ファストフライデイと呼ばれるインディ500予選前の金曜日はターボの過給圧が上がり、一斉にタイムアップする日で、この日は土曜と日曜の予選に向けたセットアップに集中する。それぞれ各チームのペースでセッティングを進めていたが、ここへ来てようやく勢力図が見えてくる。
そして下り坂の天候もチームにセッティングを急がせる要因のひとつつだった。一度路面が濡れてしまえば、乾くまでに多くの時間を失うことになり、雨が降り出す前に早くマシンを走らせてしまいたいところ。
一度コースに出たら予選と同様にウォームアップラップ+3周の計測ラップで、ピットに戻って来る完全な予選シュミレーションだ。
昨日は予選、決勝それぞの仕様のセットアップに苦しんだ琢磨とレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングだが、プラクティス開始早々にピットに入り、予選モードの走行に入っていった。
琢磨は最初の走行で早速226.827mphのベストタイムをマークしてきた。
「クルマは確実に走るたびに良くなっているとは思います。もちろんダメだったところもありますけど。ハイブーストになってわかったこともありました……」と琢磨は言い、予選に向けての出だしは良さそうに見えた。
しかし、ライバルのチーム・ペンスキーやエド・カーペンター・レーシングのシボレー勢、そして古巣のアンドレッティ・オートスポートらは、さらに琢磨のタイムを上回り、前車のトウに入ったマルコ・アンドレッティなどは231mphを超えるスピードをマークした。
プラクティス三日間のマシンの仕上がり具合は如実にタイムシートに現れ、レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングの3台は徐々に後方に下がっていった。
途中一度ガレージに戻りマシンの仕様を変えて、ピットに戻って来る。琢磨、グラハム・レイホール、オリオール・セルビアの3台が揃いチーム内でインフォメーションを交換しながら、一台ずつ走行していった。
琢磨は最初のベストタイムを上回るタイムはマーク出来なかったものの、昨日ほど表情は暗くない。しかし納得のいく状態とはほど遠かったようだ。
「今日は予選に向けてのクルマ作りで、いろいろスピードを絞り出すような感じでやって見たんですけど、まだ満足のいくスピードまでは到達できていないです」
「コーナーでのタイヤのスクラブ(抵抗による減速)も可能な限り少なくしてトライして見たんですが、それもタイムにあまり反映できなくて残念でした。同じホンダ勢でも単独で227mphをマーク出来ているクルマもありますから、少なくとも、そこまでは仕上げていきたいですね……」
ノートウ(単独走行)では、セルビアが20番手、琢磨が25番手、レイホールが34番手と厳しい状況に置かれているチームだが、明日の予選でどこまで挽回できるだろうか。