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中谷美紀、現代女性の代弁者に 『あなたには帰る家がある』主演で見せる“共感力”

2018年05月18日 06:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 中谷美紀の主婦役の演技に、共感の声が上がっている。作家・山本文緒の同名小説を連続ドラマ化した『あなたには帰る家がある』(TBS系)。モラハラ夫の茄子田太郎を演じるユースケ・サンタマリアの怪演、“したたか妻”茄子田綾子を演じる木村多江の魔性ぶり、小心者で器の小ささをコミカルに演じている佐藤秀明役の玉木宏と、出演者たちの高い演技力が光る本作だが、その中心にいるのは主人公・佐藤真弓を演じる中谷美紀だ。


 1993年の『ひとつ屋根の下』(フジテレビ系)でのデビュー以来、中谷美紀の活躍を追ってきたライターの麦倉正樹氏は、本作での魅力を次のように語る。


「中学生の娘がいて、夫に浮気されてしまう専業主婦(のちに職場復帰する)という本作で演じる真弓の設定を聞いたときは意外な気がしました。しかも、娘のために浮気をした夫を突き放すのではなく許すという。落ち着いているようで、意外と短気で細かいアラフォー女性という意味では、『私 結婚できないんじゃなくて、しないんです』(TBS系)で演じた橘みやびに近い印象がありますが、決定的に違うのは“守るべき存在”がいるという点です。


 代表作である映画『嫌われ松子の一生』や、『自虐の詩』など、容姿端麗な中谷さんが不幸のどん底に堕ちていく、そんなギャップの面白さを見せた作品もあれば、映画『電車男』のエルメスやドラマ『JIN-仁』(TBS系)の野風など、“高嶺の花”として、視聴者が憧れを抱く役柄はこれまでもありました。でも、身近な存在として視聴者が共感を抱くような役柄はなかったように思います。


 その点、本作は夫の浮気に悩んだり、仕事に復帰したら年下の社員からお荷物扱いされてしまったり、弱さ、脆さ、情けなさを見せる等身大の女性を体現しています。相対する木村多江さん演じる綾子が絶対に共感を得られない魔性の女性なだけに、思わず視聴者は真弓の気持ちになって応援しながら観てしまうのでは。本作でこれだけの“共感力”を見せてくれているだけに、これまで以上に役柄の幅が増えそうですね」


 また、中谷美紀が持つフラットな女優イメージが、現代女性の共感を呼んでいると、佐藤結衣氏は考察する。


「中谷さんは本作で積極的に変顔やくたびれた雰囲気、さらには女性なら誰もが抱いてしまうであろうイライラポイントもあけすけに演じています。真弓というキャラクターに求められるのは、ドラマの主な視聴者層である現代女性たちを代弁すること。“こんなにキレイでカワイイ女優さんが奥さんだったら絶対浮気されないでしょ”と思わせては、本作に入り込むことはできません。女優さんには様々なタイプの方がいますが、愛され天然キャラの女優さんや結婚生活が円満な女優さんなど、パーソナルイメージが強すぎる方だったら、難しい役どころだったかもしれません。


 それを中谷さんがうまく演じられているのは、もしかしたら中谷さん自身が独身であったから、そしてプライベートが見えにくい人だったからかもしれません。本作の特別試写会&トークショーの際に“結婚願望がない”と話されていた中谷さんは、結婚のイメージに染まっていないからこそ、誰もが抱えそうな“夫婦あるある”をフラットに演じられるのではないかと思います。また、泣いてたまるかと強がりながらもポロリと涙が流れてしまうのは、既婚・独身を問わず大人の女性“あるある”。無理な若作りではなく、しっかり年齢を重ねながら、美しく第一線で活躍し続ける中谷さんに、すべての大人の女性が自分の代弁者として投影できるのかもしれませんね」


 秀明と綾子の浮気が太郎の知るところになり、さらなる修羅場が予想される第7話。中谷演じる真弓は、家族のためにどう茄子田家に立ち向かっていくのだろうか。(石井達也)