高度プロフェッショナル制度(高プロ)はこのまま導入されてしまうのか。同制度が盛り込まれた「働き方改革関連法案」の採決が見込まれる中、高プロに反対する「全国過労死を考える家族の会」は5月22日、首相官邸前で抗議の座り込みを行った。
同会の寺西笑子代表は「高プロを盛り込んだ法案は、長時間労働を助長する過労死促進法案です。経済成長のためにタダ働きを強いることを合法化するのは許されません」と高プロの廃止を訴えた。
「4週間で4日の休日さえ確保すれば、後は休みなく働かせることができる」
高度プロフェッショナル制度とは、コンサルタントなどの専門職として働く高収入の人を、労働時間の規制や残業代の支払い対象から外す制度だ。同制度は長時間労働を助長し、過労死を増やすとして批判を浴びている。制度の導入後には、年収要件が下げられ、適用対象が拡大する恐れもある。
高プロの適用者には、年間104日は休ませるなどの健康確保措置も設けられている。しかしそうした措置で十分なのか。2013年に過労死した元NHK記者・佐戸未和さん(当時31歳)の母は次のように指摘する。
「4週間で4日の休日しか義務付けられておらず、その休みさえ確保すれば、後は休みなく働かせ続けてもよくなります。過労死しても労災申請もできなくなり、死者が増えても過労死が減るという事態が起こります」
今年4月末には、都内のIT企業で働いていた男性(当時28歳)が、くも膜下出血で死亡した。男性は裁量労働制の下、月約90時間の残業を強いられていたという。
男性と同じくシステムエンジニアだった息子を27歳の若さで亡くしたという女性は、「私の息子は27歳で過労死しました。亡くなった男性も息子もシステムエンジニアでした。今でもSE業界は過労死が多いのに、高プロができれば、ますます過労死が増えてしまう。働く人が暮らしやすくなるような働き方改革を行ってください」と訴えた。
「夫の仕事の量はとても定時で帰れるような量ではありませんでした」
社会民主党の福島みずほ参院議員も抗議行動に駆け付け、「自分の裁量で働くといっても、納期や仕事の量や中身、結果については使用者の指揮を受けるんです」と高プロの問題点を指摘。「過労死を促進する法案を絶対に採決してはいけません。廃案にしましょう」と呼びかけた。
17年前に電気メーカーで働いていた夫を亡くしたという女性も、「夫は裁量労働制で働いていましたが、夫の仕事の量はとても定時で帰れるような量ではありませんでした。残業も多く、週末も仕事をしていましたが、会社は労働時間を管理していませんでした」と話す。高プロは「柔軟な働き方」を可能にするといわれることもあるが、使用者の指揮命令を受けなくなるわけではないのだ。
法案は5月23日に衆院厚労委員会で、24日に本会議で採決される見込みだ。過労死遺族の会や日本労働弁護団は採決を阻止しようと、法案への抗議行動を続けるという。