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スペインGPで判明した不振の原因、モナコで好結果を出すために必要なこと/トロロッソ・ホンダF1コラム

2018年05月22日 10:41  AUTOSPORT web

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F1第5戦スペインGP ピエール・ガスリー
トロロッソ・ホンダの第5戦スペインGPは、12位とリタイアという残念な結果に終わった。しかし上海での大不振から抱え続けてきた疑問にはひとつの答えが出た。その意味では得たものは大きかった。

 ピットガレージから決勝のグリッドへ向かう3周のレコノサンスラップで、ピエール・ガスリーはマシンが「今季最高の仕上がり。バーレーン以上だ」と感じたという。

 バルセロナは風が強く時折突風が吹く難しいコンディションだったが、金曜の段階では明確な答えが出せず「風かタイヤか50%/50%というところかもしれない」としていたガスリーだが、予選・決勝ではこれまで風の影響を受けてダウンフォース発生量が左右されやすかったSTR13の空力パッケージをうまくセットアップする方法を見出すことができたようだ。

 その上で、上海以降のレースで4位に入賞したバーレーンのようなパフォーマンスを発揮できていないのはタイヤの扱い方に原因があるということがはっきりしてきた。

「タイヤを上手く温めて機能させることができなかったのが要因のひとつだった。特にレースに関してはね。このタイヤはウインドウ(適正温度領域)がすごく狭くて、上手くそのウインドウ内に収めることができなかった。僕らはまだタイヤの機能のさせ方を学んでいる途上なんだ」

 その難しさをガスリーはこう説明する。
「温度が5度違っただけで性能が大きく違ってきてしまうんだ。トラフィックに引っかかってプッシュできないと温度が下がってマシン挙動やマシンバランスは大きく変わってしまう。スイッチオンできるかどうかで簡単に0.4~0.5秒も違ってきてしまうんだ。決勝でも前走車の背後についてコーナー5つも走れば簡単に作動温度領域から外れてしまう」

 実際には適正温度の幅は30度ほどある設計になっているが、その幅の中でもグリップレベルの増減はあり、最適温度の中心から遠ざかれば遠ざかるほどグリップは下がる。ドライバーたちが“適正”と感じるグリップレベルを発揮するための適正温度幅は30度よりももっと狭く、10度前後しかないというわけだ。


 予選で12番手に留まったのも、アウトラップでトラフィックに引っかかり「タイヤの温度が理想的な状態ではなくて、マシンのポテンシャルをフルに引き出せたとは言えないから」という。

 ストレートの立ち上がりで遅れを取ることが多いのも、パワー不足もさることながらタイヤの性能をフルに引き出せないことの方が大きいとガスリーは語る。

「原因はパワーユニットではなく車体のメカニカルグリップにあると考えるのが妥当だよ。そしてそれはタイヤから本来のグリップが引き出せていないためで、それは正しい作動温度領域に入れられていないからなんだ。それはセットアップの方法とタイヤの使い方によって改善することができるはずだし、それができれば大きく進歩できるはずだよ」

 決勝直前のフィーリングでは、セットアップとウォームアップ方法によってその使いこなしができるようになっていて「最高の仕上がり」になっていたというわけだ。

 ガスリーが1周目の事故に巻き込まれてしまいその成果を見せることができなかったのは残念だった。発進加速は良かったものの中央突破を狙ったところを前のマクラーレンとハースに閉じられて行き場をなくし、スロットルを戻してテールライトが点滅しているのが他車の車載映像に捕らえられている。それがなければ事故は避けられた可能性が高いだけに、悔やんでも悔やみきれない。



 フリー走行3回目で不注意からターン9入口の芝生にタイヤを落として大きなクラッシュを演じたブレンドン・ハートレーは、決勝の単独走行時にはマクラーレンやルノーと同等の速さを見せていた。しかし最後尾スタートのためガスリーが言うようにタイヤの温度を上手く維持することができず、セルゲイ・シロトキンやマーカス・エリクソンを抜けずに抑え込まれてしまったために本来のペースを発揮することはできなかった。



 スペインGPではここまでの不振に対するひとつの答えに辿り着きマシンを良いレベルに仕上げることができたが、それでもなお実力ではまだ中団グループの中間地点に過ぎないこともはっきりとした。少なくとも予選では中団上位を争うハースやルノーには及ばず、マクラーレンに次ぐ中団の中間だ。大接戦の中団グループだからこそ、ミスを犯すとたちまち中団の下位に位置するザウバーやウイリアムズに飲み込まれてしまう。

 開幕戦からの5戦を振り返ってみれば、バーレーンGPのガスリー以外は全てレース週末全体をミスなくまとめ上げられず、本来のポテンシャルを引き出せず得られたはずのポイントをいくつも逃している。スペインGP後に行なわれた合同テストでも、パワーステアリングのトラブル(開幕前テストや中国GPフリー走行でも出ている)や冷却系からのオイル漏れといったトラブルで走行時間を失い、そこでやるべきだったスペインGPの週末に見えた答えの検証が充分にできなかった。

 こうしたミスを減らしていかなければ、トロロッソ・ホンダはチームとして中団グループの上位へ駒を進めることはできないだろう。逆に言えば、バーレーンではそれができたからこそ中団のトップを快走することができたとも言える。

 全てをまとめ上げて再びそこに舞い戻ることも、ワンミスで下位へ低迷することも、ほんの僅かな差で起こり得る。それが今のF1の中団グループだ。スペインGPで明らかになったのは、その中で好結果を出すためにはトロロッソ・ホンダはチームとしてあと一歩の前進が必要だということだった。