トップへ

PENTAGON「Shine」がチャート逆走でロングヒット! “オタク”コンセプトの歌詞&MVに注目

2018年05月21日 13:02  リアルサウンド

リアルサウンド

写真

 韓国の音源サイトでは一旦ランキングが落ち始めた曲が、ひょんなきっかけでチャートを上り始める“チャートの逆走”でロングヒットを飛ばすことが度々ある。


 今、まさにその“逆走”でチャートを賑わせている曲がある。それが韓日中のメンバー10人が所属するボーイズグループ、PENTAGON(ペンタゴン)の「Shine(オリジナルタイトル「빛나리」)」だ。


■大衆の口コミが火をつけたランキングの逆走


 「Shine」が、韓国の主要音楽チャートMelOn(メロン)のリアルタイムランキングのトップ100へチャートインをしたのは、この曲が収録された6枚目のミニアルバム『Positive』がリリースされた4月2日から約1カ月後のことだった。


 リリースされてから500位まで順位を下げていた「Shine」は、音楽番組などでのパフォーマンスをきっかけにした口コミにより、徐々に順位を上げ、ついに1カ月後にチャートインという快挙を成し遂げた。このチャートインはデビューして1年半を迎えたPENTAGONにとっては初めてのことだった。


 「Shine」は一般の人たちが多く聞くといわれている通勤時間の朝8時台に順位を一気に上げており、これは「Shine」が特定のファン層ではなく大衆に受け入れられたということでもあるだろう。5月21日時点でじわじわと順位を上げ、最高順位は16位にまで及んだ。


■“オタク”をテーマにしたコミカルな歌詞と耳に残るメロディ


 「Shine」は通常のアイドル像とはかけ離れた“オタク”をコンセプトにしている。この曲の面白さはここにある。


 「Shine」は、とても好きな子がいるのに告白できず、周りをうろうろしている片思いの男が主人公になっている。歌詞の中には「君の最愛のオタク、オタク」「そう、僕はバカ、バカ」「僕は君にはヒルの浅漬け(ストーカー)みたい」という、アイドルの歌詞には使われないような表現が多く出てくる。


 特にサビで使われている「ナナナンナンナナン(나나난난나난)」というフレーズは、日本語に訳すと「僕、僕、僕は、僕は、僕、僕は」という意味があり、主人公の小心さをくすっと笑わせるコミカルな歌詞で表している。


 そして、この歌の最後は、「僕の恋の前ではいつも輝こう(빛나리)」という決意表明で明るく終わるのだ。


 サウンドも、そんな滑稽な姿を表すかのようなコミカルな印象のピアノリフから始まり、イドンの咳払いから本編へと入っていく。簡単なように聞こえて、歌おうとすると意外と難しいメロディなのだが、イントロのピアノリフといい、なぜか耳に残るのが特徴だ。気が付くとサビの部分で「ヌヌナンナ♪」と機嫌よく一緒に歌っているのだ。


 「朝のりんごみたいに聴くことができる音楽になれたらいい」と作曲を手掛けたメンバーのフイが語っているが、実際そんな明るい気持ちにさせてくれる曲に仕上がっている。


■一緒に踊りたくなる“ハンマーダンス”


 歌詞や曲だけじゃなく、衣装や舞台も“オタク”にこだわっている。


 今回の衣装はメンバー全員で意見を出し合い決めたという。「カジュアルで、制服のようで制服ではない衣装」は、曲のオタクコンセプトと相成って、どこかダサくて、力が抜けている感じがある。メイクでは頬紅とそばかすで幼さを表現し、高身長のメンバーはハーフパンツを履き、そのギャップが面白さとなっている。


 ダンスでは、今流行りの力強く腕を振りながらステップを踏むハンマーダンスをサビに取り入れた。この振りの部分は、「Shine」の曲を聴いたら思わず一緒に踊りたくなる、大きなポイントだ。


 また、パフォーマンス時のメンバーの小さな仕草や表情にも注目してほしい。両手の人差し指をちょんちょんとつついて小心者を表現したり、とぼけた表情でおどけたり、変顔をしたりと、今までのPENTAGONでのカッコいい姿は一切封印し、最初から最後まで“オタク”というコンセプトを崩さない。徹底した“オタク”ぶりなのだ。そして、メンバー自身もこのパフォーマンスを楽しんでいる。


■切実な思いが実った初のチャートインという快挙


 今回の「Shine」はリーダーであるフイと、プロデュースチームFlow Blow(フローブロー)、そしてメンバーのイドンが参加して制作した曲だ。フイは、「一人の時はこれが合っているのか良いのかを判断をするのは難しかったが、イドンがいたので決定が容易だった」とショーケースのインタビューで語っている。


 以前リアルサウンドのコラムでも紹介したが、PENTAGONは“自作曲ドル”と呼ばれ、4枚目以降のアルバムについてはセルフプロデュースを行ってきたグループだ。


 特にフイは、『PRODUCE 101 シーズン2』での「Never」やWanna Oneの「Energetic」というヒット曲を手掛けたことにより、PENTAGONの名前よりも彼自身の名前が世間に広がっていた。


 しかし、その後に出したPENTAGONの「Like This」や「Runaway」はフイの自作曲でポテンシャルが高いわりには思ったような結果が出なかった。そういうこともあり、おそらく彼の肩には大きなプレッシャーがのしかかっていただろう。初のチャートインの快挙を聞いた彼は、「今まで苦労を思い出して、赤ちゃんのように泣いた」と後に放映された動画アプリ「V LIVE」で語っている。


 「明るいコンセプトで活動することが初めてだった」という「Shine」は、今までパワフルな曲調と重いテーマの歌詞が多かったPENTAGONとはガラリと雰囲気を変えてきた。これが成功のカギの一つの要素になったのかもしれないが、それだけではない。


 チャート逆走後のインタビューで「全メンバーが立ち上がって『今回だけは本当に良くしよう。2018年はPENTAGONの年にしなければならない』と、切実さが強かった」とフイは言っている。つまり、今回のアルバムでは絶対にうまく行きたいというメンバーの切実な思いがあったのだ。その思いが実った結果が、今回の「Shine」のヒットに繋がったのではないだろうか。


 PENTAGONの本当の勝負は、この次だ。次回のカムバックでどのような結果が残せるかが、一番大事になってくるだろう。次はどのようなPENTAGONを見せてくれるのか、「Shine」で注目をした大衆たちは期待をしているに違いない。彼らはこの「Shine」をきっかけに、“輝こう”としている。今はその第一歩にすぎないのだ。(文=西門香央里)