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中川翔子、史上初の1日で全66曲熱唱 “歌手としての歩み”を体現したバースデー公演

2018年05月21日 14:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 歌手、タレント、声優、女優とマルチに活躍する中川翔子が、33歳の誕生日の当日となる5月5日に、豊洲PITで『SHOKO NAKAGAWA BIRTHDAY LIVE ~19850505~』を開催した。「バースデーライブを目標に、1年間死なずに生きてきました」と、冒頭でこの日にかける意気込みを語った中川。同公演の選曲テーマは「懐かしい“あの頃”」というもので、中川は「常軌を逸してる。最初から最後までクライマックスだ!」と拳をふりあげながら、33歳にかけた33曲(昼の部と合わせて1日で全66曲)を熱唱した。


参考:アニソン界のレジェンド集結! 『アニアカ』校歌に中川翔子「どのエイプリルフールの嘘より凄い」


 ライブは2014年の4thアルバム表題曲「9lives」でスタート。メタル調の激しいサウンドに、ピンクのペンライトで埋め尽くされた会場が一気に沸き立ち、観客は<オイオイオイ!>と声をあげ、ヘドバンで頭を振り回す。中川もファンの熱気に呼応するようにして、「生きて生きて生きてやれ!」と1曲目から声を荒げた。続いて2010年の3rdアルバム『Cosmic ♬ Inflation』に収録のロックチューン「lemonade」では、切なさと力強さのある歌声を響かせ、「会いたかったよ、みんな。フルボリュームでいくからついてきてね!」とファンを盛り上げる。一転、爽やかなアイドルソング調の「apple universe」は、2012年の『しょこたん☆べすと–(°∀°)–!!』に収録のナンバー。可愛らしい振り付けと共に聴かせ、ファンの合いの手も入って会場は一体になって盛り上がった。


「1985年5月5日11時59分から33年の月日が流れ、レベル33にレベルアップしました。レベル33は、ポケモンで言ったらエンニュートに進化、ドラクエならメラゾーマを覚えるくらいのハイレベルです。今まででいちばん歳を取っているのに、今まででいちばん多い1日で66曲歌います。今まででいちばん最強だということを証明してやろう!」


 ゲームとアニメが大好きな彼女らしい独特な表現で、33歳という年齢になった気持ちを表現した中川。セットリストは、彼女が幼少期に聴き馴染んだアニソンのカバーを含め、ブレイクのきっかけになった2007年の「空色デイズ」などの代表曲や他アーティストとコラボして発表した楽曲、さらに新曲など、これまでの彼女の人生を彩ってきた楽曲がずらりと並んだ。


 「アニソンは、私の血液で栄養素。中川翔子の頭を解剖すると、猫、ホルモン…、そしてアニソン。思い切りアニソンを歌いたい!」と話し、夜の部にはメドレーで歌ったアニソンカバーのコーナーが。『美少女戦士セーラームーン』や『シティーハンター』など、懐かしいアニソンを連発し、歌いながら「あ~なんて幸せ」とつぶやいた中川と一緒に、観客も“あの頃”に戻って一緒に楽しんでいた。また「ようこそジャパリパークへ」や「限界突破×サバイバー」と、最近のアニソンもしっかりと押さえた楽曲を披露。「限界突破×サバイバー」では中川考案のキャラクター=スカシカシパンマンがヌンチャクを振り回して盛り上げたほか、最後には「みんなオラに元気を分けてくれ~!」と、悟空の名フレーズを叫んだ。


 また、TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND feat.中川翔子名義で発表した「Magical Circle」は、幼少期にアニメを観て好きになり、公園でよく傘で魔法陣を描いて遊んでいたというほど、彼女が愛してやまないアニメ『魔法陣グルグル』の2ndエンディングテーマとして昨年リリースした楽曲。「みんなの願いが叶いますように」と、ペンライトをグルグル回す中川と一緒に、観客も一緒にグルグル回して、願いの輪がどんどん広がっていった。また、2015年に“しょこたん♥でんぱ組”名義でリリースした「PUNCH LINE!」では、<フワッフ~!>とかけ声があがる。「もっともっとぶちあがっていこうぜ~!」と、ハイテンションが止まらないといった様子で盛り上がった。さらに、2012年にDECO*27とのfeaturingで発表した「甘宿り」では、ポップなギターサウンドに合わせてステージを歩き周りながら歌い、最後にはSEで雨や雷の音が鳴る演出でも盛り上げた。


 歌手としての中川の名前を一気に広めるきっかけになったのは、2007年のテレビアニメ『天元突破グレンラガン』のオープニングテーマ「空色デイズ」だ。この日も『グレンラガン』関連の楽曲として、「空色デイズ」のほか、映画『劇場版 天元突破グレンラガン 紅蓮篇』挿入歌「happy ever after」を披露した。「いくぜ!」のかけ声に合わせて観客が拳を振り上げ、その様子に「みんな最高だぜ!みんなのおかげで、1曲歌う度に元気になります。たぎってたぎって仕方がない」と、うれしそうな表情を見せた彼女。「空色デイズ」では青いペンライトが客席を埋め尽くし、「一生ついてこいよ」と言いながら、『グレンラガン』のキャラクターのカミナのように指を天高く突き刺すように掲げると、その姿に会場が大歓声で沸いた。


 かつてはアニメ&ゲームカルチャー界のアイドル的存在だった中川だが、近年は『ポケットモンスター』やディズニー映画『塔の上のラプンツェル』といった、子どもと大人が一緒に楽しめる作品とのコラボレーションでも知られている。中盤には、「自由って素敵、最高だなって感じさせてくれる曲です」と、テレビアニメ『ラプンツェル ザ・シリーズ』の新曲「Set Yourself Free」を披露。スケールの大きなナンバーで、包容力を持ちしっとりと歌い上げる彼女の歌声に、観客はこのときばかりは静かにじっと耳を傾けていた。


 アンコールでは、「去年は泣いてしまって最後まで歌えなかったけど……。みなさんは、自分を支えてくれる大切な人の存在を感じながら聴いてほしい」と、昨年急逝した愛猫・マミタスに宛てた「愛してる」を披露。涙ぐみながらも最後まで歌い切り、観客は温かい拍手を贈った。そして最後は「大切なみんなのために作詞をした曲があります」と、「愛いっぱい、せいいっぱい」を歌唱。会場に手拍子が広がる様子を見た中川は、それに応えるように「みんながいなきゃダメなんだ。いっぱい幸せになれよ~! 次に会うまで、一人も死ぬんじゃないぞ!」と、彼女流の愛に溢れたメッセージを贈った。


 きっとさまざまな壁にぶつかり、もがき、乗り越え、受け入れ、許してきたであろう彼女の33年。33曲の1曲ずつが、彼女が生きてきた証であり記憶であり、その1曲1曲をときにパワフルに、ときに愛おしく抱きしめるように歌った姿が印象的だ。父親譲りの歌唱力の高さは、CDデビューのころから評価が高かったが、艶と表現力は年齢を重ねてさらに増していたように思う。最高で最強のレベル33をファンと共に祝いあった夜であった。(榑林 史章)