日本の企業の中には、社員の親睦を深めるため社内運動会を開くところもある。古くから親しまれてきたこの運動会文化が、「日本式チームビルディング」として海外に輸出されることになった。
企業運動会を実施する「運動会屋」が、米国カリフォリニア州のシリコンバレーを中心に海外展開をスタートした。同社はこれまで、国内の企業内運動会を多く手がけてきた。2007年の設立以来、実施件数は毎年増え続け、2017年は年間236件の運動会を企画・運営している。
発砲音と間違えられるスタートピストルは使用禁止など、米国ならではの配慮も
担当者によると、日本で実施した企業からは「今まで同じ会社にいても話したことのなかった社員同士が運動会をきっかけに話すようになり、他部署でも仕事の依頼がしやすくなり、スムーズに進むようになった」という感想も出るなど、おおむね好評だという。
社内運動会は、「恥ずかしい思いをしたくない」という理由で参加を嫌がる人も多いが、「運動会が進むにつれ、皆夢中になり、最後には皆様、参加してよかったと満足して帰られます」(同社担当者)と、参加後の満足度は高いようだ。
シリコンバレーには、優秀な人材が高い給与とやりがいを持ち働ける環境がある。一方で、個人単位で業務を抱え、成果主義的な働き方をする企業では、同じ社内でも他人に相談しづらいなど、働き方がコミュニケーションを阻害する要因にもなっているという。
また、インド人や中国人をはじめとした外国人比率も高く、「それぞれの人種でコミュニティーを形成する傾向にあることから、運動会のニーズがあるのではないか」と考えたそうだ。
アメリカは訴訟社会のため、実施にあたり誓約書を作成。また、発砲と間違えられるスタートピストルは使わないようにするなど、日本とは違う配慮が求められる。休日開催では人が集まりにくいため、仕事の一環として平日の実施する会社もあるという。
「忍者障害物競争」が人気 初年度は20件の受注目指す
5月19日には日米交流団体、ジャパン・ソサエティー・オブ・ノース・カリフォルニアが主催したイベントの一部として運動会を開催した。4~10歳の子ども約100人とその家族が楽しんだという。参加者の9割はアメリカ人だった。
当日は、お玉でピンポンを運んだりネットをくぐったり、マシュマロ食い競争をしたりする「忍者障害物競走」が人気で、担当者は、
「ネットくぐりを気に入った小さい子が何度もネットの中を行ったり来たりする姿が見られ、笑いを誘いました」
と語っていた。
5月27日には、シリコンバレーの日本人コミュニティーを対象とした「シリコンバレー大運動祭」の一部として運動会を開催する。約350人が参加する予定で、こちらは参加者の約7割が日本人だ。
同社はアメリカで、初年度に20件の受注を目指すとしている。既に1社、230人規模の企業と交渉中だという。