19日はインディ500予選初日となるバンプデイ。この日に決勝に出場する33台が決まり、35台のエントリーから2台がいなくなる、つまりバンプアウトされることになる。
そして明日20日のポールデイでファストナインを終えると第102回インディ500の正式なグリッドが決定する。
予選開始前の朝のウォームアッププラクティスが悪天候のため遅れて始まったが、それは大きな影響を及ぼさなかった。
レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングの佐藤琢磨はそのプラクティスで2度の予選シミュレーション走行をしたが、昨日とタイム的にはさほど変わらず、レイホール・レターマン・ラニガンの3台はやはり苦戦している様子がうかがえた。
11時から予定通り予選は始まったものの今日の予選を左右したのは気まぐれなインディの空だった。
前日にくじで決められたアテンプト順で、琢磨は後ろから3番目33台目のアテンプトとなった。アテンプト順が早い遅いは、どちらが得だということは一概に言えないが、今日のアテンプト順は、その運と天候に大きく翻弄されることになった。
雨による2度の予選中断があり、後方でアテンプトを待つ琢磨としては、気が気ではない。全車がアタックした後に、希望すれば2回目、3回目のアテンプトに出ることができるが、アテンプトが後方であればあるほど、中断で長引くほど2回目のチャンスは少なくなる。
つまり今日の琢磨は一度のアタックで確実に33台に入るスピードをマークしなくてはいけなかったのだ。ミスは許されなかった。
昨年の琢磨を思い起こしてみる。プラクティスからトップ10に入ることは当たり前で、予選初日であたかも当然のようにファストナインに残り、ファストナインでもポールポジションか!と思わせるほど、素晴らしいスピードと仕上がりを見せていた。
2列目総合4番手の日本人ドライバーとしての過去予選最高に狂喜乱舞し、決勝レースへの期待を大きく抱かせてくれていた。
しかし、今年はマシンのセッティングに苦しみ、もしかするとバンプアウトされて決勝に出れないかもしれないというプレッシャーにさらされる。マシンもチームも状況が違うとは言え、これがインディ500の難しさなのだ。
例えば、一昨年のポールシッターであるジェイムズ・ヒンチクリフ(シュミット・ピーターソン)は、雨天中断後の路面コンディションの影響でタイムが出ず、2度目のアテンプトもタイヤのバイブレーションが出てアタック中断。
三度アタックしようと列に並んだが時間切れとなって、バンプアウトされ決勝に出場できなくなってしまったのである。予選の神様にいたずらされたのが、たまたまヒンチクリフだっただけで、琢磨にだってその可能性はあった。
琢磨はタイムアタックに出て、ウォームアップの後、1周目226.371mph、2周目225.786mph、3周目224.135mph、4周目225.771mph、アベレージ(平均)で225.513mphをマークして、その時点で25番手のポジションだった。
その後、後続でアテンプトしたエド・カーペンターやチャーリー・キンボールらが琢磨のタイムを上回っていき、さらに2度目のアテンプトでポジションを上げたマシンもあり、最終的に琢磨は予選を29番手で終えた。
琢磨自身の記録では2010年にインディ500初出場の時、プラクティスでクラッシュし、その影響もあり予選31番手という最後列のグリッドが過去最悪であったが、それに匹敵するほど、グリッド順は後方だ。
もちろん琢磨の表情は暗かった。
「苦しい予選でした。良くなかったですね。見てのとおりチームの3台共に上がってくることができなかったし、スピードも足りなくてバランスも悪かったから、セッティングも戻さなくちゃいけなかったし、すべて良くなかった」
「雨で中断して路面も悪かったし、路面温度も気温も上がっていましたけど、僕の後に走ったエド(カーペンター)は、トップに近いスピードを出しているので、条件だけのせいとは言えませんよね。朝のウォームアップで確認したこともダメだったので戻しています」
「同じホンダ勢でも前の方へいっているチームもあるわけですから、まずはそこに到達するスピードはチームのエンジニア能力でいかないといけません。レースは別物だとは思いますけど、明日の予選ではさらなるスピードアップを目指したいと思います」
そうコメントを残した後、琢磨のカーナンバー30のマシンは再アテンプトのため列に並ぶが、琢磨のマシンがコースに出るにはあまりにも時間がなさすぎた。
琢磨29番手、グラハム・レイホール30番手、オリオール・セルビア31番手という順位が、レイホールの苦しんでいる状況をあからさまにしている。
昨年と比較するにはあまりにも厳しい予選だったが、明日の予選で少しでもスピードが向上し、来週のレースに向けて光明を見出してくれることに期待したい。