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実は女性キャラがすごい『モンテ・クリスト伯』 新井浩文&山本美月の副音声も話題

2018年05月25日 17:12  リアルサウンド

リアルサウンド

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 自分の子宮で温めた男を、もう1度還す。そこに宿る愛は、どんな色をしているのだろう。5月24日に放送された『モンテ・クリスト伯 ―華麗なる復讐―』(フジテレビ系)第6話は、愛情について再度考えてしまう回だった。


参考:美しい山本美月【写真】


 第2話で神楽留美(稲森いずみ)と、彼女が産んだ息子・安堂完治(葉山奨之)を結びつけたモンテ・クリスト・真海(ディーン・フジオカ)。今回真海は、安堂が実は前科者で、そんな彼を紹介してしまったことを留美に謝罪する。そして、間接的ではあったが、安堂が留美の息子であることも彼女に分かる形で明かした。しかし彼女は、「一生懸命生きてきただけ」と嬉しそうに涙を流す。


 「自分の息子と寝ていたと知って絶望すると思っていたが、あんな嬉しそうな顔をするとは……」。これまで寸分違わぬ計算で復讐を進めてきた真海だったが、こんな表情を見せたのは初めてだった。お腹を痛めて産んだ我が子だと知らずに互いの湿度を楽しんだ留美。真実を知った後、安堂から「腐ったババアを抱いてやったんだから感謝しろよ」と言われても、彼を必死に守ろうとする。そこにあるのは、惚れたゆえなのか、母としての愛情なのか……。


 ジークムント・フロイトの弟子である精神分析者オットー・ランクが唱えた「出産外傷説」というものがある。ざっくり要約すると、安寧が約束された胎内という環境から、外の世界に出ることは人生最大のトラウマで、人は母体に還りたいと願いながらその代償を求めて生きていくという内容だ。ここではセックスも、男性器を胎児に置き換えた胎内回帰だと考えられている。


 両親が不在で、借金を抱えながら生きる安堂は厳しい人生を送る中、心のどこかで母の愛を求めていたのではないだろうか。そして留美も、無理とはわかっていながらもいつか我が子が自分の元に返ってくることを願っていたように感じる。夫の神楽清(新井浩文)に内緒で、若い男を2人も連れ込んで逢瀬を重ねてきた留美が性に溺れてしまったのは、空っぽの子宮に宿り続ける虚無感を一瞬でもいいから満たしたかったからなのかもしれない。


 南条幸男(大倉忠義)への復讐が始まった第6話だったが、正直に言えば留美を始めとする女性キャラクターの悲しいバックグラウンドが特に印象に残っていた。副音声で新井浩文が「いつもくっついてる」と言っていた真海と江田愛梨(桜井ユキ)も、違った様子を見せる。これまで真海の元に愛梨が身を寄せに来るのがお約束だったが、両親を殺された過去を思い出しタバコを取り出す彼女の元に、真海が優しく火を差し出した。


 好意が転じて相手を困らせたくなるのは、人が持つ不思議な感情だ。愛梨も身勝手な行動で真海を驚かせ、叱られてきたが、今回の2人からは、思っているよりも深く信頼関係が構築されていることが伺える。とはいえ、飴と鞭のバランスとタイミングを誰よりも心得ている真海の女性の操り方には脱帽させられる。


 愛梨も留美も自身に眠るトラウマを1人の男で癒やしているが、もう1人男性に希望を見出す女性がいる。父・入間公平(高橋克典)からの抑圧により息苦しく生きてきた未蘭(岸井ゆきの)だ。幼いころに母を亡くし、箱入りとして育てられたおとぎ話の世界を生きているような未蘭は、自分で見つけた唯一の光・守尾信一朗(高杉真宙)までをも父から遠ざけられてしまった。公平の束縛は愛情ゆえだと理解はできるのだが、彼女にとってはあまりにも窮屈すぎる。縛られた人生を歩んできた彼女は、たとえ信一朗と一緒にいても、いつも寂しそうな笑顔を見せているのが心苦しい。


 信一朗と父の意外な関係性を入手した彼女は、今後真海の駒と化すのだろう。幸男への復讐が幕を開けた今、ラスボスは入間公平のような予感がする。未蘭には、悪魔こと血の繋がらない母・瑛理奈(山口紗弥加)の魔の手が伸びようとしていることも忘れてはならない。少し脱線するが、第6話は全体的に光と影の演出が巧みで、特に瑛理奈が息子と家で話しているシーンの演出の緻密さは何度も確認してしまうほど素晴らしかった。


 愛梨以外の女性キャラクターは、瑛理奈は息子を、未蘭は信一朗を、留美は安堂をと、それぞれ守るべきものを抱えている。真海の復讐劇がメインの筋ではあるが、女性たちの背景と闘いが物語をおもしろくさせているのではと感じる。


 さて、堅い話はここまでにして、「本編の話が入ってこない」と話題の新井と山本美月の副音声についても触れておこう。数々のドラマで副音声企画がなされてきたが、重厚なストーリーの裏で繰り広げられる新井と山本の軽快なトークは、緊張しきった心臓を緩ませてくれた。山本はキャストをポケモンに置き換えていたが、そのセレクトが秀逸で、暖はリザードン、真海になったらブラックリザードンと答えていたのには思わず声が出た。


 残念ながら新井によるTwitter実況がなかった第6話だったが、今回の副音声は大成功。「副音声やる回間違えた」と新井は言っていたが、これからもキャストたちがおもしろおかしく本作を語ってくれないか期待してしまう。(阿部桜子)