5月17~20日に行われる2018年のWRC世界ラリー選手権第6戦ポルトガルに向けて、参戦するドライバーたちが意気込みを語った。
ラリー・ポルトガルはポルトガル北部のマトジニョシュを中心に争われるグラベル(未舗装路)イベント。WRCではすでに第3戦メキシコ、第5戦アルゼンチンでグラベルラリーが行われているが、ヨーロッパ圏でのグラベル戦はこれが今季初めてだ。
ラリー・ポルトガルの路面は柔らかな砂に覆われており、午前の走行では思うようにグリップを得られないことが多い。また、マシンが走行するにつれ深いわだちが刻まれていく。
その結果、午後の走行では砂に隠れていた岩などが顔を覗かせ、マシンやタイヤを傷つける可能性がある。ドライバーたちは刻まれたわだちに対応するべく、走行前に車高をアジャストする必要もある。
競技は17日(木)の現地19時3分に行われるSS1で開幕。舞台となるのはロウザダにあるラリークロス用サーキットで、2台のマシンが同時に走行するスーパーSSでの開催だ。
翌18日(金)から本格的なグラベル戦が幕を開け、この日はSS2~9までの8SSが行われる。19日(土)はSS10~15までの6SSの開催。このうちSS12とSS15は今大会最長となる75.20kmのロングステージだ。
最終日の20日(日)はSS16~18までの5SSで争われ、全20SSの合計距離は358.19km、リエゾン(移動区間)も含めた総走行距離は1583.08kmとなっている。
WRC最上位クラスにはMスポーツ、シトロエン、トヨタが3台体制でエントリーした一方、ヒュンダイはマシンを1台追加し、計4台体制を敷いている。
4台のヒュンダイi20クーペWRCを投じるヒュンダイは、レギュラードライバーのアンドレアス・ミケルセンとティエリー・ヌービルに、ヘイデン・パッドンとダニ・ソルドを加えた体制となる。
Mスポーツはセバスチャン・オジエとエルフィン・エバンス、テーム・スニネンにフォード・フィエスタWRCを託す。C3 WRCを投じるシトロエンはクリス・ミークとクレイグ・ブリーンに、第2戦スウェーデンで起用したマッズ・オストベルグを加えた布陣だ。
第5戦アルゼンチンで今季初優勝を遂げたTOYOTA GAZOO Racing WRTは、ヤリ-マティ・ラトバラとオット・タナク、エサペッカ・ラッピの布陣は変わらず。3台のトヨタ・ヤリスWRCで2連勝を目指す。
また下位クラスのWRC2クラスにはトヨタの若手育成プログラム『TOYOTA GAZOO Racingラリーチャレンジプログラム』に所属する新井大輝、勝田貴元も参戦。トミ・マキネン・レーシングのフォード・フィエスタR5をドライブする。
次ページから各チームのドライバーコメントを紹介するが、5月16日時点でMスポーツ陣営からはコメントが発表されていない。情報が更新され次第、追加していくので、その点はご了承を。
(5月17日にMスポーツのコメントが発表されたため、追加しました)
Mスポーツ/ヒュンダイ陣営のコメントはこちら
シトロエン/トヨタ陣営のコメントはこちら
■Mスポーツ・フォード
●セバスチャン・オジエ(フォード・フィエスタWRC)
「僕にとってラリー・ポルトガルはたくさんの思い出があるイベントで毎年戦うのを楽しみにしている。この国にはモータースポーツがしっかり根付いているんだ」
「だから、観客は情熱を持って観戦してくれるし、彼らが作り出す雰囲気は本当に独特なものになる。ここでの勝利は格別で、どのドライバーも味わってみたいと願うものなんだ」
「全ドライバーが勝利を目指してフルプッシュしてくることは間違いない。金曜日、僕たちは先頭走者を務めるから厳しい戦いを強いられる。ただし、ここでロスを最小限に抑えられれば、勝利を争える位置につけられるはずだよ」
●エルフィン・エバンス(フォード・フィエスタWRC)/h3>
「この数カ月、ポルトガルで多くのテストをこなしてきた。その成果が出るはずだ。エンジニアと一緒に作業を進めているし、金曜日もタイムを出しやすい位置での走行だから、アドバンテージを最大限に生かすよ」
