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『半分、青い。』秋風から弟子たちに受け継がれた情熱 第8週は豊川悦司が主役に

2018年05月27日 06:11  リアルサウンド

リアルサウンド

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 「朝ドラムービングサーズデイ」。そう例えたのは、『あさイチ』(NHK総合)で朝ドラ受けを続けるMC、博多華丸・大吉の博多華丸。彼が言うには、朝ドラは木曜日にことが動き、金曜日に焦らされ、土曜日に解決するのだという。『半分、青い。』(NHK総合)第8週「助けたい!」はまさに華丸の考察通りにストーリーが進んでいった。ドラマのヒロインは楡野鈴愛(永野芽郁)であるが、第8週は秋風羽織(豊川悦司)がメインの週であったと言えるだろう。


 鈴愛がネームを捨てたと勘違いした漫画『さよならは私から言う』を、秋風が“遺作”と呼んでいたこと、さらには急なファンの前でのトークショー、秋風漫画塾の開講、新連載の話を断ったことなど、徐々にパズルのピースが揃っていくことでマネージャーの菱本(井川遥)は彼の癌の再発を疑う。秋風はただ、名作をこの世に残すのではなく、自分自身、つまり漫画を描くテクニックや漫画への姿勢、情熱をボクテ(志尊淳)やユーコ(清野菜名)、鈴愛に受け継がせたかったのだ。


 第7週で菱本は鈴愛という存在が秋風の心を動かしている、創作のいい刺激になると嬉しそうに話していた。偏屈でいて、大人っぽくも子供っぽくもある秋風は、その性根は変わらないまでも、少し丸くなった印象がある。家族がいない秋風は、ペットの犬たちだけが友達だった。先に天国へ旅立っていく恐怖からもう飼うことはなくなっていたが、突如プライベートルームに現れた犬たちのパネル。手紙による鈴愛の感謝の言葉に「アホらしい。酔いもさめるっちゅうねん」となぜか関西弁混じりで照れて見せるも、少しずつ心の距離は縮まっていたように思える。


 そして、本名の美濃権太とゆかりのある地、岐阜の鈴愛の実家つくし食堂へと足を運んだ際も、仲睦まじい楡野家を目の前にし、家族の温かさに「ここは桃源郷のようだ」と一言。死期が近いと悟り「少し、旅に出る」と置き手紙を残し、再びつくし食堂へと向かったのは、秋風にとっても岐阜が帰る場所になっていたから。30歳手前で覚悟を決め、漫画家になることを志し、遅咲きデビューした秋風は、セールスマン時代も含めて、仕事漬けの毎日。ひょんなことから辿り着いた桃源郷・つくし食堂で、秋風は団らんの一時に思わずすすり泣く。


 鈴愛にとっても秋風は、大切な生きてもらわないといけない人。先生のため、と不器用ながら必死に岐阜の人々に相談した結果、律(佐藤健)との口論にまで発展したが、彼女の爆発的な行動力は秋風だけではなく、事務所「オフィス・ティンカーベル」全体を巻きこんでいく。秋風の病に一番に親身になって付き添ったのは菱本。マネージャーでありながら、秋風と対等、時にはたしなめもする菱本は、時折大胆な行動に移る。「5分でいいから私より長く生きてくださいね。私、先生のいない世界に生きる勇気はありませんので」と言ってみたり、ガンが内視鏡治療で取り除ける新規の極小のものであることが分かると、秋風の手の甲に自身の手を重ねてみたり。


 第8週ではボクテによる漫画での「菱本若菜劇場」が展開され、彼女の紆余曲折ある過去が明らかになったが、やはり気になるのは秋風とは男女の関係にあるのか、憧れの存在であるのかというところ。以前、正人(中村倫也)が鈴愛を彼女と冗談で紹介した際、菱本が「先を越されたかと……」とぼそっとつぶやいていることを考えれば、意中の相手がいるということだろうか。


 1990年代を代表するトレンディドラマ『東京ラブストーリー』(フジテレビ系)の主題歌「ラブ・ストーリーは突然に」“風”のイントロをバックに、鈴愛の正人へのラブストーリーが始まるところで第8週は幕を閉じる。高校時代には、初恋相手・こばやん(森優作)とのデートが大失敗に終わり、あえなく玉砕となったが、今回は次第に惹かれあっていく恋愛。一方の律も、運命の相手・清(古畑星夏)と再会を果たし、第9週のタイトル「会いたい!」は様々な意味を持ち合わせていそうだ。(渡辺彰浩)