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実写版『ピーターラビット』、原作とキャラ設定を変えた理由は? ウィル・グラック監督に聞く

2018年05月16日 10:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 映画『ピーターラビット』が5月18日から公開される。絵本『ピーターラビットのおはなし』の刊行から100年以上経っても愛され続ける同シリーズを、『ANNIE/アニー 』『小悪魔はなぜモテる?!』のウィル・グラック監督が映画化した本作。たくさんの仲間と大親友のビアとともに幸せに暮らすピーターの元に、潔癖症で動物嫌いのマクレガーが引っ越してきたことで、生活が一変してしまう。


 今回リアルサウンド映画部では、ウィル・グラック監督にインタビュー。ピーターを原作からキャラ変更した理由や、高級デパート・ハロッズを破壊するシーンの裏側などについて聞いた。(取材・文・写真=阿部桜子)


ーーまず、あなたとピーターラビットの出会いを教えてください。


ウィル・グラック(以下、グラック):子供の頃は親が絵本をよく読んでくれていた。ピーターというキャラクターがとても好きで、今は自分の子供たちに本を読んであげているよ。映画化の話をもらったときに、新しい冒険をさせることができるんじゃないかと考えたんだ。でも、大きな作品になったとしてもビアトリクス・ポターのDNAを受け継いだ物語にしようと思った。サイズ感や青いジャケット姿など見た目を大事にして、壊さないよう心がけたね。


ーーとはいえ、本作のピーターは原作とギャップがあって驚きました。


グラック:原作の中のピーターは非常にシンプル。彼のお父さんはマクレガーの奥さんに殺されてパイにされてしまったことがあって、「マグレガーさんの畑にだけは、行ってはだめですよ」とお母さんに言われている。それでも庭に行って怒られるという物語だ。そこから僕たちは要素をピックアップして、やんちゃなところ、言うことを聞かないところ、いたずらっ子なところを膨らませてキャラクターを作り出していったんだ。


ーー変更した点はありましたが、原作へのリスペクトも感じる作品になっていましたね。特にイギリスの美しい風景は圧巻でした。


グラック:この映画は湖水地方で撮影を行った。実際にビアトリクス・ポターが絵を描いていたコテージのすぐ近くだったんだよ。彼女が描いた水彩画を全部張り上げて、そこから映画のシーンに組み込んでいった。庭や風景は原作を基にデザインしていったんだ。


ーーその反面、あの高級デパートのハロッズを破壊するシーンは衝撃的でしたよ。


グラック:ハロッズじゃなく、他のデパートでやるなんて考えられなかったんだ。だから許可が降りたときはとても嬉しかった。1週間、閉店時間から朝の開店時間まで場所を借りていたんだけれども、本当にしっかりとした撮影をすることができた。実は、映画にでてきたよりも、撮影ではさらに破壊しているんだ。おもちゃ売り場だけではなく、ほか10箇所くらいの売り場でいろんなものを壊していったよ。結構高いものもね(笑)。


ーーあなたは日本に住んでいた経験がありますが、どこかめちゃめちゃにしたい場所はありますか?


グラック:今回の来日で昔住んでいた場所を訪ねてみたんだけれど、どこもかしこも変わってしまっていたんだ。だからとても難しい質問だね。どこかな、アメリカ大使館かな(笑)。


ーーピーターたちのイタズラが、緻密に計算されていたのも面白かったです。


グラック:ピーターが行うイタズラは、できるだけ庭や家などどこにでもあるものを使ったんだ。先にイタズラのアイデアを思い浮かべるんじゃなくて、状況や何が小道具で使えるかを見て考えていったよ。


ーーオリジナルソングも印象的だったのですが、ピーター役にジェームズ・コーデンを起用したのは、彼が歌も得意だったからなのですか?


グラック:今回は、3、4曲オリジナルの楽曲が使われているけど、ミュージカル映画ではないから、突然歌ったり踊ったりは変だなと思ったんだ。だから始めから歌のシーンを考えていたわけじゃないよ。でも、ジェームズはすごく歌が上手い人だから、歌わせたいなと思って入れたんだ。


ーーCG加工前のピーターたちがいない状態の撮影が、どのように進んだのかが気になります。


グラック:まず普通の実写を撮るように撮影するんだ。もちろん役者は動物たちが全くいない状態で演技をするから、時々僕が動物たちの声を出したよ。だからとても大変だった。それからアニメーターたちが、ジェームズ・コーデンやマーゴット・ロビーたちボイスキャストの声が入った映像から、俳優の動きを確認しながらCGを作っていったね。


ーーピーターたちは本当に生きているかのような質感でしたね。


グラック:『レゴ(R)ムービー』『ハッピー フィート』などのアニマル・ロジックというオーストラリアのVFX会社に依頼した。そこは世界で一番のアニメーションを手掛けてくれるんだ。この作品を観ていると、数分で動物がCGであることを忘れてしまうだろう? 一時停止したときに本物の動物のように感じてもらいたかったんだ。リアルさを追求する一方で、表情や感情がわかるようにしてほしいという難しい注文もつけたよ。それでもふわふわの毛皮の感じとか、とても素晴らしい仕事をしてくれた。


ーー「謝罪」を意味するおでこあわせのポーズがかわいくて堪りませんでした。


グラック:あれは僕が生み出したアイデアなんだ。この映画の中では喋っているけれど、うさぎがもし喋らない状況で人間と関わりを持つときに何が一番いいだろうか考えた。犬も話すことはできないけど、彼らが何を要求しているか仕草でわかるときがあるだろう? それと同じように何か意思疎通ができるポーズがあればいいと思ったんだ。この映画が公開されてから、科学者の人に「あんなこと絶対うさぎはしない」って言われてしまったんだけれど、僕は「喋りもしないだろう?」と返したよ(笑)。