ホールデンとフォードが長年しのぎを削ってきたオーストラリアの人気ツーリングカー、VASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカーで、2013年からワークス参戦を続けてきたニッサン・モータースポーツが、2018年限りで同シリーズから撤退することを表明した。
現地5月15日をもって「ニッサン・モータースポーツは、現在および将来の顧客の関心とニーズに集中するために、スーパーカー選手権へのワークス参戦を終了することを決めた」と、ニッサン・オーストラリアのマネージングディレクターであるステファン・レスターが声明を発表。都合6年に及ぶワークス活動からの撤退をアナウンスした。
初参入となった2013年以前までは、地元オーストラリアでブランド展開を続けるホールデンとフォードの2大ブランドのみで争われていた“V8スーパーカー”に、ニッサンは新規マニュファクチャラーとしてチャレンジ。同年にはエレバス・モータースポーツがプライベーターエントリーながら『メルセデスE63AMG』を投入し、翌年にはボルボがギャリー・ロジャース・モータースポーツ(GRM)とのジョイントでワークス活動を開始するなど、ニッサンはVASC他ブランド参入の先駆者として活躍を演じてきた。
しかし、この決断によりニッサン・モータースポーツのジョイントチームとしてサーキットオペレーションとR&Dを担当してきたリック・ケリー率いるケリー・レーシングは、2019年からワークスチームとしてのステータスを失うことが確定した。
「もちろん、この決断に至るまでにはケリーのチームと何度も話し合いや協議を重ねてきた。その上で、このアナウンスメントが両者にとって最適な結論であるとの合意に達したんだ」と語ったレスターは、合わせてケリー・レーシングへの長年の貢献に対する謝意も口にした。
「トッド&リックのケリー兄弟を筆頭に、マイケル・カルーソ、シモーナ・デ・シルベストロ、そしてニッサン・モータースポーツのスタッフ全員に感謝の気持ちを捧げたい。彼らはいついかなるときでも、VASCのシリーズでニッサン・アルティマが成功することを信じて努力を惜しまずに働き続けてくれたんだ」
「そして何より、ニッサン・モータースポーツを応援し続けてくれているファンのみなさんに“ありがとう”を言いたい。みなさんのサポートには心からの感謝を申し上げたいし、残された2018年シーズンに向けて最高のリザルトが得られるよう、引き続き努力を続けていくとお約束する」
当初は3年契約のワークス活動としてスタートしたニッサン・モータースポーツとケリー・レーシングのVASC参戦は、2016年にオプションを行使。2年の契約延長を経て長期プロジェクトとしてシリーズへのコミットを実現してきた。
その蓄積を踏まえて、来季ワークスチームとしての後ろ盾を失うケリー・レーシングは、引き続きニッサン・アルティマを継続してシリーズに投入することを確認。プライベーターとしてVASCでのニッサンのプレゼンスを引き継ぐ決意を示した。
「当然のようにシリーズでのコンペティションは続いていく。2019年シーズンもこれまでと変わらずに、我々はニッサン・アルティマでチャンピオンシップを戦う決意だ」と語った、チーム代表のリック・ケリー。
「アルティマをVASCに参戦させるにあたり、NISMOと共同で市販ベースのVKを用いてレースカーを仕上げられたことに、とても誇りを感じている。この発表が我々の進化を遅らせるものではないことは明言しておきたい。引き続き、グリッドの前方を狙って進化を続けていくことになるだろう」
これまでV8自然吸気エンジンや4ドアサルーンにしか参戦が認められてこなかったシリーズの伝統を打ち破り、2018年に入ってフォードが来季からの『マスタング』投入を正式発表。この動きに合わせ、GM傘下のホールデンもシボレー・ブランドの対抗馬『カマロ』での参戦を具現化するのではないか、との機運が高まっており、ニッサンはGT-RやZで追随するのか、その動向が注目されていた。
VASCでは2ドアや5ドアハッチバック、V6直噴ターボや4気筒ターボの参戦を認めたGen2規定の採択によって激動の時代を迎えており、アルファロメオや韓国のキアなど、新たなマニュファクチャラーが新規参戦に向けたリサーチを続けている、とも噂されている。