F1ジャーナリストの今宮純氏が独自の視点でドライバーを採点。週末を通して、20人のドライバーから「ベスト・イレブン」を選出。予選やレースの結果だけにとらわれず、3日間のパドックでの振る舞い、そしてコース上での走りを重視して評価する。今回は第5戦スペインGP編だ。
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☆ ピエール・ガスリー
いま彼はひとりでトロロッソ・ホンダを背負っている。ほとんどのセッションでチームメイトを上回り、ベーシックデータを構築。ところが毎戦何度も“危機一髪”のアクシデントに遭遇、今回は3コーナーど真ん中の大事故だった。白煙もうもう視界ゼロ、覚悟して右インサイドに行く勇気、レーサーの本能を見た。
☆☆ ロバート・クビカ
8年ぶり“正式復帰”のFP1を24周、OBカメラ画面が映るたび、正直、感動した。暴れるFW41をコース上にとどめようとせわしなくステアリング修正。
彼の右腕操作に配慮してコクピット右側には“スペース”が。スピンもしたがストロールより1.2秒も速く、テスト任務を全う。リヤの急激なグリップロス現象をデータとともに言語化し、技術陣にフィードバック(今年の出番はあと2回)。
☆☆ セルジオ・ペレス
終盤、最終コーナー出口でマックス・フェルスタッペンのデブリを踏んでしまった(あの状況では避けられない)。それによるバイブレーションに耐えた9位は最善の努力。
☆☆ ケビン・マグヌッセン
まぎれもなく現在ハースは4番目マシン戦力を有する。それを理解し落ち着いてペースを保てば入賞確率は高いのだ。それを証明した6位だがロマン・グロージャン事故の、ある意味で“引き金”となったのは彼の2コーナーでのぐらつきミス。それを差し引いて☆ふたつに……。
☆☆☆ カルロス・サインツJr.
コース幅は11~12mでもまわりのランオフエリアを含めると、このサーキット(幅員)は広々としている。故に風向きは変わりやすく、急に強くなるなどたえず状況が変動する。それをしっかり把握しているのではないか(アロンソも)。「バトル・オブ・スペイン」には強く4年連続中位入賞、その秘密は彼自身のこのノウハウか。
☆☆☆ フェルナンド・アロンソ
父親ホセ・ルイスさんが現場に来るのはとても珍しい。個人的には今年、何か特別な“気配り(?)”があるのかなと思った。勝てる望みなどないいま自己目標を全戦入賞に定めて挑む、17年目のシーズン。1周目の混乱を切り抜け、スーパーソフトで粘り、5戦連続入賞。ルイス・ハミルトン、セバスチャン・ベッテルとともに王者3人だけが続けている。
☆☆☆ シャルル・ルクレール
第5戦の“レッスン5”、ミディアムで45周ロング・スティントをマスターしたこと。左フロントはボロボロ、それを察知し3コーナーではプッシュしないで引き気味に。
タイヤ温度が下がってしまうとじょじょにプッシュ、なんとか適正温度に戻し上げる工夫が見てとれた。まだ5戦目でこのタイヤ・マネージメントは賢い。アロンソとの実戦レッスンではリアルな「寸止め技」を学び、無理な抵抗はしない奥義もマスター。
☆☆☆ セバスチャン・ベッテル
一言で言えば左右タイヤの発熱差が大きく、今回はニュータイヤでのカーバランスが狂った。それに気付いたもののライコネンにFP2でPUトラブル、チームとして十分に各スペックを理解できないまま予選、決勝へ。摩耗が進みレース序盤からペースが上がらず、2ストップしか選択できずに4位。けしてマシンの戦力低下ではなく、ニュー・タイヤ合わせこみがうまくいかなかったのが敗因だ。
☆☆☆☆ ルイス・ハミルトン
ピークゾーンにはまればスイッチオン。予選アタックのセクター2地点(10コーナー手前85m)通過速度が最速311.6KMH。そこから一気に減速5G以上の突っ込みブレーキング、本領発揮だった。自分に満足できればマシンにも満足できるハミルトン、ミハエル・シューマッハ超え新記録の41回目ポールトゥーウイン。楽勝パターンがやっと戻った。
☆☆☆☆ マックス・フェルスタッペン
フロントウイング翼端盤が欠落しても、ピット側のセンサーで異常事象にならなかったから走らせた。その状態で自己ベストを62周目にマーク。
アンダーステアとオーバーが出ていてもあのペースで走れるRB14、走りこなしてしまう彼。空力エンジニアリングか、人力ドライビングか……。ある意味、エイドリアン・ニューウェイさんには極限テストになったのではないか。
☆☆☆☆☆ バルテリ・ボッタス
ベッテルが17周目にピットストップ、そこで19周目にカバーを命じられ、そこからの47周(約220Km)はとてつもなく長かっただろう。
ミディアム推奨周回数は40周程度、王道作戦を批判されるメルセデスだが実にレース距離の70%をカバーさせる勝負(いまにも破たんするのではと思われた)。
前戦あのバーストを体験しているだけにゴールするまで、彼の心拍数が上がったはず。ただの2位ではない、この2位をやり遂げたボッタスの頬は紅潮していた――。