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スカイピース、楽曲に見る彼ら自身の“物語” 主題歌務める『七つの大罪』との親和性を考察

2018年05月26日 12:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 人気YouTuberとして活動する傍ら、アーティストとして昨年メジャーデビューも果たした、☆イニ☆(じん)とテオくんによるユニット・スカイピース。これまで、彼らのシングルリリースは配信のみだったが、アニメ『七つの大罪 戒めの復活』(MBS/TBS系)のオープニングテーマを収録した1stシングル『雨が降るから虹が出る』が、5月23日に発売された。


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 若い女性を中心に絶大な支持を誇る“カリスマ”的な印象が強いスカイピースだが、☆イニ☆はもともと、専門学校卒業後は就職するつもりだったという。すでに内定も決まっていた彼をテオくんが口説き落として、スカイピースが結成されたのだ。それだけでもかなり驚きだが、その後の展開もまさにシンデレラストーリー。YouTubeのチャンネル開設から2年弱となる現在のチャンネル登録者数は160万人以上、動画の総再生回数は7億回にのぼるなど、まだまだその勢いを伸ばし続けている。


 ネット投稿をきっかけにデビューへと至ったアーティストはもはや珍しくはないとはいえ、その多くは楽曲投稿が主だっただろう。音楽に特化したニコニコ動画のボカロPや音楽系YouTuberとは違い、スカイピースは「○○で1万円使えるまで帰れま10」といった企画動画も多数アップしている。それもあって、彼らのメジャーデビューには、多くの人が驚かされたのではないだろうか。


 そうした企画動画の存在は、YouTuberとしてのみならず、アーティストとしてのスカイピースの人気をも大きく支えているように感じられる。というのも、企画動画で彼らの人柄や関係性が浮き彫りになることで、アーティスト活動や楽曲のストーリー性、メッセージ性が増すためだ。


 今回のシングルに収録されている楽曲の作詞は、すべてスカイピースが担当している。なかでも、アニメタイアップとなった「雨が降るから虹が出る」の歌詞は、とてもドラマチックで引き込まれる内容だ。タイトル通り、Aメロでは暗い過去を“雨”にたとえて描き、サビでは前向きに歩み出すさまを歌っている。オープニング映像の劇的な演出も相まって、オープニング単独でひとつの物語が成立しているように感じられるほどだ。


 また、この曲に織り込まれている“絆”というテーマは、『七つの大罪』のキャラクターたちの絆のみならず、スカイピース二人の絆の強さも連想させる。<険しい道でも二人で歩き>と歌詞にあるように、この曲は彼ら自身をモデルとして書いているのだろう。スカイピースは、とにかくユニット仲がいいことで知られており、彼らの動画を見ればその仲睦まじさは一目瞭然だ。それほど仲がいいにも関わらず、性格は真逆という部分も、まるでアニメの登場キャラたちのよう。そうした彼ら自身の“物語”が、『七つの大罪』の世界観と重なり、楽曲により説得力の強さを持たせているのだ。


 さらに、歌詞中には、『七つの大罪』に登場するキャラクターの名前で韻を踏んだギミックも隠されている。ぜひ探してみてほしい。


 通常盤には、女性視点で切ない恋をしっとりと歌い上げた「心の声は君にしか聞こえないんだよ」、童謡調の「ひみつのたんけんたい」など、異なるテイストのカップリングが収録されており、スカイピースの多面的な表現に触れられる。そんな中で、ファンの心に訴えかける力がとりわけ強いのは、やはり「雨が降るから虹が出る」のような、彼ら自身の絆や関係性を想起させる楽曲だろう。


 YouTuberとしての企画動画の投稿は、一見アーティスト活動とは関係ないものに見えるかもしれない。だが、たとえ音楽を介さない場であったとしても、そこで培った彼らの“物語”が、楽曲やアーティスト活動にも大きな意味を与えているのだ。


■まにょ
ライター(元ミュージシャン)。1989年、東京生まれ。早大文学部美術史コース卒。インストガールズバンド「虚弱。」でドラムを担当し、2012年には1stアルバムで全国デビュー。現在はカルチャー系ライターとして、各所で執筆中。好物はガンアクションアニメ。