2018年からホンダからルノーPUに切り替えたマクラーレン。フェルナンド・アロンソは開幕戦以降は安定してポイントを獲得している。今回もアロンソの地元スペインGPのウイークエンドに密着し、戦いの舞台裏を伝える。
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F1がヨーロッパに戻って、威容を誇るマクラーレンのモーターホームも今年再び姿を現した。『ブランドセンター』と名付けられたこの巨大建築物は、解体中の姿を見ない限り、とても3台の大型トラックのトレーラー部分を組み合わせて作られたものとは思えないほど複雑な造りだ。(構造に興味のある人は、2年前のブログをどうぞ ※https://bit.ly/2ahGNV1)
ちなみに昨年までは正面のガラス張りの部分にデカデカと、『McLAREN HONDA』と描かれていたが、今年はHONDAはもちろんのこと、McLARENのロゴも消え、代わりに屋上部分がオレンジ色にペイントされているのみ。
だからなのか、FOMの重鎮ショーン・ブラッチスが、「ここ、ルノーだよね?」と、間違って入ってきそうになった。たまたま入り口にいたので教えてあげたが、F1の商業面を統括してるのに、マクラーレンのモーターホームも把握してないの?と、思わず突っ込みそうになってしまった。
それはともかく『Meet the Team』と呼ばれるマクラーレンの週末定例会見も、欧州ラウンドではこのブランドセンターの3階で行われる。数時間前に予選を走り終えたばかりのフェルナンド・アロンソは、今季5戦目にして初めてQ3への進出を果たし、見るからに上機嫌だった。
毎戦ポイントを獲得し、スペインGP開催前の時点で選手権6位に付けていたアロンソだが、実は予選はずっとQ2で敗退。今季のマクラーレンは一発の速さが課題で、「トロロッソ・ホンダにも負けてるじゃないか」と、アロンソも文句を言っていたのだ。
それが地元のグランプリで、8番グリッド獲得。念願のトップ10入りを果たしたのだから、うれしくないはずはない。斬新な三つ鼻ノーズを始めとするMCL33の大幅アップデート仕様を駆っての初日FP1では、いきなり6番手タイムを叩き出してもいた。FP2はミディアムタイヤでのロングランに専念したために12番手にとどまったが、レースペースにも手応えを感じていたようだ。
なのでこの会見で決勝レースへの抱負を訊かれた際にも、こんなことを言い出した。
「僕らはずっとレースペースが安定してて、平均すると予選グリッドから6つは順位を上げてフィニッシュしてる。今回は8番グリッドだから、それで行くと……」
あとの言葉は笑いで誤魔化していたが、8-6=2。2位表彰台も十分狙えると、言いたかったわけだ!この無邪気な見通しには、出席したジャーナリストたちも温かい笑顔で応えるしかなかった。
とはいえアロンソのレース本番での安定したミスのない走り、動物的とも言うべき危機回避能力、そして何よりスタート直後の位置取りの巧さを、僕らはこれまでさんざん目の当たりにしてきた。なのでひょっとしたら、という期待もどこかにあったことは確かである。
ところが今回に限っては、1周目にいくつかポジションを落としてしまった。ターン2から3にかけての多重事故は辛くも避けたものの、後続車に抜かれて行ったのだ。すぐにフォース・インディアのエステバン・オコンはかわしたが、ザウバーのシャルル・ルクレールには追い付くどころか、逆にじりじりと離されていった。
1回目のピットイン後も、再びルクレールの後ろでコース復帰。しばらくはガマンの走りを強いられたが、ミディアムのペースはザウバーに優っていた。ようやくオーバーテイクに成功し、8番手に浮上。そのままチェッカーを受け、開幕から5戦連続の入賞を果たした。
8番グリッドから順位を6つ上げることはかなわなかったが、レース後のアロンソは満足そう。
「アゼルバイジャンでは明らかに(予選での)ルノーの速さに遅れを取っていたが、今回はルノーとハースには追い付いたと思う」と、アップデートの効果を強調していた。
ただし賢明なアロンソのことだから、マクラーレンの車体が昔からこのサーキットに合ってることに、気づいてないはずはない。なんたってどん底状態の去年のマクラーレン・ホンダですら、今回以上の7番グリッドを獲得しているのだから。
はたして次戦モナコ以降も、中団トップで戦い続けられるのか。その結果次第で、アロンソは来季以降の身の振り方を決めることになりそうだ。