スーパーGT第3戦、3戦目にして2度目の2位表彰台を獲得したRAYBRIG NSX-GTの元F1チャンピオン、ジェンソン・バトン。これで山本尚貴とともにシリーズランキングトップに立つことになったが、今回のレースをどのように振り返るのだろう。レース後に聞いた。
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──鈴鹿サーキットでのスーパーGT第3戦を振り返っての感想を教えてください。
「ハッピーだよ! レースではトラフィックでのオーバーテイクとかも楽しめることができた。ミディアムタイヤからスタートして、気温も低かったのでリヤがスライドして走るのが難しかったけどね。それにセーフティカーが入って、リスタートの時はグリップがなくて最終コーナー近くでスピンしてしまったよ。それで(山本)尚貴のスティントは8号車(ARTA NSX-GT)が履いてたのと同じソフトタイヤにしたんだ。最初のスティントは、8号車がソフトで僕がミディアムで難しかったからね」
「その後、第2スティントでは、尚貴は8号車を捉えそうなところまで行った。岡山の17号車(KEIHIN NSX-GT)との時みたいにね。もちろん勝ちたかったけど、2位という結果は良い1日だったよ。チャンピオンシップをリードしているしね。予選では初めてQ1を担当したけど、Q2を担当したかったよ」
──セーフティカー(SC)スタートの経験はスーパーGTでは初めてですよね?
「SCは去年の鈴鹿1000kmで経験しているよ。SC自体は問題ないけど、SC中の速度が遅くなるからタイヤの温度がかなり下がってしまう。ソフトだったら良かったんだけど、すごいオーバーステアでスピンしてしまったんだ。松浦(孝亮)が昨日の予選でスピンしたでしょ。決勝では武藤(英紀)もコールドタイヤでクラッシュして、(ベルトラン)バゲットもコールドタイヤでスピン。だから本当に難しいんだよ。他のレースとは全然違うなと感じるよ」
「今日もリヤタイヤにピックアップ(タイヤかすが取れずに自分のタイヤについてグリップダウンする現象)が起きたんだ。尚貴とはレース前に『スピンするときはスピンするものだからアグレッシブに行こう』って話していたんだ。ピックアップは前のレースまでよりだいぶ良くなったけどね」
──セーフティカー明けの再スタートでは1コーナーでKeePer TOM'S LC500に抜かれてしまいました。
「もちろん、抜かれたくなかったけど、ニック(キャシディ)がいいドライバーなのはわかっているし信頼しているからね。それまで20周にわたっていいバトルができたよ。でも、あの場面ではクラッシュしたくなかったから距離を置いていたんだ。結果的に、お互いとても近くでチェッカーを受けることになったけど、相手はチャンピオンだからいいよね」
──今季の残りのレースで、勝つために何が必要だと思いますか。
「今は難しいね。次のレースからはもっと多くのウエイトハンデを積むことになるし、燃料リストリクターも絞られることになる。それに、次のタイはホンダにとって難しいサーキットだと思うんだ。なので勝つことより、コツコツと確実に1ポイントでも2ポイントでも、ポイントを得ることが大切だと思う」
「チャンピオンシップを考えたら、今のところ23号車(MOTUL AUTECH GT-R)と1号車(KeePer TOM'S LC500)がライバルだね。1号車は僕たちが2位だった岡山で3位。富士ではあちらが7位、こちらが9位。今回ここ鈴鹿では僕たちが2位で1号車が3位。本当に近い結果だから、1号車を倒すことが1番大事かもね!」
──スーパーGTのどのような部分がタフだと思っていますか。
「タイヤウォーマーがないのでタイヤのウォームアップが難しい。それとウエイトハンデだね。クルマが重くて、僕が乗ってた時のF1は600kgだったけど、スーパーGTは1050kgもあるんだ。だから重くて全然違うでしょ? それにドライバーがコンペティティブで、尚貴なんて2010年からスーパーGTに参戦しているベテランだ」
──次のGTはタイですが、その前にはル・マン24時間があります。
「先週テストをしてクルマのフィーリングは良くて楽めたよ。確実に言えるのは、スーパーGTでレースするよりはるかに簡単だってことだね(笑)。なので、今回のスーパーGTでの2位はより自信になるよ。まだまだここで学ぶこともあるしね。今回、(小林)可夢偉はアクシデントで決勝のステアリングを握ることさえできなかったくらいだしね(笑)、このカテゴリーは本当にタフなカテゴリーで、たくさんの経験が必要なんだ」
「ル・マンにはこれまでまったく行ったことがない。観に行ったこともレースしたこともないんだ。SMPレーシングに入ってからは、レースの映像はたくさん見たし、シミュレーターもしたから準備は万端かな。ワクワクしてるよ」
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今回のレースではスタートを担当したバトン。選択したタイヤがコンディションにマッチせず、思った以上にラップタイムが上がらなかったことや、セーフティカーのタイミングもあって規定ギリギリに近い、レース1/3での交替となったが、3戦目にして2度目の表彰台でランキングは首位。これまでの3戦はソツなくこなしている印象だが、やはり優勝、そして予選での速さ、決勝での豪快なオーバーテイクを期待したいところ。
ウエイトハンデは重くなるが、山本尚貴とバトンのコンビが、話題性だけでなく、スーパーGT500クラスのタイトル争いで中心的な存在になりつつある。