2018年のWRC世界ラリー選手権第5戦終了時点でトップと10点差のランキング2位につけているティエリー・ヌービル(ヒュンダイi20クーペWRC)が、悲願の王座獲得に向けて行っているトレーニングを紹介している。
今年6月に30歳を迎えるヌービルは1988年ベルギー生まれのドライバー。2012年にシトロエンからWRCデビューを果たすと、翌年はMスポーツへ移籍してランキング2位を獲得。この功績を買われて、2014年からはエースドライバーとしてヒュンダイに所属している。
以降、今シーズンに至るまで、ヌービルはヒュンダイのエースとして活躍しており、2016年にはランキング2位、2017年はシーズン4勝をあげてランキング2位につけるなど、王者として君臨するセバスチャン・オジエ(フォード・フィエスタWRC)打倒にもっとも近いドライバーのひとりだ。
そんなヌービルが戦うWRCは公道を舞台に争われるモータースポーツで、曲がりくねったターマック(舗装路)や荒れたグラベル(未舗装路)を時には50km以上に渡りレーシングスピードで駆け抜ける。
公道が舞台という性質上、コース脇にはランオフエリアやタイヤバリアなどが設置されていない箇所も多く、小さなミスが大きなクラッシュにつながりやすい。そのためドライバーにはサーキットレースとは異なるスキルやトレーニングが求められる。
この過酷なWRCを戦っていくため、ヌービルは自身が取り組んでいるトレーニングの一部を紹介。今回、紹介されている7つのトレーニングは、いずれも体幹や持久力、バランス能力、反射神経などの強化に主眼が置かれたものだ。
「ラリーのドライビングでは、ドライバーの肉体にいろいろなものが要求される。だから、コンディションを万全にしておくことが極めて重要なんだ」とヌービル。
「グラベル(未舗装路)を時速140キロで下りながら、完璧な形でコーナーをカットし、何十ものロングジャンプを乗り越えている時も、マシンを完全にコントロールしていなくちゃいけないんだ」
「だから集中力と敏捷性、反射能力が本当に重要なんだ。0.1秒反応が遅れるだけでも結果に大きな違いが出てしまうから、文字通り電光石火の速さで反応する必要がある」
今回、ヌービルが紹介している7つのトレーニングは以下のとおり。専用のトレーニングマシンが必要なものが多いが、いくつか自宅やジムなどで行えるものもあるので、エクササイズを兼ねて挑戦してみては。
●持久力強化
トレーニング用のゴムベルトを使い上半身を鍛えながら、クルマのタイヤにジャンプして乗り降りして下半身を鍛える。1セット20回を2セット、計40回。
このトレーニングでは持久力の強化と同時に、ステアリングを操る腕とペダルを操る脚を高い精度で連携させることを目的にしている。
●筋力トレーニング
レース用バケットシートに座った状態でウエイトにつながったステアリングを操作する。1セット20回を4セット、計80回。このトレーニングでは、腕の筋肉と背筋を鍛えながら、握力の強化も図られている。
●体幹トレーニング
タイヤに寄りかかった状態で左右にタイヤを転がす。1セット20回を4セット、計80回。
●反射能力強化トレーニング
ウエイトを持った状態で正面を見ながらテニスボールをキャッチするトレーニング。1セット30秒を4セット。反射能力と敏捷性を高めながら、周辺視野の強化にもつながるトレーニングだといい、場合によってはバランスボールに座りながら行うことも。
●瞬発力トレーニング
タイヤに座ってバランスを取りながら、“パワーループ”と呼ばれるトレーニング機材を回転させる。パワーループは小さなダンベルなどでも代用できるという。1セット90秒を2セット。
●周辺視野の強化
点灯したボタンを正面を見据えた状態ですばやく押すトレーニング。1セット50回を3セット。機材がない場合は付箋に数字を振り、その数字をランダムに読み上げてもらうことで同様のトレーニングが行える。
●バランス能力の強化
トレーニング用ベルトを左足に巻き、バランスボールに座りながらストレッチを行う。腕にはウエイトをステアリングのように持ち、左右に操作する。1セット30秒を4セット。重いブレーキペダルを繊細に操作できるよう、左足を重点的にトレーニングしているという。