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6年連続最高記録更新の『コナン』 興収80億を射程に収め年間1位の可能性も!?

2018年05月24日 16:22  リアルサウンド

リアルサウンド

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 21位→11位→16位→12位→12位→7位→9位→9位→6位→4位。何の順位だかわかるだろうか? 1997年4月に公開された第1作『名探偵コナン 時計じかけの摩天楼』に始まる、映画版『名探偵コナン』シリーズの直近10年間の年間興収ランキングの推移である。2009年の『漆黒の追跡者(チェイサー)』からはコンスタントに興収30億以上を稼ぎ出すようになり、興収36.3億円を記録した2013年の『絶海の探偵(プライベート・アイ)』以降は年間興収ランキングのトップ10の常連に。超安定ブランドにして、今年の『ゼロの執行人』まで6年連続で右肩上がりという、シリーズ作品のお手本のような成長を遂げてきた。


 先週末の動員ランキングで6週連続1位となった『ゼロの執行人』は、累計で動員552万人、興収72億円を突破。この興収の数字はシリーズ最高記録更新というだけでなく、現在のところ今年度の年間ランキング1位の作品である『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(公開は2017年12月)の75億円を超えるのが確実であることを意味する。今週末にも今年度1位の作品となる『ゼロの執行人』、次のハードルは興収80億円の大台突破となる。


 ここまでのシリーズの歩みを振り返ってみると、『名探偵コナン』がヒットシリーズからメガヒットシリーズへと化けるターニングポイントとなったのは、2013年12月、つまり2014年の正月シーズンに公開された『ルパン三世VS名探偵コナン THE MOVIE』であったことがわかる。2009年3月に日本テレビ開局55周年と読売テレビ開局50周年の開局記念スペシャル番組として初放送されたテレビ版『ルパン三世VS名探偵コナン』を経て、その4年後に公開された『ルパン三世VS名探偵コナン THE MOVIE』。先に「2009年の『漆黒の追跡者』からはコンスタントに興収30億以上を稼ぎ出すように」なったと指摘したように、実はその2009年3月のテレビの特別番組が20億円台から30億円台へのベースアップのきっかけにもなったのだが、2013年12月公開の『ルパン三世VS名探偵コナン THE MOVIE』で初めて40億円を突破した『名探偵コナン』シリーズは、その後、通常シリーズでも興収が大きく底上げされて、40億円台を2回、60億円台を2回記録。そして今回、遂に80億円台に届こうとしているのだ。


 昨年度の年間1位は『美女と野獣』の124億円だが、2位になると『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』の73.4億円とガクッと数字が下がる。つまり、今後興収100億円クラスのメガヒット作品が現れない限り、『名探偵コナン』シリーズにとって初となる通年での年間1位も視野に入ってくる。今後公開される強力な作品というと、まず6月30日公開の『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』があるが、スピンオフ作品がメインシリーズ最新作『最後のジェダイ』の75億円を超えるとは考えにくい。夏以降には前作が95.3億円を記録した『ジュラシック・ワールド/炎の王国』や、細田守監督の新作『未来のミライ』や、『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』なども控えているが、『ジュラシック・ワールド/炎の王国』以外は興収80億円突破をこの段階で予想できるような作品ではない。ちなみに、他にもヒット・ポテンシャルの高い作品として11月23日公開の『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』があるが、これは日本興行界の慣例で集計では来年度扱いとなる。もちろん、2016年の『君の名は。』のように事前には誰も予想できなかった国民的ヒット作品が生まれる可能性もあるだろうし、映画興行界にとってはそうした作品が待たれるところだが、『ゼロの執行人』が年間1位に輝く可能性は十分にある。(宇野維正)