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トロロッソ・ホンダF1密着:抜きにくいモナコで功を奏したガスリーのタイヤ戦略

2018年05月28日 10:31  AUTOSPORT web

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2018年F1第6戦モナコGP ピエール・ガスリー
モナコは、抜きどころがほとんどないため、スタートポジションがいつも以上に重要となり、予選が白熱する。最適なタイミングでアタックしようとするため、渋滞が起きやすく、コンマ1秒でもタイムを削ろうとしてミスを犯しやすい。土曜日のトロロッソ・ホンダの2台の予選は、まさにそんなモナコGP特有の罠にはまってしまった。 

 ピエール・ガスリーが10番手、予選16位のブレンドン・ハートレーは、予選15位のロマン・グロージャンが、前戦スペインGPで多重クラッシュを責任を問われ3グリッド降格のペナルティを受けていたため、1つポジションを上げて15番手からスタートを切った。

 コース上ではオーバーテイクが難しいモナコ市街地サーキットだが、まったく抜けないわけではない。それはレギュレーションによって、レースでは2種類以上のコンパウンドを使用しなければならないため、少なくとも1回はピットインしなければならないからだ。
 コース上で抜けないモナコでは近年、1ストップが主流となっているため、その1回のピットストップをいつ行うのかが、いつも以上に重要となってくる。

 10番手からスタートしたガスリーのこの日のライバルは、6番手スタートのエステバン・オコン(フォース・インディア)、7番手スタートのフェルナンド・アロンソ(マクラーレン)、8番手スタートのカルロス・サインツJr.(ルノー)、そして9番手スタートのセルジオ・ペレス(フォース・インディア)だった。

 この中で最初にピットインしたのが16周目のサインツで、19周目にアロンソが続いた。その後、21周目にはペレスが、そして23周目にオコンがピットインする。つまり、トップ10の中団グループの中でガスリーだけがピットストップを遅らせたのである。

 ただし、それは予定されていたものではなかった。
「想定ではもう少し早く入るつもりでした。ただ、レース中の展開とタイヤのデグラデーションを見て、行けるところまで(ピットストップを)引っ張った方が得策かもしれないということは、レース前に念頭に入れていました」(田辺豊治F1テクニカルディレクター)


 タイヤ交換を済ませたライバル勢のペースが予想よりも上がらない中、前が空いたガスリーは単独走行で自分のペースで走ることができたため、チームはピットストップのタイミングを1周、また1周と遅らせ続けた。トロロッソがガスリーにピットインの指示を出したのは37周目。これはハイパーソフトでスタートしたドライバーの中で、最も長いスティントだった。

 この作戦が功を奏し、ガスリーは1つの上のポジションからスタートしていたサインツの前でコースに復帰。ペレスはタイヤ交換作業でトラブルに見舞われて後退し、アロンソはギヤボックストラブルでリタイア。レース後半、前にいるライバルはオコンだけだった。

 レース終盤、ガスリーと異なるタイヤ戦略を採って追い上げるニコ・ヒュルケンベルグ(ルノー)とマックス・フェルスタッペン(レッドブル)を抑え切って7位でチェッカーフラッグを受けたガスリー。第2戦バーレーンGP以来の入賞を飾った。

 レース後、田辺TDはこう言ってチームが採った戦略を評価した。
「チームもあそこでステイアウトすることは勇気のいる作戦だったと言っていましたが、よくやったと思います。もし、周りのライバル勢がピットインしたときに、慌ててガスリーをピットインさせていたら、こういう結果は手にすることができなかったでしょう」

 抜きにくいモナコで、順位を上げるためにどうしたらいいのか。この日のトロロッソ・ホンダはその典型的なレースを行なったといいだろう。

 なお、ハートレーは11番手走行中の71周目にシャルル・ルクレール(ザウバー)に追突されてリタイア。レース審議委員会は、ルクレールのブレーキディスクに問題があったとして、不問に付した。