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柔軟剤などの「香害」に苦しむ被害者「製品の使用自粛を」…消費者団体が4省庁に要望

2018年05月22日 19:02  弁護士ドットコム

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人工的な香料が原因で体調不良を引き起こす「香害」。この問題に取り組んできたNPO法人「日本消費者連盟」(日消連、東京都新宿区)などが5月22日、東京・永田町の衆議院第1議員会館で、院内集会を開いた。強い香りに苦しむ当事者たちは、「早急な対策が必要」と訴えた。


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●匂いが原因で、結婚式や葬式にも出られない人も

日消連は、香害を「柔軟剤、消臭除菌スプレー、制汗剤、芳香剤、合成洗剤などの強い香りをともなう製品による健康被害のことで、体臭は含まれない」と定義している。2017年夏には、電話相談「香害110番」を実施し、全国から213件の相談が寄せられた。日消連の杉浦陽子さんは「とても反響が大きく、ここから新たな活動がスタートした」と振り返る。


今回の集会は、日消連ら7団体が開催。国や業界団体に対して(1)香害を引き起こす製品の製造・販売の取りやめ、(2)公共施設での香り付き製品の使用自粛を啓発、(3)保育園・幼稚園、学校での使用自粛を促し、平等に学習する権利を確保ーーの3点を求めた。


NPO法人化学物質過敏症支援センター(横浜市)の広田しのぶさんは「センターには年間2000件を超える相談が来るが、ほとんどが匂いに関すること。症状が重い患者さんの中には、匂いがあるために、学校や職場、結婚式や葬式にも出られない人もいる」と訴えた。


●消費者庁「幅広い方々が被害を受けている問題だと認識」

集会には、消費者庁、厚生労働省、文部科学省、経済産業省の計4省庁の担当者も同席。日消連など7団体は「省庁横断の連絡会議を設置し問題解決に努力してもらいたい」と要請し、各省庁の担当者と質疑応答を行った。


消費者庁の担当者は、国民生活センターの「香害」相談窓口設置について「身体的影響をもたらす原因が特定されていない物質を注意喚起することは難しい」としながら、「幅広い方々が被害を受けている問題だと認識しており、調査していく」と話した。


柔軟剤などの過剰使用を防止する表示の要請に対しては「業界団体にもワーキンググループを作ってもらい、検討を始めているところ」と回答した。


●「柔軟仕上げ剤のマナー啓発について、業界で議論を開始させる」

また、厚労省の担当者は「香料の安全性については、IFRA(国際香粧品香料協会)のスタンダードに適合した香料を使用していると業界から聞いている。香料被害は情報共有し、疾患概念や診断基準に関する知見を収集していきたい」と話した。


文科省の担当者は、学校などでの使用自粛の呼びかけ要請について「原因となる化学物質が明確になっていない中で通知を出すことは難しいが、各教育委員会の研修や講習会を行う際に、強い匂いに苦しむ人たちがいるということを周知していく」。


経産省の担当者は、香料成分の全表示要望について「どのような成分を使っているかは競争領域であり具体的な物質名を答えるのは難しい」という日本石鹸洗剤工業会からの回答を伝え、「個々の商品について業界に成分の開示を求めたり、強制的に規制や指導したりする権限はない」との立場を示した。


柔軟剤のCM自粛要望については「業界に対してどういう取り組みができるのかについては議論している。例えば、柔軟仕上げ剤のマナー啓発について、現在の表示自主基準に追加するという方向で、業界で議論を開始させるところだ」と回答した。


(弁護士ドットコムニュース)