「ポルトガルでの1戦を心待ちにしていたよ。SSはツイスティでテクニカルだけど、ファンが作り出す雰囲気が、ラリー・ポルトガルを特別なものにしている」
●テーム・スニネン(フォード・フィエスタWRC)
「ある意味、ポルトガルでのラリーは僕が以前に戦ったものとは違っていて、どういった状況が待ち構えているか知っている方が有利なのはたしかだ」
「この大会はヨーロッパ圏で行われる今シーズン初のイベントだから、戦うのを楽しみにしていた。アベレージスピードは高くないけど、コースを飛ぶように走れていいフィーリングが得られる。今週は僕たちにスポットライトが当たることを願っているよ」
■ヒュンダイ・モータースポーツ
●アンドレアス・ミケルセン(ヒュンダイi20クーペWRC)
「チームにとってとてもポジティブだったラリー・アルゼンチンを終えて、ヨーロッパに戻ることになる。ラリー・ポルトガルでは、何年か前に総合2位というベストリザルトを出した素晴らしい経験があるんだ」
「昨シーズンは出場していないから、グラベルステージで僕のi20クーペWRCのペースを発揮していくのを楽しみにしている」
「ところどころで高いグリップが得られるような、とてもラフなラリーになるだろう。楽しめるイベントだし、これまでのグラベルでの経験を大いに活用していくよ」
●ティエリー・ヌービル(ヒュンダイi20クーペWRC)
「このラリーは、ヒュンダイ・モータースポーツの全員にとって大きな意味のある週末になる。4台のマシンで挑むということだけではない。それだけではなく僕たちは、アルゼンチンで見せたパフォーマンスを継続すると心に決めている」
「ポルトガルは多くのファンからの大きなサポートがある素晴らしいイベントだし、いくつか良いステージがある。ステージによってグリップレベルが異なるから、独特なチャレンジになる」
「前回のラリーではライバルたちが非常に強く見えたけど、そのおかげでモチベーションを高めて自分たちを改善し、先頭で戦うためにできることのすべてを行うことができる」
●ヘイデン・パッドン(ヒュンダイi20クーペWRC)
「最後のWRCイベント(第2戦ラリー・スウェーデン)以来、ニュージーランドでのラリーに何度か出たり、ハードなトレーニングをこなしたりしてすごしてきた」
「3カ月もの間、WRカーをドライブしていないのは厳しい状況かもしれないけど、セブ(マーシャル/コドライバー)と僕は全力を尽くす準備ができている」
「ポルトガルのステージには全力を傾ける必要があるし、天気によってグリップレベルも変わりやすい。誰もがこのラリーのことをよく分かっているから、入念に準備を整え、完璧なペースノートを用意することで初めて競争力を出せるんだ」
●ダニ・ソルド(ヒュンダイi20クーペWRC)
「ラリー・ポルトガルは僕にとって特別なイベントだ。スペインにとても近いところで行われるからね」
「たくさんのサポーターが応援のために“プチ旅行”してくれて、素晴らしい雰囲気を作り上げてくれる。もちろん、(名物ステージの)ファフェにあるジャンプスポットは週末のハイライトだ」
「でも週末には他にも挑戦を楽しめるステージがたくさんある。このイベントには4台のマシンで参戦するから、僕たちのサービスエリアはとても忙しくなるだろうね。でも他のクルーたちとともにドライブできるのはきっと楽しいよ」
■シトロエン・レーシング
●クリス・ミーク(シトロエンC3 WRC)
「メキシコとアルゼンチンという、ふたつの特徴的なグラベルラリーの後だから、今回のラリー・ポルトガルはパフォーマンス面を競う本当の戦いになるだろう」
「ステージ構成は昨年から変更がないから、誰もがペースノートと、コースについて同程度の知識がある。初日の6番目という出走順のアドバンテージを、最大限に生かそうと思っているよ」
「このラリーはとても気に入っているし、アルゼンチンのときと同様に大きな期待を持っている。このサーフェスでC3 WRCが向上したところをお見せするよ」
●クレイグ・ブリーン(シトロエンC3 WRC)
「2017年の良い思い出があるんだ。僕たちは特に金曜にとても速くて、あと少しでSS1をトップで終えられるところだった。(SS1以降の)ステージも素晴らしかった。とても熱狂的なファンたちがたくさんいたんだ!」
