スーパーGT第3戦鈴鹿、ホンダのGT500開発総責任者、佐伯昌浩氏にNSX-GT搭載状態のHR-417Eエンジンにとっての最適外気温を聞くと「雪が降っていたらガムテープを(吸入口に)貼るでしょうね」と笑った。
つまり、気温は低い方が空気の充填効率が高まりパワーを出せるので低温はいくらでも歓迎ということだ。
今季のNSXは運動性のためにインタークーラー(IC)位置をエンジン上部から横に移動。あえて冷却効率を犠牲にした。
シーズン中盤は高温下で戦われるスーパーGTにおいて大胆な選択と言える。それだけに例年平均を大きく下回る気温20度に加え、秒速15m以上の風で体感温度はさらに下がった特異な予選でのコンディションはNSX-GTに対して恩恵となった。
もちろん気温や風がNSXに味方しただけで1分44秒前半のタイムが刻めるわけはない。
「(登録締め切りの)ぎりぎりまで開発を続けたので、そこからセットアップを煮詰めて今回が一番決まった状態だった」と佐伯氏。中高速コーナーが多くダウンフォースが大きく効く高荷重の鈴鹿でNSXの速さが際立った。
前戦富士は上位にNSXは進出していないので鈴鹿に向けて温存のためにエンジン出力を抑えたのでは、というライバルの見方もあったが「それは断じてない」と佐伯氏は語る。「選択していたタイヤがマッチングしなかった」。高荷重の鈴鹿は速く、低荷重の富士が苦手というキャラクターがここから浮き彫りになる。
第5戦富士はドライなら第2戦富士より気温が上がり、さらに低荷重が予想される。ここでNSXが示す性能が選手権の行方を左右するかもしれない。
さらに高温はNSXにとってエンジン吸気温の面でも不利だが、対策の年間戦略があった。高温ラウンドでウエイトハンデ50kgを超えて燃料リストリクター(燃リス)が絞られていれば、それに合わせてブーストも下げられるのでICの弱点を補えると佐伯氏は言うのだ。
第4戦タイに向けて「100号車(RAYBRIG NSX-GT)は燃リスにかかりましたが、17号車(KEIHIN NSX-GT)にもそこまで届いて欲しいというのが希望でした」と佐伯氏。
どうハードを使いこなすか? スーパーGT500クラスのエンジン競争は、ここからさらにシビアな戦いが待っている。
■auto sport 2018年 6/8号 No.1482