近年、ベンチャー企業を中心に社員旅行が見直されているという。嫌がる人も多いが、社員どうしのコミュニケーションを深めるのに役立つ面も大きいと筆者は思う。ただ、その内容は企業によって実に様々だ。
5月18日放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)では、東京都内のベンチャー企業が社員旅行を行う様子を紹介した。会社から徒歩10分もかからないカプセルホテルに宿泊し、レクリエーションの時間には財務の計算ゲームを解く姿が流れると、ツイッターユーザーから「これは社員旅行というか研修」など、違和感をもらすツイートが相次いだ。(文:okei)
「都市型の新しいかたちの社員旅行」と笑う社長
JTBによると、社員旅行の取扱額は、首都圏エリアを中心に2016年度までの7年間で約2倍近くに増えているという。番組があるアパレル系ベンチャー企業に密着すると、午後4時から社員がぞろぞろとカプセルホテルに移動していた。業務に支障が出ないよう、近場で開催したという。社長は
「都市型の新しいかたちの社員旅行」
と冗談めかしていた。
社員全員が集まってのレクリエーションでは、「コストや業務の改善につながる数字をゲットする」という問題にチームで取り組んでいた。人材流出が激しいアパレル業界では、ゲーム感覚で楽しみながら社員を育成し、定着させることが狙いだ。この様子をSNSにアップし、社内の雰囲気を伝えることで会社に合った人材の確保にもつながるという。参加していた社員は楽しそうな様子で盛り上がっていた。
だが、これは社員旅行のイメージからは遠く、1泊研修といった趣だ。そう思った人は多かったようで、視聴者からはツイッター上で
「それ、社員旅行って言わん」
「社員旅行と紹介されているものは、単なる合宿研修では?」
との疑問が相次いでいた。社内のスキルアップやレクリエーションを否定はしないが、「旅行」と言われるとどうも違和感を覚えてしまう。
結局みんな「おっさんに気を使って旅行するのが嫌」
一方、別で紹介された創業7年になるベンチャー企業は年2回も社員旅行を実施する。そのうち1回は海外に行くという。年間1500万円程度の予算から、交通費と宿泊費を会社が負担する。企画する営業担当の社員に「CPO」(クリエーティブパーティーオーガナイザー)という専門の役職までつける力の入れようだ。
狙いは、やはり社員のコミュニケーションの活性化で、離職率4.3%という低さ(一般に離職率が低いとされる目安は10%)がその効果を物語る。創業以来4人しか辞めていないという。
香港旅行の写真を見ると、皆20~30代の若い会社のようで、同年代が多ければやはり楽しいだろう。人材派遣会社から転職してきた男性社員は、社員旅行を仕事継続のモチベーションにしているようだった。
ツイッターには、「社員旅行に使う金をボーナスに還元して」など、社員旅行を嫌う否定的な声が多数上がる一方、
「結局みんな社員旅行が嫌っていうより『おっさんに気を使って旅行するのが嫌』ってのに尽きる話だな」
などの声もあった。社員構成が若いベンチャー企業ならではの効果なのかもしれない。