東京都は、従業員がいる飲食店を原則禁煙とする受動喫煙防止条例を検討している。これに対し、都内の飲食店業者で作る7団体は5月15日、条例案を見直すよう小池百合子都知事に求めた。
「従業員を解雇すれば経営者が過剰労働になる」
東京都が今年4月に発表した案では、客席面積が100平方メートル以下で、従業員を雇っていない店舗か、喫煙室のある店舗を除き、屋内を原則禁煙としていた。6月の都議会に条例案を提出し、2020年には罰則適用も含み全面施行できるよう目指している。
条例案は、政府が国会に提出した健康増進法改正案よりもさらに踏み込んだものになっている。政府案は、100平方メートル以下の店舗を規制の対象外としているからだ。都条例では、たとえ100平方メートル以下でも従業員を雇用していれば禁煙にせざるを得なくなる。
小池知事に要望書を提出した団体の1つである「飲食業生活衛生同業組合」の担当者は、「受動喫煙の防止は大切です。だから政府の規制は受け入れるつもりでいます。しかし東京都の条例案はあまりにも厳しくないでしょうか」と話す。
「ほとんどの飲食店が従業員を雇っており、スタッフを解雇するか禁煙にするかを迫られることになります。スタッフを解雇すれば経営者が過重労働に陥ったり、営業を縮小せざるを得なくなって売り上げが減少したりする可能性があります。禁煙にすれば客足が遠のき、売り上げが減少するかもしれません。経営にそれほど余裕のない飲食店も多く、厳しい条例案はまさに『弱者切り捨て』です」
一方、日本禁煙学会の宮崎恭一代表理事は都の条例案を、「従業員やお客さんを受動喫煙の被害から守るという点で評価できます」と話す。客足が遠のくことを懸念する飲食店に対しては「煙草を吸わない客が増える、禁煙が進んだ外国からの客が増えるという風に考えてはどうでしょうか」と呼びかけていた。