「クルマの状態は、Q3に引っかかってくれればいいというような感じではなく、あわよくば、Q3でももう少し上のポジションを狙える速さがあっただけに残念です」
モナコGPの予選を終えた後、ホンダの田辺豊治F1テクニカルディレクターはそういって、バーレーンGP以来のQ3進出を喜ぶよりも、10位に終わったことを悔やんでいた。
市街地コースのモナコで、トラクションのかかりがいいSTR13には速さがあった。いったい、何があったのか?
Q3の1セット目のタイヤでのアタックは中古のハイパーソフトで路面の状態をチェック。2セット目のタイヤでのアタックで新品のハイパーソフトを履いて出て行った。モナコは渋滞が予想されるため、アタックは2回を予定。ただし、2回目はあくまで1回目がうまく行かなかったときの保険で、タイヤのグリップ力を考えると1回目のアタックが勝負となった。
18.9の自己ベストでセクター1を通過したピエール・ガスリーは、セクター2も33.7秒と自己ベストをマーク。それまでのセクター2の自己ベストが33.9秒だったから、コンマ2秒もゲインしていたわけである。
ところが、「すべてを懸けて走っていた」というガスリーは、プールサイドシケインのイン側のガードレールに右フロントタイヤを当ててしまう。
「ガードレールに当たった瞬間、マックス(・フェルスタッペン)のことが頭をよぎった」というガスリーの右フロントサスペンションは折れなかったが、シケイン出口にある高い縁石に乗ってフロアをこすってしまい大きくタイムロス。セクター3に19.6秒を費やし、1分12秒315とQ2の自己ベストの1分12秒313を上回れずに終わる。
1周クールダウンラップをはさみ、その後アタックを再開させたガスリーは、セクター1と2でわずかに自己ベストを更新できなかったものの、セクター3で19.2秒の自己ベストを出し、なんとか1分12秒221の自己ベストを更新した。
もし、Q3の2セット目のタイヤの1回目のアタックのセクター3で、この19.2秒を出していれば、ガスリーの予選タイムは1分11秒956となり、予選6番手のエステバン・オコンを上回っていた。
「それほど激しい接触ではなかった。でも、少しはタイムを失ったと思う」(ガスリー)
しかし、その代償は、あまりにも大きかった。