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スキマスイッチ×新海誠、水曜日のカンパネラ×ぬQ……クリエイターの作家性が光るアニメMV4選

2018年05月24日 15:32  リアルサウンド

リアルサウンド

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 YouTubeをはじめとする動画サイトでMVを見ることが一般的になった昨今。インパクトが強く、それでいて話題性に富んだ多種多様なMVが生み出される中、アニメーターを起用した意欲作を目にする機会も増えている。本稿では、最近公開されたアーティスト×アニメ作家のMVを紹介していきたい。


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■スキマスイッチ「ミスターカイト」×新海誠


 大成建設のテレビCM過去4作品には新海のアニメーションが用いられており、「ミスターカイト」がCMソングに決定したことからコラボが実現。MVでは、子ども時代を振り返るようなノスタルジックな情景やシンガポールの建設現場でたくましく働く人々の容が、新海誠ならでは映像美で映し出されていく。『秒速5センチメートル』(山崎まさよし)、『言の葉の庭』(秦基博)、『君の名は。』(RADWIMPS)など、これまで数々のアーティストと作品内でコラボしてきた新海誠。写実的に描写しながらも幻想的な鮮やかさで彩られる風景、そこに登場する人々の生き生きとした表情など、楽曲にストーリーテリングの役割を担わせると同時に、サウンドや歌詞が持つメッセージ性も拡張していく絶妙なバランスは新海作品の真骨頂とも言えるだろう。


■水曜日のカンパネラ「見ざる聞かざる言わざる」×ぬQ


 4thミニアルバム収録曲「桃太郎」以来、2度目のアニメーションMVとなるコムアイ(Vo)。完成版はまだ披露されていないが、コムアイのInstagramで映像の一部が都度公開されている。ぬQは、過去にチャットモンチー「こころとあたま」のMVを制作するほか、PARCOやNIKEといった広告CMにも起用されるなど、今話題を集めるアニメ作家のひとり。抽象的なデザインやキャラクター、奇抜な発想で唯一無二の存在感を放っており、断片的なMVからも水曜日カンパネラとぬQの個性が調和を見せる独特の雰囲気が感じられる。ポップでミステリアスな楽曲の魅力をどのように表現するのか、完成版を心待ちにしているファンも多そうだ。


■村松崇継「天使のくれた奇跡」.×May J×水江未来


 同曲は、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのクリスマスショー『天使のくれた奇跡III ~The Voice of an Angel~』のために村松崇継が書き下ろした作品。監督の水江未来は、細胞や幾何学図形をモチーフにしたグラフィカルな作風が特徴的だ。これまでRADWIMPSやトクマルシューゴのMVにも参加する一方で、山田悠介や筒井康隆の小説の表紙、時計のデザイン、エッセイの挿絵など多岐に渡って活動している。同MVでは、ピアノを基調としたバラードナンバーを幻想的なアニメーションで表現しており、2Dでシンプルに描くことで歌声や歌詞が強調されているのも印象的だ。


■高橋優「プライド」×中谷奈緒子


 アニメーションを担当した中谷奈緒子は、この春に大学院を卒業したばかりの若手監督。同MVには、物質の質感を切り取った実写映像と手描きのアニメーションを融合させた“ネフェクト・アニメーション”という手法が使われている。アニメーションと実写の融合は、シシヤマザキのロトスコープアニメーション(人物の動きをアニメにトレースする手法)にも言えることだが、“ネフェクト・アニメーション”の場合は人物のシルエットや線にアニメーションをデザインしていくような試みが新鮮だ。ビジュアルのインパクトはもちろん、サウンドの疾走感、歌い手やダンサーの感情がよりダイレクトに表現されている。


 楽曲の魅力を引き出すのがMVの役割と言えるが、一方でアーティストとアニメーター、双方の実験の場として機能する側面もあるだろう。ファンタジスタ歌磨呂が制作した「Transfer」や、Porter Robinson & Madeonとアニメ制作会社のA-1 Picturesがタッグを組んだ「SHELTER」など、世界的に高い評価を受けるアニメMVも生まれているように、今後もアーティスト×アニメのコラボには熱い視線が注がれていきそうだ。(泉夏音)