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【小松礼雄のF1本音コラム】触れずにいられない、オープニングラップのクラッシュの真相

2018年05月23日 12:51  AUTOSPORT web

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ロマン・グロージャン(ハース)
現役日本人F1エンジニアとして、ハースF1でチーフを務める小松礼雄エンジニア。F1速報サイトで好評連載中のコラム、今回はF1第5戦スペインGPをふり返り。現在のF1で起きている真相と、現場エンジニアの本音を読者のみなさまにお届けします。

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 ヨーロッパ・ラウンド初戦のスペインGPは、チームにとって手応えを感じられた一戦になりました。ミディアム、ソフト、スーパーソフトの3スペックが持ち込まれたバルセロナですが、今回はトレッドが0.4mm削られていて、予想どおりタイヤの温度が下がっていたものの、FP1からうまく使うことができたと思います。

 順調に初日のフリー走行を終え、チームが次に判断しなければならなかったのは、予選Q2でどのスペックを履くのか? という決断です。今回は、仮にスーパーソフトを履いて中団勢トップの予選7番手を獲っても、タイヤ性能からレースでは厳しい展開になることは分かっていたので、なるべくならスーパーソフトをさけたいという状況でした。

 しかし、トップ3チーム以外でそれを実行するのは難しいというか、かなり勇気がいることなんです。なぜかといえば、トップ3チームの速さを持っていればQ2でソフトを履いてトップ10以内のタイムを出してQ3に進めることはほぼ確実だからです。

 しかし、トップ3チーム以外がQ2でソフトを履くとQ3に行けないどころか、下手したら15位に沈んでしまう恐れもあるのです。それをふまえたうえでも、金曜日の走行結果をから、仮に予選Q2で敗退したとしても決勝を見据えてソフトでいくという結論にいたりました。

 結果的に2台ともQ2を通過できましたが、スーパーソフトとソフトのラップタイムの差がほとんどなかったことがプラスに働きました。それから、他チームも考えていることは一緒なので、フェルナンド(・アロンソ)以外のドライバーがQ2でソフトを履いたことも、もちろん大きかったです。

 Q3でケビン(・マグヌッセン)はミスなくアタックを決めて予選7番手、ロマン(・グロージャン)はミスを犯して0.15秒くらいタイムをロスしてしまい、予選10番手に終わりました。そこがちょっともったいなかったですけど、Q2でソフトを選択するという決断はチームにとって初めての経験でしたし、それを実行したうえで2台揃ってQ3へ進めたのは、僕らにとっても大きな一歩になりました。

 レース前に僕らがターゲットとして考えていたのは、誰ともレースをせずにグリッドのポジションを守り切ってケビンが7位でフィニッシュするということでした。

「誰ともレースをせずに」というのは、誤解のある書き方かもしれませんが、要はトップ3チームの6台にかなわないことははっきりしていましたし、また反対に後続のマシンより僕らの方が速いことも分かっていたので、淡々とひとりで走ってその差を引き離してゴールというのが、僕らの筋書きだったんです。

■成長著しいマグヌッセンとチーム
■レース後にデータで判明したクラッシュの詳細
■実現が近い、ダブル入賞
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