「表彰台を目指して戦いたいと思っている。アルゼンチンでは経験不足だったけど、表彰台に届きそうなところまでいけた。今回はスタートからフィニッシュまでそのレベルを出していきたい。ひとつのミスも犯さずに、すべてを好結果に変えていく」
●マッズ・オストベルグ(シトロエンC3 WRC)
「今年最後に参戦したのはラリー・スウェーデンだけど、もう一度チームに戻ることができてうれしい。(ラリー・スウェーデンが)まるで何年も前のように感じるね」
「長いブレイクがあったから、感覚を取り戻すのに時間がかかるかもしれない。でも、アルゼンチン前にC3 WRCをテストする機会があった。マシンの感触は素晴らしかったし、すぐに自信を持てたよ」
「ラリー・ポルトガルは僕にとって言うまでもなく特別なものだ。WRCで唯一優勝したことがあるのが、このポルトガルだからね。当時は(北部ではなく南部の)アルガルヴェ地方が舞台だったけど」
「いずれにせよ、僕は今年少し慎重なアプローチをするように心がけている。自分の感覚を取り戻して、最後までトラブルフリーで走りたいからだ。これができれば、(次に出場するWRC第7戦)イタリア・サルディニアでもプッシュできるはずだ
■トヨタ
●ヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)
「僕の戦いは序盤に終わってしまったけど、それでもラリー・アルゼンティーナはポジティブな1戦だった。クルマの仕上がりは本当に素晴らしく、リタイアするまでは僕自身にもスピードがあったから、大きな自信を持ってラリー・ポルトガルに臨むことができる」
「我々のクルマはポルトガルでも強さを発揮する自信がある。路面がスムーズで、流れるようなコーナーがより多くあるという違いはあるけど、ラリー・ポルトガルのコースは、ラリー・アルゼンティーナと非常に良く似ている。だから、我々のクルマがポルトガルのコースに合わないようなことはあまり考えられないんだ」
「先週、事前テストをポルトガルで2日間行ない、その内容にはとても満足している。テストドライバーであるユホ・ハンニネンと一緒にテストをし、クルマにファインチューンを施したところ、非常に良いフィーリングを得ることができた」
●オット・タナク(トヨタ・ヤリスWRC)
「いいフィーリングでポルトガルを迎えることができそうだ。クルマはきっと力強いパフォーマンスを示してくれるはずさ。先週の事前テストではさらなる改善と、性能向上に注力したけどが、すべてがとても良好だった」
「ラリー・ポルトガルはお気に入りのラリーのひとつで、あの素晴らしい雰囲気を味わうことをいつも楽しみにしている。また、僕にとっては2009年にWRCデビューを飾った思い出深いラリーでもあるんだ」
「アルゼンチンと同様のパフォーマンスを発揮することが目標だが、状況を見ながら戦いを進めていくつもりだ。デイ2の金曜日は、出走順の関係で我々にとって厳しい1日となることが予想される。自分たちよりも前に2台が走るので、その走行ライン上を走ることになるだろうけど、とにかくポルトガルは路面のルーズグラベル処理がタイムに大きな影響を及ぼすんだ」
「また、選手権争いに関してもポルトガルは重要な1戦となる。アルゼンチンでは上位とのポイント差を少し縮めることができたから、ポルトガルでもそれを目標に置いて戦うよ」
●エサペッカ・ラッピ(トヨタ・ヤリスWRC)
「ポルトガルは私が昨年初めてWRカーをドライブしたラリーだから、ポルトガル以降のイベントは経験差による不利が少なくなると期待している。シーズン序盤に浮き沈みが大きかったのは事実だけど、それでもいくつかのラリーでは自分でも驚くほどの速さがあった」
「ポジティブな要素が多くあったから、ネガティブな出来事から多くを学び、それをシーズン後半に改善の糧として活かしたいと思う」
「今後はWRカーでの出場経験があるラリーが続き、特にポルトガルは基本的に去年と同じ道を走るから、自分にとってはチャンス。アルゼンチンでもクルマのセットアップに関してはかなり満足していたけど、事前テストではさらなる改善をヤリスWRCに施すことができたよ」