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山本美月が語る、瀬々敬久監督と考えた“普通”の意味 映画『友罪』インタビュー

2018年05月25日 10:22  リアルサウンド

リアルサウンド

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 薬丸岳の同名ベストセラー小説を、『64 -ロクヨン-』の瀬々敬久監督によって映画化した『友罪』が5月25日より全国公開される。元週刊誌ジャーナリストの益田と、17年前に日本中を震撼させた児童殺人事件の犯人で、当時14歳の少年Aと呼ばれた鈴木。2人がある町工場で出会ったことから、それぞれ過去と現在が交錯し、止まっていた時計が動き出す模様が描かれる。


参考:『モンテ・クリスト伯 』山本美月が語る23歳から38歳への変化「ディーンさんとの関係に注目を」


 今回リアルサウンド映画部では、生田斗真演じる益田の元恋人で雑誌記者の杉本清美役を務めた山本美月にインタビューを行った。主演の生田や瀬々監督の印象や、これまでに感じたことのない現場の空気感だったという本作に対する思いなどについて、話を聞いた。


■「何度も何度も脚本を読み返しながら理解していくのがやっとでした」


――非常にシリアスな題材を扱った今回の作品、最初に出演の話を聞いたときの率直な感想を教えてください。


山本美月(以下、山本):主演の生田斗真さんや瑛太さんをはじめ、錚々たるキャストの方々の中に私が入っていくということに対してものすごく緊張しましたし、実際の事件を題材にした今回のような作品に出演するのは最近ではなかなかなかったので、より緊張感が増しました。


ーー作品に対してはどのような印象を受けましたか?


山本:最初に脚本を読んだときのことはあまり記憶になくて……。というのも、登場人物も多いですし、物語も複雑なので、脚本を1回読んだだけでは分からなかったんです。だから何度も何度も脚本を読み返しながら理解していくのがやっとでした。あと、ずっしりとした気持ちになったのは覚えています。


ーー神戸連続児童殺人事件が原作のモチーフになっているだけに、映画のトーンもずっしりとしていました。撮影現場の雰囲気も和やかというわけではなかったことが想像できます。


山本:そうですね。確かに現場には独特な緊張感が流れていました。とは言っても、私は撮影期間が数日だけだったので(笑)。


ーーそんなに短かったんですね。


山本:瑛太さんと夏帆さんとのパートなど出演していないシーンも結構あるので、他の方々のシーンがどうだったかは分かりませんが、私は生田さんとの共演シーンが多かったんです。居酒屋のシーンでは生田さんが気さくに話しかけてくださったのは覚えています。


ーー生田さんとの共演はいかがでしたか?


山本:編集部でのシーンは特に役に入られていて、いつも以上にお芝居に集中されている印象でした。私が演じた清美は説明ゼリフが多かったので、「間違えたらどうしよう」とか勝手に思ってすごく緊張したんですよ。でもNGもほとんど出さず無事に終わったのでホッとしましたね。


――清美は生田さん演じる益田の元恋人で雑誌記者という設定ですね。どのようなことを考えて役作りに臨んだのでしょう。


山本:益田とはもともと付き合っていたという設定もあったので、彼の前でしか出さない女っぽさは必要だなと思って、そこは意識しました。あと、人としてではなく、記者としての好奇心や抑えきれない感じ、興味津々なところはしっかり出そうと思いました。


ーー瀬々監督の作品に出演するのは今回が初めてですよね。監督からは何か注文やアドバイスは?


山本:監督からは「清美は登場人物の中で唯一普通の人だから、普通にして」と言われたんです。それで「普通って何だろう」ということをすごく考えさせられて……。結局、“普通”を意識しすぎると逆にハズれてしまうと思ったので、周りの人との関係性や、記者という職業に頼りながら、“普通”が表現できればいいなと思って演じました。すごく難しかったので、ちゃんと普通に見えていればいいんですけど……。


ーー他の登場人物との色の違いはしっかりと出ていたように感じました。


山本:そう言っていただけると嬉しいです。監督とのやりとりで印象に残っているのは“言葉”ですね。瀬々監督はお芝居の説明をするときに、すごく難しい言葉を使ってくるんですよ。でも、私はそこまで語彙力がないので、言っている意味が分からなくて(笑)。だからどういう意味なのかを毎回質問していましたね。


■「今もまだ下積みな気がします」


――清美に共感する部分はありましたか?


山本:彼女は仕事が好きで、仕事とプライベートをうまく切り離せていない感じがあるんです。そこは何となく共感できるなと思いました。


――山本さんも仕事とプライベートを切り離せないタイプなんですか?


山本:プライベートの時間を過ごしていても、「これは仕事だったらこうできるな」と考えてしまうんです。悲しい気持ちになったりイライラしたりしたときに、「こういう設定のシーンだったらこんな気持ちになるんだ」と仕事につなげてしまうことが結構あって。それは仕事に活かせる部分でもあるので、いいことでもあるとは思います。


ーー女優業は今年で8年目になりますね。今年は映画『去年の冬、きみと別れ』や現在放送中のドラマ『モンテ・クリスト伯 ―華麗なる復讐―』(フジテレビ系)など、これまで以上により幅広く活躍されている印象ですが、自身では女優としての成長を感じることはありますか?


山本:今もまだ下積みな気がしますし、まだ勉強している段階なんだろうなと思っています。今回この作品では、作品独特の空気感や、生田さんのお芝居に対する姿勢など、そこにいるだけで学べるものがたくさんありました。言葉にすることは難しいのですが、どの現場でもそれぞれの空気感がある中で、『友罪』の現場は本当にこれまで感じたことのない空気感だったんです。それは作品を観ていただければ自ずと伝わってくるのではないかと思います。


ーー確かにこれまでにはない、独特の空気感がありました。


山本:私は完成した作品を観て、何とも言えない気持ちになったんです。この気持ちをどこにぶつけたらいいんだろうって。はっきりとした正解がないので、この作品を観た方々がそれぞれどんなことを感じるのか、それがすごく気になる作品だと思います。私自身、感想を言うのがとても難しい作品でもあるので、ご覧いただいた方々に自分なりの正解を見つけていただけたらと思います。(宮川翔)