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[ALEXANDROS]、ストレイテナー、バニラズ……日本のロックシーン象徴するバンドたちの新作

2018年05月22日 10:22  リアルサウンド

リアルサウンド

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 連載99回目を迎えた今回は、久々に“ロックバンド縛り”。この夏にスタジアムライブを控えた[ALEXANDROS]の新曲、結成20年、デビュー15年のアニバーサリーを迎えたストレイテナーのニューアルバムなど、日本のロックシーンを象徴するバンドの新作をガッツリと体感してほしい。


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■[ALEXANDROS]『KABUTO』
 8月にZOZOマリンスタジアムで開催されるワンマンライブ『VIP PARTY 2018』、秋にリリース予定のアルバムへのキックオフとなる[ALEXANDROS]のニューシングル『KABUTO』。表題曲「KABUTO」はインダストリアルな手触りのギターリフ、金属的な響きを伴ってグルーヴするリズム、印象的なピアノ、コーラスを効果的に交えたアレンジ、ストイックに抑制されたメロディがひとつになったーーつまり“ルール無視! 何でもアリ! それがロック!”なナンバーに仕上がっている。「KABUTO」(カブト)という日本的なタイトルにおそらく意味はないと思うが、この曲を聴けば、彼らが現在のJロックシーンのトップに君臨していることを実感してもらえるはずだ。2曲目には詩人・作家の最果タヒが作詞、プロデューサーの小林武史が編曲を担当したミディアムナンバー「ハナウタ」(東京メトロ「Find my Tokyo.」CMソング)を収録。穏やかで素朴な旋律が心に沁みるポップチューンは彼らの新機軸と言えるだろう。


■ストレイテナー『Future Soundtrack』
 シングル「The Future Is Now」「タイムリープ」、秦 基博とのコラボ曲「灯り」を含む、結成20周年、メジャーデビュー15周年を記念したストレイテナーのフルアルバム『Future Soundtrack』。未来的なシンセを軸に壮大なサウンドスケープを描き出す「Future Dance」、<ずっと探してたこの場所で/物語は始まる>というフレーズが明るい予感を生み出すギターロックチューン「もうすぐきみの名前を呼ぶ」、心地よいビートとともに<きみの踊り方で踊るんだ>とメッセージを伝える「Superman Song」など、ポジティブな意志を感じさせる楽曲が並ぶ。ディストピア感に溢れた現状に絶望することなく、諦めることもなく、美しくデザインされたロックサウンドとともに“希望に溢れた未来”を描き出そうとする、その意志自体に感動してしまう。


■go!go!vanillas『SUMMER BREEZE/スタンドバイミー』
 爆発的かつ解放的なロックンロールサウンドと爽やかさ全開のメロディによって<しょげたことも活かせ 生み出すことに>と前向きなラインを高らかに響かせる「SUMMER BREEZE」、そして、60年代のポップソングを想起させる軽快なビートとともに、理想を掲げて進もうとする意志を描き出す「スタンドバイミー」というgo!go!vanillasの両A面シングル。ルーツミュージックをしっかりと血肉化しながら、現在進行形のロックサウンドを体現してきた彼らは、極上のポップセンスを吸収することによって、これまでとは比べ物にならないほどのフィールドに向かおうとしている。3曲目には柳沢進太郎(Gt)が作詞・作曲・ボーカルを担当したブルーズ風味のポップロックナンバー「Penetration」を収録。


■Saucy Dog『サラダデイズ』
 優れたポップセンスを含んだ楽曲、オーガニックなバンドサウンドによって注目を集めている大阪出身の3ピースバンド、Saucy Dog。いつも味方になってくれ、奮い立たせてくれた母親への思いを込めたアッパーポップチューン「真昼の月」、大切な人との別れを経験した“僕”が二人の日々に思いを寄せるバラードナンバー「コンタクトケース」、ミディアムロックナンバー「世界の果て」などを収録したミニアルバム『サラダデイズ』には、豊かな情感を含んだ歌を中心としたこのバンドの魅力が端的に示されている。どんなにエモーショナルに歌ってもカラッと爽やかな空気を感じさせてくれるボーカル、ライブ感がストレートに伝わる演奏も印象的。


■テスラは泣かない。『偶然とか運命とか』
 “0円シングル”としてリリースされた「ダーウィン」が話題を集めるテスラは泣かない。のフルアルバム『偶然とか運命とか』が到着。キラキラとした光を放ちながら、次々と形を変えていくビートを軸にしたダンサブルな楽曲「万華鏡のようだ」、圧倒的なスピード感を放つサウンドのなかで、大人になることの楽しさ、素晴らしさ、切なさを鮮やかに描く「大人の秘密」などを収めた本作からは、10周年を迎えたこのバンドのさらなる充実が生々しく伝わってくる。“ポップかつトリッキーなピアノのリフを中心としたロックバンド”というスタイルをしっかり維持したまま、ファンク、ソウル、エレクトロなどを取り入れながら進化を続けるテスラは泣かない。は、まさに今が旬だ。(森朋之)