FIA国際自動車連盟は6月16~17日、フランス・サルトで開催されるル・マン24時間レースに向けてWEC世界耐久選手権のLM-GTEプロ/アマクラスに適用される最新の性能調整値(BoP=バランス・オブ・パフォーマンス)を発表した。
今シーズンはBMWが7年ぶりにル・マン復帰を果たすことで、欧米6メーカーが参加、北米IMSAシリーズからのスポット参戦を含めると合計17台のGTEマシンによって優勝トロフィーが争われることとなるLM-GTEプロクラス。ル・マンの前哨戦、WEC開幕戦として5月5日に開催されたスパ・フランコルシャン6時間では、フォードとポルシェがレース終盤まで一騎打ちを繰り広げのが記憶に新しい。
また、昨年のル・マンを振り返るとレース残り2周で、首位を走るコルベットをアストンマーチンが交わしクラス優勝を飾るというドラマチックな展開がみられ、多くのモータースポーツファンを魅了した。
そんなGTEプロクラスの参戦車両の性能を調整し、長時間に渡る激しいバトルを演出するBoPが更新され、ル・マンに参戦するすべてのマシンの最低重量、エンジンパワーに調整が加えられることが分かった。
FIAは例年、ル・マンでは同クラスのマシンの性能を引き下げる方向で調整を行なっているが、今季も同様の処置が取られている。この中でもっとも下げ幅が小さいのがアストンマーチン・バンテージAMRとなっており、車両重量は開幕戦時と比べて5kg増、ターボエンジンの最大過給圧を示すブーストテーブルの値もわずかな減少となっている。
前戦比13kg増となり、アストンマーチンと同じ1268kgとなったBMW M8 GTEも同様にエンジンパワーが抑えられた。また、フェラーリ488 GTE Evoはプラス11kgに留まったが、その重量はクラス中もっとも重い1291kgに。さらに、25kgを加算され1280kgとなったフォードGTとともにターボの最大過給圧が削減される。
開幕戦をクラス中もっとも軽い1249kgで戦ったポルシェ911 RSRは、次戦で17kg分のウエイトを積むこととなったほか、エンジンパワーを制限している吸気エアリストリクター径がφ30.3mm×2と従来より0.6mm小さくなった。なお、北米からスポット参戦するシボレー・コルベットC7.Rは最低重量1244kg、エアリストリクター径はφ29.5mm×2となっている。
この他、燃料タンク容量もフェラーリを除く各車に変更がみられるが、1スティントあたりの最大周回数を14周に揃えるとともに、満タンまでの給油時間が35秒となるよう給油リストリクター径とあわせて調整がなされているという。
■性能抑制はGTEアマクラスでも
最新モデルの1年落ちのカスタマーカーで争われるLM-GTEアマクラスでもル・マン用のBoPが発表され、プロクラスと同様にスピードを抑える方向での調整が入った。
このうち、スパ6時間でワン・ツー・フィニッシュを飾ったアストンマーチン・バンテージは1263kgの車両重量は据え置かれたものの、吸気リストリクターがφ29.4mm×2からφ28.8mm×2に縮小されている。
また、今シーズンからミッドシップレイアウトの911 RSRが使用可能となったポルシェは前戦から4kg増の1269kgとなるほか、吸気リストリクター径もφ30.5mm×2から0.6mm小さいものに置き換えられる。
一方、澤圭太を擁するクリアウォーター・レーシングや石川資章が率いるMRレーシングが使用するフェラーリ488 GTEでは、1295kgだった車重が1291kgへと僅かながら減らされているが、ターボブースト圧に調整が入っており、ライバルと同様にエンジンの最大出力が抑えられる見込みだ。
燃料タンク容量はプロクラスと同様、1スティント14周となるように調整が行われ、アストンマーチンとポルシェが100L、フェラーリは91Lとなった。また、満タンまでの給油時間は安全性を考慮し45秒を目安に揃えられているという。
今回発表されたBoPは6月3日にサルト・サーキットで行われる“テストデー”から適用されることとなるが、FIAはテスト後ならびにル・マン本戦のレースウイーク中にもこれを変更することが可能としている。