ポルシェは5月11日、第46回ADACチューリッヒ24時間レース(ニュルブルクリンク24時間レース)が開催されているニュルブルクリンクで、2019年モデルとなる新型911 GT3 Rを世界初公開した。現行の911 GT3 Rと比較してどんなフィーリングなのかを、テストでステアリングを握ったポルシェのファクトリードライバーにニュルブルクリンクで話を聞いた。
ヨーロッパ、日本の自動車メーカーが市販レーシングカーとして数多くのモデルを送り出し、激戦となっているGT3マーケット。そこにポルシェがさらなるシェア獲得を目指しリリースしたのが、新型911 GT3 Rだ。市販の911 GT3 RSの血統を汲むリザードグリーンのラインが入ったマシンは、これまでと各部が大きく異なっており、現行GT3 Rからのアップデートに対応していないほどの変更を受けている。
現行型に比べて30%ものダウンフォース向上、フロントのダブルウィッシュボーン化、ブレーキの改良、タイヤ径の変更、ポルシェのGT3カーとして初めてのエアコン装備、E-クラッチ等、数多くの新機軸を投入した新型911 GT3 Rだが、この発表の際にプレゼンテーションを担ったヨルグ・ベルグマイスターは「いちばんの旧型との違いはダウンフォースだ。それと、新しいABSのパフォーマンスが大きく向上している。フィーリングとしては、LM-GTEの911 RSRに限りなく近づいていると思うね」と評している。
「新型911 GT3 Rは、RSRのようによく曲がる印象だ。それに、GT3カーをドライブすることが多いジェントルマンドライバーたちからは、今まで安全性に対して意見があった。ダウンフォースを増やしたので、彼らにとってもこのクルマは大いに楽しめると思うよ」
一方、ニュルブルクリンク24時間では予選2番手を獲得し、スーパーGTでも活躍する若手筆頭株のスヴェン・ミューラーは「見た目も美しいし、こんなにスゴいクルマを作り上げたのは、ポルシェモータースポーツにとって大きな成功だと思うんだ」と新型911 GT3 Rについて語っている。
「僕はモンツァでの撮影の際に、この新型911 GT3 Rをテストすることができた。市販レーシングカーとしては非常にドライブしやすいし、とてもイージーなんだ。エアコンも装着されたし、ダウンフォースレベルも今までのものより大きく向上している。このクルマでレースすることが今からすごく楽しみだよ」とミューラー。
■日本の経験をもつふたりも太鼓判
現行型のポルシェ911 GT3 Rは、現在日本で開催されているシリーズでは、スーパーGT GT300クラスにD'station PorscheとGULF NAC PORSCHE 911が、スーパー耐久ST-XクラスではD'station Porscheが参戦している。果たして、新型911 GT3 Rは日本でも活躍することができるのだろうか?
最終的なパフォーマンスのレベルは当然ながら性能調整によって左右されるはずだが、この問いに対して「もちろんスーパーGTでも活躍できるはずだよ!」と答えてくれたのは、現役としてシリーズを戦っているスヴェン・ミューラーだ。
「スーパーGTはすごくハイグリップなタイヤとコースで争われているからね。この新型911 GT3 Rは大幅にダウンフォースが増えているし、特にフロントのダブルウィッシュボーン化は、大きな効果を発揮すると思うよ」
また、これまでもスーパーGTで豊富な経験を誇るベルグマイスターは「今でもスーパーGTは出てみたいよね(笑)。あのレースは世界でもトップクラスの戦いだと思うから」と懐かしみつつ、こう語っている。
「日本のサーキットは場所によってはヨーロッパに似ているところもあるので、もちろん911 GT3 Rが活躍できると思うよ。今シーズン、スーパーGTではポルシェの調子がいいので、来季この911 GT3 Rを多くのユーザーが使ってくれると嬉しいね」
給油口の改良など、ピットでの作業性向上も図られている新型ポルシェ911 GT3 R。ニュルブルクリンク24時間を制するなど、今季アップデートされた現行型も高いパフォーマンスを誇っているが、来季から本格投入されるであろう新型がどんなスピードをみせるのか、そして日本のエントラントがいかに導入するのか……!? 今から興味は尽きない。