台詞で、自由奔放に振舞っていたかのように見えた宇海だが、彼の信念は第1話から一度も揺らいでいない。彼はホテルマンなのだ。目の前のお客様を第一優先に、どうしたらお客様に喜んでいただけるか、心地よく過ごしてもらえるかを常に考えている。「それがホテルマンです」と言った宇海の目は、ホテルマンとしての誇りが垣間見えた。岩田は、この宇海のホテルへの想いが詰まった台詞を真摯に受け止め、発したのだろう。宇海というキャラクターの真髄が、視聴者に届いた瞬間だった。


 誠一は、従業員をファミリーと呼びながらも、彼らに何も告げることなくホテル売却の話を進めていた。しかし宇海や時貞(渡辺いっけい)が「グランデ インヴルサ」の常連客や株保有者から株を買い集め、総支配人としての権利を佐那に戻すことで、ホテル売却の話はなくなる。宇海は誠一に対し、「従業員のこと、ファミリーって呼んでましたよね。でも、家族を傷つける人は家族じゃないですから」とあっけらかんとして言ってのける。後々佐那に「お兄さんのこと、好きでしたよ」と話す宇海。しかし彼はホテルマンとして、ホテルを守るために当たり前の選択をしただけだ。


 今後、宇海がなぜこれほどまでに「グランデ インヴルサ」を良くしようとするのかが明かされていくことだろう。いちホテルマンとして、ひょうひょうとした姿を見せながらも、誇りを持って行動する宇海から目が離せない。(片山香帆)