第102回インディ500に挑んだシュミット・ピーターソンのジェームズ・ヒンチクリフは、19日に行われた予選1日目で33番手以内に入ることができず予選落ちとなった。多くのメディアが彼を取り囲むなか、その胸中を言葉にした。
ヒンチクリフにとってインディアナポリス・モータースピードウェイはいつもドラマチックだ。
2011年にニューマン・ハースからインディカーにデビューし、翌年にはアンドレッティ・オートスポートに移籍。2013年に初勝利を挙げる活躍を見せ、2015年からはシュミット・ピーターソン・モータースポーツでインディカーを戦っている。
インディ500でも予選で速さを見せてきたヒンチクリフ。2012、2014年には予選2番手を獲得する速さを見せた。
しかし、2015年はプラクティスデイでウォールにクラッシュ。生死を彷徨う大怪我を負ってしまい、インディ500以降のレースも欠場する。
2016年シーズンから復帰した彼はインディアナポリス・モータースピードウェイに戻ってくると第100回大会のポールポジションを獲得。決勝レースは7位に終わったが、華麗な復活劇を見せた。
今年もシュミット・ピーターソンからインディカーを戦うヒンチクリフ。チームメイトには同郷の旧友であるロバート・ウィケンスが加わり、新エアロへの適応能力も見せランキング5位で第102回インディ500に挑んだ。
チームメイトのウィケンスはファストフライデイで2番手に入るなど速さを見せたが、ヒンチクリフは29番手と不安を残しながら予選1日目のバンプデイに挑んだ。
12番目にアテンプト順だったヒンチクリフ。運がわるいことに雨で110分中断された後の最初のアタッカーとなった。1周目が225.350mph、2周目からはさらにスピードが落ち、平均224.784mphとその時点で最下位のアテンプトとなる。
35番目のエド・カーペンターがアテンプトを終えると、ヒンチクリフの順位は32番手に。ここから再アテンプトするドライバーが登場し、予選落ちを決めるバンプアウト合戦は激しさを増していく。
まずはコナー・デイリー(デイル・コイン・レーシング)が再アテンプトで33番手のスピードを記録しチームメイトでもあるピッパ・マンをバンプアウトする。
これまでアテンプトを途中で止めていたオリオール・セルビア(スクーデリア・コルサ・RLL)も3度目のアテンプトで225.007mphを記録。再びデイリーがバンプアウトされ、ヒンチクリフはこの時点で33番手のオン・ザ・バブルに立つことに。
スコット・ディクソンが2度目のアテンプトを終え、17時27分にデイリーが再び33番手以内を目指しアテンプトへ。デイリーの記録は224.874mphと32番手に入り、ヒンチクリフはバンプアウトされる。
続いてマンが再びアテンプトを行うも、スピードが出ず途中で走行を止める。
17時37分、ヒンチクリフにアテンプトの順番が回ってくる。コースに出たヒンチクリフだったが、ウォームアップ走行中にタイヤからバイブレーションを感じアテンプトを中止。ピットレーンに戻ってきた彼はマシンをチェックし、再びレーンに並びなおすことになった。
グラハム・レイホール、アレクサンダー・ロッシが2度目のアテンプトを行い、17時50分のセッション終了時刻がどんどんと近づいていく。
17時48分、ヒンチクリフより先にマンがアテンプトへ。しかし223mph台しかスピードは出ず33番手以内に入ることはできなかった。
そして、マンのアテンプト中にセッション終了の時刻を迎え、ヒンチクリフは再アテンプトができないまま予選落ちとなり、第102回インディ500の戦いが終ってしまった。
終了を告げる銃声が鳴り響いた時、レーンに並んでいたヒンチクリフは驚きを隠せなかった。彼は18時終了だと思っていたようだ。予選落ちを受け入れたヒンチクリフは集まったメディアに大きな失望を語った。
「僕たちはチームとして勝ち、チームとして負ける。2年前にここに居たときはクレイジーだった。けど、僕たちは首をうなだれれ、それを見て、この経験から学ばないといけない」
「それは苦い薬だし、がっかりしている。僕たちのクルマはショウに出るのに十分に速い。間違いないね。ピットにはベストなクルーたちがいる。これは大きな打撃だ」とヒンチクリフ。
2016年以降では何が変わったかを聞かれると、「たくさんのことがある。毎年毎年、違うんだ。大事なことは、期待を持ってここに来た。今年はファストナインに進むスピードがなかったことはわかっていたが、予選落ちの心配はしていなかった」
「初めの走行では少し問題があったし、2度目のアテンプトでは涼しく感じたので、より速くなると思ったけど、問題がでてしまった。正直言って、クルマの中では18時に銃が鳴ると思っていたので心配していなかったんだ」
「ピッパの前にアテンプトすることはないよ。ルールだからね。僕たちはこのレースで最初に去らなければならない名前ではないし、クルマではない。けど、これがインディなんだ。最終的にバンプアウトされてしまった」とコメントしている。
ヒンチクリフの元チームメイトでもあり友人のライアン・ハンター-レイは、2011年のインディ500で予選終了55秒前にチームメイトのマルコ・アンドレッティにバンプアウトされ予選落ちした経験がある。その時のハンター-レイは、AJフォイト・レーシングのブルーノ・ジュンケイラにマシンを譲ってもらって決勝レースに参戦した。
予選2日目のポールデイに親友でチームメイトのウィケンスやジャック・ハーベイ、ジェイ・ハワードを応援しにインディアナポリス・モータースピードウェイに戻ってきたヒンチクリフ。
ハンター-レイのように誰かに譲ってもらって今年のインディ500に参戦するつもりはないと語っている。
「この時点では、僕はそうしないと信じているよ。過去にはそういうこともあったけど、ひとりひとりがこのレースにでるためにスポンサーを獲得し、チームと契約している。これは彼らのレースなんだ。誰かと話すことは難しいよ」