ホンダNSX-GT+ブリヂストン(BS)ユーザーがトップ3を占めることになった、スーパーGT第3戦鈴鹿の予選結果。このまま上位3台が決勝でも逃げるのか・・・いや、4番手以下にも虎視眈々と上位を狙えるマシンも多く、さらにトップのNSX+BSの3台の戦いも面白くなりそうな気配だ。
1-2-3を独占したNSX+BSは、ウエイトハンデ(WH)はそれぞれ、8kgのARTA NSX-GTが今季初のポールを獲得し、WH34kgのRAYBRIG NSX-GTが2番手、WH42kgのKEIHIN NSX-GTが3番手。ランキング2位のKEIHINと3位のRAYBRIGの重いクルマが予選上位に来ていることからも、今回の予選が他のライバルメーカーと比べてもWHの影響がほとんど関係なく、NSXと鈴鹿の相性の良さ、ブリヂストンタイヤとセットアップのコンディションとのマッチング、そしてドライバーの頑張りという総合力が際立っていたことが分かる。
では、この予選結果のまま、決勝もNSX+BSが独走するかというと、そう簡単にはいかなそうな要素が予選後にいくつか判明している。
まずは今回の予選で特筆すべきは、予選タイムが大幅に向上していることだ。これまでのGT500のレコードタイムは昨年の1分47秒074で、今回のポールタイムは1分44秒319と、実に2.7秒、タイムアップを果たしている。
これまでの8月開催の1000kmから5月開催になって気温が低くなり、エンジンパフォーマンスがアップしやすいコンディションで、ウエイトハンデも第3戦目でまだまだ軽いということはあるにしても、全15台すべてのタイムがレコードタイムとなった一番の要因は、異常とも言える強風だっだ。
最終コーナー側から1コーナーに向けて強烈に吹き続けた西風は、ストレートでは追い風となり、2コーナー先からスプーン入り口までは向かい風で、大きなダウンフォースを生み、コーナリング速度が上がる。この日は鈴鹿サーキット名物の観覧車が強風で止めざるを得ないくらいの異常な強風だったことから、まれに見る、タイムが出やすいコンディションだったことは間違いない。
文字どおり、この大きな追い風をもっとも上手に活かすことができたのが、NSX+BSだったわけだが、決勝日の予報では、予選日ほどは風は強くならない見込み。つまり、予選日のセットアップは決勝に向けて大きく変えなければいけない可能性が出てくるのだ。
さらに興味深いのが、上位3台のNSX+BSの装着していたタイヤが三者三様というウワサがあること。もっともソフト目なのがARTAで、RAYBRIGはそれよりもハード目で、KEIHINはその2台とも違うチョイスだという情報がある。もしこの情報が本当ならば、明日の決勝はそれぞれ戦略が異なることになる。
また、4番グリッド以下のチームも予選での失敗がはっきりしているチームが多く、決勝での巻き返しに注目が集まる。今回の予選では、冷たい強風の影響で予想以上に路面温度が下がり、タイヤのウォームアップに苦しんだマシンも多かったのだ。特にタラレバで言えば、予選Q1で2番手タイムをマークしながら、予選Q2でスピンしてしまったEpson Modulo NSX-GTは、明日の隠れた本命マシンと行ってもいい存在だ。
予選Q2でスピンしてしまった松浦孝亮が振り返る。
「なかなか難しいですね、レースって(苦笑)。Q2のアウトラップのあの段階ではどのメーカーもタイヤは温まらないと思うんですけど、明日のレースのアウトラップのイメージで、どれくらい行けるのかプッシュしていったら、いきなりスピンしてしまいました」
「その後の砂利は数周したらきれいになったので影響はなかったのですが、そのあとのシケインでの2回目のスピンにはびっくりしました。1回目のダンロップコーナーでのスピンはタイヤが温まっていないのでわかるのですが、2回目のシケインではウォームアップランでタイヤもだいぶ温まっていたのに、シケインの入り口でいきなりリヤが滑りました。自分の予想のしていない、ああいう滑り方でスピンしたのが初めてだったので驚きました」と松浦。
しかし、決勝での手応えは充分に感じている。
「明日はもう少し気温が上がってくれると思いますし、タイヤのタレも少ないですし、温まったときのピークのグリップもいいので、明日は面白いレースができると思っています。相手がNSXであろうとも関係ないです。自分たちのレースをするだけだと思っています。明日のレースでしちゃいけないミスを今日してしまったので、明日は大丈夫だと思います」と決勝への期待を語った松浦。
NSXばかりに注目が集まるなか、レクサス陣営も虎視眈々と上位を狙える雰囲気がある。特にトムスの2台は決勝では予選以上の結果が狙える可能性が高い。au TOM’S LC500で予選Q2を担当した関口雄飛はQ2再下位の8番手になってしまったが、実は1コーナーでの飛び出しが原因だった。
「(チームメイトの中嶋)一貴くんから1コーナーでフロントが底付きするから気をつけるようにアドバイスを受けていたので、1コーナーで一貴くんより手前でブレーキングしたんですけど、それでもフロアを打ってしまって、跳ねて飛び出してしまいました。コースには戻れましたが、もう一度アタックする時間がありませんでした。クルマは8番手以上のポテンシャルはあると思います。1コーナーで気をつけていたんですけど……反省しています」と予選を振り返る関口。
同じくトムスのKeePer TOM'S LC500の平川亮も、予選Q2で4番手のタイムに手応えを感じている。
「アタック自体は良かったと思います。ホンダ勢の速さは置いておいて、自分たちでできることは全部できたと思います。クルマも朝から良い方向にセットアップできましたし、タイヤも朝はちょっと硬かったのが、昼過ぎには発動するようになりました。タイヤも予選というよりはレース向きのセレクトなので、明日はもうちょっと期待できるかなと思っています」と平川。
第3戦鈴鹿の決勝は、果たして予選結果のとおりNSX+BSの3台が逃げ切るのか、それとも、4番手以降の伏兵が……。この予選日に吹き荒れた西風のように、決勝日のレース展開はまだまだ読めない要素がたくさん出てきている。