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レッドブル・ホンダ誕生への気になるハードル(2):ダブルワークス体制における懸念

2018年05月20日 14:21  AUTOSPORT web

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2018年のホンダはトロロッソとワークス契約を結んでいる
アストンマーチンとタグ・ホイヤーというスポンサーがレッドブル・ホンダ誕生に向けて大きな障壁となっていないのなら、現時点で何が両者の交渉の中で最大のテーマとなっているのだろうか。 

 ホンダを代表して、レッドブルのレーシングアドバイザーを務めるヘルムート・マルコと交渉している山本雅史モータースポーツ部長は次のように語る。

「マルコさんと話をしていて、すごいなと思うのは、“勝つためにどうするか”という議論しかしないこと。基本的にはわれわれも勝ちを目指していますが、まだ実力が伴っていません。いまでも、4番目ですからね。(創業者の本田)宗一郎さんがいたら『ふざけるな』って、怒鳴られていますよ」

「マルコさんも同じで、ごく当たり前に勝ちにこだわる。そういう意味では、(レッドブルとの交渉は)すごくピュアです。だから、マルコさんと私との関係もいいです。マルコさんの心はかなりホンダに傾いていると思いますが、まだクリスチャン(・ホーナー)と話をしていないので、(レッドブルの総意がどうなのかは)わかりません。最終的に判断するのはオーナーの(ディートリヒ・)マテシッツさんでしょう」

 マルコ博士は、昨年の日本GP直前に、レッドブルのメンバー3人とともに栃木県の研究所にあるHRDさくらを見学している。ホンダがどのような規模で開発しているのかはわかっているはず。何を確認したがっているのだろうか。

「いくらデータや情報があっても、やはり、レースというのは最終的にはサーキットの実際のパフォーマンスを見ないとわからないからでしょう」(山本)


 もうひとつ気になることは、ホンダがレッドブルとパートナーを組むことになった場合、現在のトロロッソとの関係はどうなるのかだ。というのも、ホンダはトロロッソとワークス体制でサポートしているからだ。

 2チームともに無償でPUを供給するというダブルワークス体制という契約は政治的にはありうるが、車体に合わせてPUを設計するという技術的なワークス体制においては、ダブルワークス体制というのは物理的にあり得ないのである。

「この間トストさんとも話し合っているが、トロロッソとは(ワークスという)契約があるし、それは変えるつもりはない。幸いトロロッソはレッドブルと姉妹関係にある。そう(レッドブルと契約を結ぶようなことに)なったらそうなったなりの契約のやり方をいま考えています。レッドブル・ファミリーとワークス契約を結ぶという案はないことはない。そういうことも含めてマルコさんと話を進めています」(山本)

 アゼルバイジャンGPでスタートしたホンダとレッドブルの交渉は、スペインGPでセカンドステージに突入。次はいつか?

「私はモナコGPへは行かないので、次はカナダGPです」と山本部長は語る。ルノーのシリル・アビデブール(マネジングディレクター)は、「われわれはカナダGPにアップグレードしたPUを投入する予定」だと語っている。果たして、ホンダの次のアップデートはいつか? はやる我々を前に山本は落ち着いて、こう語った。

「私は慌てていない。ホンダとしても、いい条件で契約したいですから」

 3週間後を楽しみにしたい。