F1の開発はとどまるところをしらず、毎グランプリ、新しいパーツが導入されている。F1iのテクニカルエキスパート、ニコラス・カーペンティアーズがスペインGPの週末に見つけた注目のアイテムを紹介、分析する。
●フェラーリ
(1)話題を呼んだハロミラー
スペインGPのアップデートで最も物議を醸したのが、フェラーリの『ハロミラー』だった。昨年リヤウィングがより幅広く、搭載位置も下がったことで、「ミラーでの後方確認がむずかしくなった」との不満が、ドライバーたちから漏れていた。それを受けてFIA(国際自動車連盟)は中国GP後に、ハロへのミラー搭載を許可していた。
各チームの開発エンジニアが、この許可を空力性能向上のチャンスと捕えたとしても不思議ではない。しかしフェラーリの場合は、いささか拡大解釈し過ぎたといえるだろう。というのもフェラーリのハロミラーは、ミニウィングがハロではなくミラーに取り付けられているからである。このウィングは気流を下方に導く、いわゆるダウンウォッシュという効果を狙ったもので、リヤウィングのダウンフォース向上が期待できる。
しかしミニウィングなどの空力パーツは、『車体への確実な固定』と規定されており、ミラーへの取り付けは完全な規約違反ではないものの、最終的にスペインGPのみの使用許可となりそうだ。
(2)マクラーレン風のフロアの切り込み
フェラーリのスペインGP仕様フロアには、リヤタイヤ前の切り込みに加え、2本の長い溝が入っていた。これは明らかに、マクラーレンがバーレーンから投入したデザインを踏襲したものだ。サイドポンツーンの両脇は、主にリヤタイヤが発生する乱流が渦巻いている。この乱流がフロア下に入り込み、ディフューザーへと向かう気流を乱すことを防ぐのが、この切れ込みの役割と思われる。
(3)ディフューザーの最適化
F1マシンのダウンフォースは、そのほぼ半分がディフューザーから得られていると言われる。サイドポッド直下、フロアの前端(赤矢印)から入った空気は、ベンチュリ効果で流速を増し、その結果フロア下の気圧が急激に低下して、マシンを押し付ける効果を生む。さらにディフューザー出口が広がっていることで流速は緩み、そのためフロア下の気圧はいっそう低下するのである。
ディフューザーの役割は、いかに段階的に、コントロール可能な状態で流速を緩めるかにある。各チームの開発部門は、まさにそこに苦労しているわけである。
フェラーリの新ディフューザーは、インパクトストラクチャー下の中央部分(黄色矢印)が、より丸みを帯びている。そして両端の羽根部分(青矢印)にもカーブを持たせた。さらのデフレクターの切れ込み(橙色矢印)の切れ込みが深くなり、ボーテクスジェネレーター(白矢印)の数が5から7に増えている。
(4)リヤサスアンカーの形状変更
フェラーリは今回、リヤサスペンションのホイール側の取り付け形状も大きく変更している。大型化し、ほぼ直角に曲げた形状は、構造的なものより空力的な理由からだろう。この仕様は、セバスチャン・ベッテルだけが使用した。