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天馬の態度は打算なのか? 『花のち晴れ』中川大志&平野紫耀の鉄板バトルに没入してしまう理由

2018年05月23日 06:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 音(杉咲花)と天馬(中川大志)が正式に“恋人”になった瞬間を目の前で目撃し、完全に意気消沈してしまう晴(平野紫耀)。そんな中、英徳の格を保持するため晴にメグリン(飯豊まりえ)と付き合うように命じる海斗(濱田龍臣)は、メグリンを英徳に転入させるのだ。


 5月22日に放送されたTBS系列火曜ドラマ『花のち晴れ~花男 Next Season~』。ドラマの折り返し地点を迎え後半に突入した第6話は、音と晴、天馬、そしてメグリンの4人にフォーカスを当て、彼らの“四角関係”を最大級に盛り上げるエピソードとなったといえよう。これまでの流れでは、自分の想いが晴と天馬のどちらに向いているのかと葛藤する音を軸に描かれていた。しかし今回のエピソードでは、音への想いを自分の中でどうトリートするかで悩みあぐねてきた晴が、“ヘタレ”なりに行動に移すという、抜群の好エピソードへと転じる。


 ふと思い返してみれば、少女漫画界の殿堂入り作品と言っても過言ではない『花より男子』のアナザーストーリーでありながら、この『花のち晴れ』の原作は『少年ジャンプ+』で連載されている作品だ。少女漫画的なエッセンスを残しながらも、少年漫画的な部分、つまりは男性でもすんなりとその世界に共感できる部分を備えているということだ。それは1人の好きな女の子のために不器用に奔走する少年の姿であり、今回のエピソードはそれが顕著に現れていたといえよう。


 とはいえ、音をめぐる晴と天馬の“バトル”は、少年漫画的なシチュエーションではなく、「グループデートで遊園地」という、これまで数多くの少女漫画で登場してきたような鉄板のシチュエーションというのだからこの物語の懐の広さを感じてしまう。ティーカップに、お化け屋敷。いずれも常に冷静な天馬に完敗を喫する晴にようやく訪れたチャンスが、弾みで音と2人で乗ることとなった観覧車という、期待を裏切らない“遊園地デート”のフィナーレ。


 完全に愛の告白をするにはもってこいの空間でありながらも、その効果をまったく発揮させることができない晴。そんな彼の不甲斐なさを尻目に、余裕たっぷりのライバル天馬は、珍しく感情的な態度を見せる。自分の気持ちを整理しきれていない音に、晴との関係をすっぱりと絶たせるためのダメ押しともいえるこの態度。なんだか天馬の打算を感じてしまうほど効果的な抑揚であった。


 それにしても、遊園地の帰り4人の前で偶然通りかかった人にぶつかってベビーカーが階段を駆け下りていくのを、晴が体を張って助けるというシーン。セルゲイ・エイゼンシュテインの『戦艦ポチョムキン』の中に登場する“オデッサの階段”のシーンにオマージュを捧げた、ブライアン・デ・パルマの傑作『アンタッチャブル』のユニオン駅での名シーンを再現といったところか。無我夢中でベビーカーを止めるために駆け出し、華麗なアクションを決めながら無事に助け出す晴。しかしそんな彼を心配して真っ先に駆け出してきたのは音ではなくメグリンだった。


 メグリンから愛嬌たっぷりの愛の告白をされても、1ミリも心が動かされないほどに音への想いをたぎらせる晴の元に“観覧車での話”の続きをしに来たと訪れる音。絶妙なタイミングで流れる宇多田ヒカルの挿入歌でものすごく雰囲気が完成されたことは抜きにしても、まっすぐな言葉で想いを伝える晴の姿は決して“10点満点で5点”とするには勿体無い。ドラマのお約束的な展開を薄々感じながらも、それでもこの世界に没入して、晴を応援せずにはいられなくなってしまう。(久保田和馬)